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札幌試行錯誤シリーズ vol.2:~積み上げてはこわしを繰り返し、前へ

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まどーん氏の写真
インタークロス・クリエイティブ・センター(ICC)による「札幌試行錯誤シリーズ」。クリエイターのアイデアに新しい価値をつけ、具現化へ向けてのプロセスを手助けする取り組みです。2020年度は、テーマ「学び」としてまどーんさんから提案された「世の中のがんに対するイメージを変えたい」を採択し、11月から話し合いが続けられてきました。今回のレポートでは、具体的な取り組みの様子をお届けします。

「やりたいこと」を整理し「やり方」を決めていく

今回の具体的な取り組みは、2020年11月に行われたZoomミーティングからスタート。主なミーティングは5回に渡り、まどーんさんもボランティアとして参画するPink Ring北海道ブランチのメンバー、ICCのディレクターカジタが話し合いを重ねました。

ゴールは2020年度末である3月までに、アイデアを具現化したプロトタイプを仕上げること。
しかし、3月時点でのゴールは決して終わりではなく、むしろそこをスタート地点として、プロジェクトを育て、持続していくのを目標としています。

アイデアを具現化する……と言っても、そのやり方はそれぞれのプロジェクトの内容・性質や時間・費用的なものにより異なるでしょう。

今回のパターンでは、

目指したいこと、やりたいこと、情報の整理と精査
 ⇓
今、何をやるか、やらないか。何を作るかを決める
 ⇓
誰とやるかを決める
 ⇓
チームまどーんと制作チームによる情報のやりとり・制作
 ⇓
プロトタイプ完成

という流れに沿って、進められました。
では、具体的にはどのようなことが行われてきたのでしょうか。

大きな目標や大きな言葉をまずは分解してみる

2020年11月に行われた第一回目のミーティングで、まずICCディレクターのカジタより提案されたのは、まどーんさんの企画を分解し、何から手をつけていくかを見極めてみようということでした。提案された企画自体は内容も濃く、説得力のあるものでした。しかし、その最終的な到達点を目指すには、かなりの時間を要するとの判断からです。
  • zoom会議の写真
まどーんさんの企画では、働きかけていく対象を最終段階では、「あらゆる全ての人たち」とするものと考えられています。ですが、ひとまず「それは誰か?」を立場に分けて考えていきます。患者となった本人、患者の家族など周囲の人たち、がんにかかったことがない人たち、がん患者の在籍する企業……と立ち位置が違えば、こちらから発信する情報の種類も違ってきます。そこで、まずは直近のターゲットをしぼり、段階的に広げていく方法ではどうか。さらに、やっていきたいことの全てをただ羅列するのではなく、たどり着きたいゴール、ビジョンを具体化して、どの順番で何をやっていくと効果があるのか、一番に着手すべきことは何かを考えていきましょうということでした。

このあとすぐさま、まどーんさんはPink Ringのメンバーと話し合いを行い、自分たちが何を求め、何を一番に叶えたいのか意見をどんどん聞き出していったそうです。チームまどーんの強みは、当事者意識の強い仲間がたくさんいること。その生の声や情報が惜しみなく提供されれば企画の土台は強化され、より伝わりやすさが高まります。
  • ノートとペンの写真
12月初旬に行われた2回目のミーティングでは、チームまどーんのリサーチの成果により、最終目的に向かうまでのビジョン がすっきりとパーツ分けされていました。

最初のターゲットは乳がんを患った本人。目指すのは早い時点でのしなやかなレジリエンスの支援。それを伝えるための方法を作り上げていく……ここからは、より現実的にやるべきことを考えていくこととなります。

本当に届けたい人に届けるための「手段」と「内容」を探る

本年度のゴールであるプロトタイプをどんな形につくりあげるか。ターゲットとやりたいことが絞れたところで、より具体的な話し合いが始まります。

これまでも乳がん患者向けの情報は紙媒体、ウェブサイト、公的機関から出ているものから個人のブログまで数多く存在します。内容の充実したものや病院で配っているものなどさまざまあるものの、自ら積極的に情報を集めようとしなければ、そこたどり着けないことも多いそうです。

「せっかく新たなものとして立ち上げるのであれば、既にある取り組みと重複するのは避けたい」と、カジタより提案。

動画配信する、紙媒体をつくる、ウェブサイトをつくる……具体的に何をつくるか、どう配布するのか、宣伝、拡散方法は? 情報を必要な人に確実に届けたい、まずは知ってもらいたい。そのためには、どの方法が一番効果的なのか? という基準から手段についての考えが進められます。

それと同時に、ターゲットとする人たちに響く内容、情報とは何かを探っていきます。
乳がんの知識がほとんどないカジタからは、Pink Ringのメンバーへ、治療のこと、副作用のこと、生活のことと、率直な質問が飛びます。わからないことをわからないままにせずに話し合うことで、経験者と病を知らない人との誤差を生じさせることなく、視点を変えながら、必要なものが何かを少しずつ見つけていきます。

そうして、伝えるべき内容をどんどんブラッシュアップし、ターゲットをまずは乳がんに向き合ったばかりの人と設定し、その方たちに向けた情報集と豆知識的経験談をまとめることに。そして、情報量の様子からプロトタイプとしては、ウェブサイトを中心につくっていくのがよいということになりました。

ただ、この話し合いの中にあっても、「このまま進んでもいいのだろうか」という疑問がはさまれたり、「もっとこんなふうにした方がよいのではないか」という新しい発想が出てきたり……と、ひとつの大きな方向に流されることなく、どんなに些細な声もないがしろにせず、粘り強く話し合いが続けられました。

アイデアはいくつあっても困らない……ミーティングに参加しているメンバー、リサーチに参加しているメンバー全員の考えを尊重して、積み上げてはこわし、また積み上げて……これこそが、「試行錯誤」。全員のよりよいものをつくろうという気持ちをバネに具体化は進んでいったのでした。

いよいよ「札幌試行錯誤」、初めてのプロトタイプが完成に向けて動き出しました。