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Creator's Interview「StudioROCCA代表 松永芳朗」

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Creator's Interview「StudioROCCA代表 松永芳朗」

  • 松永芳朗さんの写真
ICC公式YouTubeチャンネルで公開中の、ICCのイメージ映像。ディレクションを手がけたのは、STUDIO ROCCA代表の松永芳朗さん。クライアントさんとの話し合いを経てアイデアを形にしていくプロセスや、伝える媒体としての映像の強みなどを語っていただきました。さまざまなクリエイターとクロスしながら「知的好奇心を刺激する映像を制作し、課題を解決する」松永さんの仕事に迫ります。
—今回発表された映像は、有機的な生命体のように刻々と変化するイメージを背景に、札幌や北海道の産業とさまざまなクリエイターがクロスしていく様が描かれています。この映像を制作するにあたって、最初にICCと松永さんの間でどのようなやり取りが交わされたのでしょうか?

ICC: ICC は様々な産業の企業とクリエイターが協働する場の創出にも重きを置いていて、クリエイターと企業が連携することでビジネスの課題を解決する、数々の事例を生み出してきました。企業とクリエイターのマッチングも行う相談窓口を設置していて、実際の事例をもとに提案できるよう普段からICCの制作物をいろいろなクリエイターさんにお願いしているのですが、映像についてもクリエイターさんの仕事がわかるような事例を作りたいと考え、イメージ映像を制作しました。松永さんには最初にICC が現在取り組んでいることや、この映像をどのような場面で使用するのかなどを一通りお伝えして、それをふまえて松永さんがアイデアの土台となるマインドマップを出してくださって。それをもとにまた打ち合わせた上で、構成案を出していただいて…という形で進んでいきました。

松永:僕の場合は、コンセプトを導き出すためのメソッドとして、まずマインドマップを作るという作業があります。クライアントさんからもらった情報に加えて、それ以外の背景なども綿密に調べながら情報をとにかく集めて整理していく過程で、キーワードやイメージが出てきます。今回の事例で言うと、ICCが現在取り組んでいることに関する情報の他に、札幌市の中のICCという視点で市の取り組みや、インディペンデントな場所や動きについても整理していきました。札幌市には文化芸術に関係する施設やイベントが多数あり、2006年には創造都市さっぽろ宣言をします。2009年にデジタルコンテンツ産業の振興を目的とした「札幌市デジタル創造プラザ(ICC)」が開設され、そこからICCがどのように歩んできたのか、現在のICCが何を目指し、どのように変化しているのかということを考え、まとめていきました。
  • 松永さんの写真

    「マインドマップを作るためにいろいろ調べる過程は、自由研究のような楽しさがある」と松永さん。

  • マインドマップの画像

    マインドマップ(素材提供:松永さん)

—その次の打ち合わせでは、マインドマップをもとに方向性を整理していった形ですか?

松永:そうですね。マインドマップを見ながら、例えば「ソリッドで人間味のないものよりは、明るくて体温を感じるようなイメージがいいですよね」とか、いろいろ意見を出し合って。そのときにポロッと「アメーバみたいな」という言葉が出てきたんです。そこから何か有機的なイメージがいいねという方向性ができて、人と人とが交わる、何かと何かがくっついて一つになったり、そこから派生した何かがポンと生まれたり、常に止まらずに流動していて、二度と同じ形にはならないとういイメージが生まれていきました。
  • 構成図の写真

    「大まかな方向性が決まった後に出してくださった構成案は、一発OKでした」とICCスタッフ。

—傍目には、マインドマップと構成に関するアイデアの間にはなかなかのイメージ的な飛躍があるように思えるのですが、本当に何気ない一言がアイデアのもとになることもあるのですね。

松永:そうですね。アイデアの出し方についてもメソッドがあって、マインドマップが完成したら、一旦そこで考えるのをやめるんです。そのまま一気に考えてしまうと、面白いアイデアはなかなか出てこない。ある程度頭の中に情報がまとまった状態で生活することで、何かヒントが来たときにちゃんとキャッチして、アイデアへつなげることができるのだと思います。

—映像につける音楽に関しても二案あって、今回採用されなかった方の曲を聴くと、映像がまた全然違う見え方になるのが印象的でした。

松永:映像は音なんじゃないかなと思います。例えば、スローモーションで笑っている映像があったとして、そこに悲しい音楽をあてたとしたら、笑顔の意味が変わってきますよね。音によって映像の印象が変わるので、映像を制作し始めた初期の頃から音はかなり大切にしています。ICCの映像に関しては、親しみやすさやフレンドリーな雰囲気を意識して選曲しました。
  • 松永さんの写真

    1970年代にアメリカで誕生した「Lava Lamp(ラバランプ)」の溶岩(Lava)のようなグネグネした動きもイメージ源の一つ。

  • モーショングラフィックスの配色案の画像

    イメージ映像の配色案(4パターン)

—松永さんは今回の事例でいうと、予算や企画の提案からスタッフの決定、進行管理を担うプロデュースの部分と、制作の際の指揮や演出等を担うディレクションの部分と両方を担っていますが、松永さんが映像制作の仕事で面白味を感じるのはどんなところですか?クライアントさんからお話を伺って、それをアイデアに落とし込んでいくあたりでしょうか?

松永:それもありますね。この仕事の一番好きなところは、知的好奇心が刺激されるところです。依頼先の企業や商品のことをいろいろ調べたり、普段は入れないようなところへ撮影で入ることができたり、そういったプロセスで「すごいな!」という発見がたくさんあって。この感動を他の人にも伝えたい、自分がそうだったように見た人の知的好奇心も刺激したいと思って、映像を制作しています。映像は視聴覚で体験するものなので、見る人の知的好奇心を刺激する映像を作るには、作り手がいかにいろいろなものを見て知っているかも、すごく大切なことだと思っています。

—映像の強みについては、どう考えますか?

松永:映像というものが、一昔前はテレビ番組か、お金を持っている企業がコマーシャルを出すとか、あとは映画や一部のアートで扱われるものだったところから、今はあって当たり前のものになりましたよね。見るだけではなく、いろいろな映像を誰もが気軽に作れるようになって、とても身近なものになっている。「伝える」ということを考えたときに、映像には「難しいものをわかりやすく伝える」「難しいものを楽しく伝える」「自分の目では見えないものを見せる」というように、わかりにくいものをわかりやすく伝える能力があると思います。そういった映像の特性を使って、誰かの何かしらの課題を解決するのが、自分の仕事だと考えています。
  • 松永さんの写真
—「知的好奇心を刺激する映像で、課題を解決する仕事」なのですね。

松永:映像はチームで制作するものなので、それぞれのクリエイターがアイデアやスキルを駆使しながら一つのものに向かって結集していった結果、自分が思ってもいなかったものが生まれうる。例えば今回のICCのイメージ映像で、シーンによっては体内の内臓の動きのように見えるところもあるなと思いました。そういった見え方は構成段階で頭になかったので、そういう風に見えるようなものにもなったという点で、一人じゃ想像しえない面白い効果が出たと思います。さまざまなクリエイターがクロスすることで、クオリティの高い、見たことのないものが生まれるところも、この仕事の面白いところです。
  • 松永さんの写真

    「今回のイメージ映像やインタビューが、企業やクリエイターの人たちにとって、もっとクロスしてみよう!と思ってもらえるきっかけになると嬉しいです」と松永さん。

—最後に、今後目指していきたいことなどありましたら教えてください。

松永:まだ見つかっていない隠れた才能や、これから売り出していこうとする商品に出会いたいですね。アイデアはあるんだけど形にできない!とか、もっと発信力を高めたい!っていう企業や人がたくさんいると思うんですね。そんな何か新しいことにチャレンジしたい人たちがICCを活用することでクロスできたら面白い何かが生まれるはずです。映像制作に限らず、コンセプトやブランディングづくりから関わって、創造都市さっぽろを盛り上げていけたら嬉しいです。

【プロフィール】
スタジオロッカ株式会社 代表 松永芳朗 
多彩な映像技術を用いて、民族文化、科学技術、伝統工芸、自然環境等を高解像度でビジュアライズ。
知的好奇心を刺激する映像コンテンツやアニメーションを制作しています。
また、ノマドシアター第2マルバ会館を運営。
親子で楽しめるショートフィルム上映会やワークショップの企画もしています。


文:松田仁央
撮影:footic minaco.