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道産子だけでできる価値ある商品デザイン(2020年1月20日開催)レポート

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企業のニーズとデザイナーの本音をつなぐ

「道産子だけでできる価値ある商品デザイン」トーク

  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(イベント写真) 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(2020年2月13日リリース)

「商品デザインを頼むとしたら?」疑問解消のきっかけに

2020年1月20日、ロイトンホテル札幌で一般財団法人さっぽろ産業振興財団・札幌市が主催する「FOOD FAIR2020〜食のビジネスマッチング〜」が開催された。
同フェアは、北海道の農畜水産物の付加価値向上及び食関連産業の活性化の促進を目的とするもの。
道内メーカーや関係機関による展示商談会や勉強会、交流会が行われた。

  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(イベント受付写真) ロイトン2階各所でさまざまなトークイベントが開催された。

そのなかでICCは独自に「道産子だけでできる価値ある商品デザイン」と題したトークイベントを企画。
進行はICCディレクターのカジタシノブ。中小企業の多い北海道で「自社の商品デザインを頼むとしたら、誰にどのように声をかけたらいいのか?」という素朴な疑問を解消する一助になれば、と市内の現役デザイナーを招いて事例を聞いた。

道内のクリエイター集団、札幌ADCが年鑑を発行

中小企業が抱える悩みのひとつは“デザイナーとの接点がない”ことだろう。
本企画の協力団体は、札幌アートディレクターズクラブ(札幌ADC)。2001年に設立した札幌ADCは、それまで個別に動いていたデザイナーたちの横のつながりや切磋琢磨する土壌を育み、北海道の力を全国に発信してきた。

この日は札幌ADCから代表の岡田善敬さんと運営委員の小島歌織さんが出席し、その活動を紹介した。
札幌ADCでは年に一度作品審査会を実施し、2千点を超える応募作品の公開審査を行っている。
ここで言う応募作品とは、デザイナーがクライアントから依頼を受け形にしたロゴや商品デザイン、関連グッズなど。食品に限らずCDジャケットやステーショナリーなど多彩な品があるという。

審査の結果、優れた作品は年鑑に収録される(札幌ADCのサイトで販売中)。
「入賞作品はサイトでも公開していますが、全ての入選作品をご覧になりたい方は、ぜひ年鑑で。各デザイナーの連絡先も明記しています。いいなと思った人には直接連絡を取ることもできます」(小島さん)。

  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(ブース写真1)
  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(ブース写真2) 札幌ADCのブースでは入選・入賞パッケージを展示。 百貨店や物産展でみかける商品も並んだ。

相談の具体性は人それぞれ、会うことが出発点

岡田さんも小島さんも通常は企業に所属し、アートディレクター・デザイナーとして第一線で力を発揮している。
「企業側はどこまで具体性を持って相談を持ちかけたらいいのか、漠然とした相談でもいいのか」というカジタの問いには、二人とも「ケース・バイ・ケースです」と揃って回答。
「こういうことを考えているんだけど、という段階でのご相談もあれば」(岡田さん)、「食品作りで余ったものを使って加工品ができないか、という具体的なご相談もあります」(小島さん)。

さらに二人とも、初めて組むお客様であればなおさら直接会うことを大前提にしているという。
「お客様の熱意を受けとって鏡のように返したい。その思いを感じるところから始まるので必ずお会いします」(岡田さん)。
「なにげない雑談でもお客様の考えを知るヒントになりますし、その場で作品ファイルを見ていただければ、企業の方々にとってもデザイナーのタッチを知る手がかりになると思います」(小島さん)。
デザイナーたちとの“対話”が、初めの一歩になるようだ。

  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン(講師写真:左から札幌ADCの小島歌織さん、岡田善敬さん) 左から札幌ADCの小島歌織さん、岡田善敬さん。

気になる予算も“出来ること”の歩み寄りで

企業がもっとも気にするデザイン料については、「予算が決まっているならばその予算の中で出来ることを提案する」のもデザイナーの力量になるという。
実際、札幌ADC会員の仕事で袋の印刷費用を抑えるためにシールやかけ紙を使って工夫した事例もある。
飲食店のメニューのように決まった料金表が無い世界だけに個別の案件ごとに柔軟に考えていく。二人の話から、デザイナー・企業ともに実現したいゴールに向かって歩み寄る必要性が感じられた。

最後は、進行のカジタが「同じ道内であるメリットを活かせば、文字に起こせない思いも伝え合うことができる。今、商品デザインをお考えの方々は、どうぞ地元のデザイナーたちも選択肢に。札幌ADCやICCに気軽にご相談ください」と呼びかけ、締めくくった。

  • 道産子だけでできる価値ある商品デザイン写真(左:司会ICCディレクターカジタ 中央と右:札幌ADCの小島歌織さんと岡田善敬さん) 参加者は32名。ICCのようにものづくり支援組織の聴講者も多かった。

参加者に感想をうかがった。札幌市内の研究施設にお勤めの女性。
「企業にとってデザイナーは抽象的な言葉や横文字が多く、とっつきにくいと言う声を聞いていましたが、今日の話を聞いて思った以上に相談にのってくれることがわかりました」

夫の飲食店のロゴやデザインを、デザイナーの妻が手がけているご夫婦。
妻「最近は“インスタで作品を見て”という問い合わせもあります。SNSで情報を発信あるいは集めることもできると思います」
夫「自営業はどうしても目先の金額に左右されがちですが、デザイナーと一緒に作り上げていく過程に納得できれば、金額以上の価値が生まれる。そこに気がつけば、デザイナーの必要性も実感できるのかもしれません」

自社商品の魅力を発信したい、あるいはいい商品を世に送り出す仕事にたずさわりたいと願う人々のベクトルは同じ。まずは気後れすることなく行動に出てほしい。


文 佐藤優子
撮影 クスミエリカ