レポート:海外アーティストによるオープンスタジオ
6/18~6/20の3日間、ICCにて、ICCとNPO法人S-AIR、国際交流基金の協力事業の招へいアーティストとして来札している2人のアーティスト、パタヴィー・ヴィラヌヴァット氏とスティーブ・カー氏による、札幌滞在中に制作した作品発表会『オープンスタジオ』が開かれ、3日間でおよそ100名が来場しました。
オープニングで挨拶するスティーブ氏、S-AIRスタッフ橘さん、柴田さん(写真左)と、パタヴィー氏(写真右)
ニュージーランドの現代美術アーティスト、スティーブ・カー氏が札幌で制作したのは「The Weight of the Sun」。 「人工的なもの・リアルなもの(本物)」をテーマに、北海道在住の木彫り職人、写真家、映像作家に依頼をし、木で作られた野球のグローブやバトミントンの羽、彼自身をモデルにした写真のほか、盆栽を意識した映像や造花のオブジェなどが並びました。
「来て下さった方が、一体なんだこれは?何を言いたいんだ?と思って頂けることを期待しています。色んな疑問をふくらませてほしい。」 とスティーブ氏。
スティーブ氏が口にくわえているのは、バトミントンの羽。よく見ると全て違うし、花びらにも見てとれる。
アイデアを伝え、旭川の木彫り職人に制作依頼した木製のグローブ(写真左)と、バトミントンの羽(写真右)
手前にあるのは、盆栽に見立てた、造花。
一方、タイ出身の映像作家パタヴィーヴィラヌヴァット氏は、「母と子のつながり」がテーマ。
札幌で出会った親子や、子どもを母国に残し北海道で働いているタイ人の女性などを取材し、母として子供に対する願いや不安、また、息子や娘が想う母親への気遣いなどを綴ったドキュメンタリー映像、「おふくろに乾杯」を制作しました。
パタヴィー氏の3階のスタジオは、まるで「昭和」を感じさせるレトロな雰囲気。彼の家族写真が展示された。
オープニングパーティーの後、会場を4階に移し上映会が行なわれたのですが、彼がもう一つこだわったのは、その入場方法。
会場までの通路をトンネルにして、その中にはお腹の中にいるときや、母と子のつながりを示す「へその緒」につながれたままの赤ちゃんの写真など、生命の誕生を意識した作品が並び、参加者は、まるで生まれてくる赤ん坊のようにトンネルをくぐり出て会場へ向かうという、工夫をこらしたエントランスが印象的でした。
トンネルの中は、「命の誕生」を意識した神秘的な雰囲気。トンネルをくぐり出た先には、生命体に宿る人生のストーリーが映し出されているような展示も。
母への想いと共にパタヴィー氏による弾き語りの後、上映会スタートです。
映像では、普段、面と向かって言えない母、子の気持ちが描かれていました。
オープンスタジオを終え、スティーブ氏は、「この2ヶ月間、制作活動だけに集中できた事は最高の経験でした。またこの北海道で、才能ある素晴らしいアーティスト達と協力して制作できたことも貴重でした。たとえ言語が違っても、アートを『見て感じる』ことに言語は必要ないですね。」と。
また、パタヴィー氏も「あっという間だった。でも初日の上映会では、お客様の感想と、僕が想う気持ちは同じで、国や文化は違っても、親や子を想う気持ちは、万国共通なんだなと感じました。」と笑顔で話して下さいました。
30日に札幌を離れる2人。北海道の自然、人との出会い、北海道で活躍しているアーティストとの交流は、今後の彼らの作品に、きっと生かされることでしょう。
上映会終了後の、記念撮影。
パーティーの2次会は、パタヴィー氏お手製のトムヤムクンを頂きました!