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Report (リポート):SAPPORO Short Fest World Tour in California カリフォルニア・インデペンデント・フィルム・フェスティバル2010

久 保 俊 哉
ICCチーフコーディネーター
SAPPOROショートフェスト実行委員会プロデューサー
マーヴェリック・クリエイティブ・ワークス代表取締役 

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去る、2010年4月22日~25日までサンフランシスコの東部に位置するオリンダという町で開催されたカリフォルニア・インデペンデント・フィル ム・フェスティバル(以下略称:CAIFF)にSAPPOROショートフェストのワールドツアーとして参加してきました。

このCAIFFは、ICCのOBクリエータでもある島田英二監督(ショートフィルム監督)が、「6pm」という作品で2003年に「ベスト・ミニショー ト」(部門グランプリ)を受賞したことがきっかけでSAPPOROショートフェスト・札幌国際短編映画祭(以下SSF)と姉妹映画祭となり、また2006 年からは私はCAIFFの審査員も務めています。SSFでは毎年CAIFFの特別プログラムを上映しており、また、このCAIFFでもSAPPORO Short Fest Showcaseプロ グラムとしてSSFからのセレクト作品の上映を行いSSFの国際ツアーのエクスチェンジプログラム(交流プログラム)という位置づけにもなっています。

特に、SSFのセレクト作品の質は評価が高く、アメリカの映画関係者に日本のショートフィルムを売り込むゲートウエーになっています。CAIFFへの一般参加者はさほど多く無いのですが、映画制作者とハリウッドの映画・テレビ関係者のキーパーソンも多く、札幌・日本とアメリカの映画ネットワークをつなぐ ビッグチャンスでもあります。

映画祭の創設者であるデレク・ゼムラック(Derek Zemrak)氏は、札幌にも何度も足を運んでくれており、日本の優秀な作品をアメリカに売り込むことにも協力をしてくれています。本人もテレビ番組やイ ンディペンデント映画製作にも力を入れ、自らの映画を世に創出しています。
http://www.imdb.com/name/nm0954795/

ICC-photo1.jpgのサムネール画像

 CAIFFは今年で12年目を迎え、まだ若い映画祭ではありますが、フレンドリーで多くの業界関係者の集まる質の高い映画祭です。2009年までは、カリフォルニアのリバモア市というところで開催されていましたが、今年2010年から開催場所をオリンダという人口2万人の小さな街に移して行われました。会場は1941年に建てられたオリンダ・シアターで、アールデコ調のすばらしい劇場です。中には3つのスクリーンがありメインのスクリーンは約800名の座席数があります。室内の装飾もすばらしくここまで大事に劇場を保つ文化や努力を大変うらやましく思いました。この映画祭はインデペンデントの映画を上映し、コンペティション行うのですが、短編だけではなく長編もすばらしい作品が集まっています。

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今年は、「アメリカン・グラフィティー」「未知との遭遇」「ショーズ」などに出演しているリチャード・ドレイファス主演の作品『Light Keepers』の上映<右上>や、「ハイスクール・ミュージカル」で人気のオレシア・ルーリン(Olesya Rulin)<左上> が主演の『Expecting Mary』、そして日本で現在上映されている『Lovely, Still(すてきな嘘と贈り物)』 <左下> などがコンペティションにノミネートされ俳優やゲストなど多くが参加していました。

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 中でも『Lovely, Still(すてきな嘘と贈り物)』の監督は25歳の新鋭監督ニック・ファクラー(Nik Fackler)。彼は映画を12歳から独学で学び、今もニューヨークでのLAではなく、地元ネブラスカ州のオマハ(Omaha, Nebraska)に住んで、映画製作を行っているユニークな才能のある若者。今後が本当に楽しみな才能でした。いよいよ住んでいる場所に関係なく良いクリエイティブが生み出される時代になったのだと実感しました。また、彼のプロデューサーDana Altman<写真左下/右>の存在は大きいと思います。(祖父は映画『M★A★S★H マッシュ』などで有名なロバート・アルトマン<Robert Altman>)やはり新しい才能を見つけ、プロモートしてくれるプロデューサーの存在は今後最も重要視されていくことになるのではないでしょうか?

いわゆる受賞式であるアワード・セレモニーは、場所をサンフランシスコの南東部にあるダンビル(Danville)という街に移し、ブラックフォーク・プラザ・サークル(Blackhawk Plaza Circle)内にある  ブラックフォーク・オート・ミュージアムで行われました。ここには、世界でも珍しい貴重なクラシックカーが約90台展示されており、関係者も大いに展示を楽しみ映画祭のアワードに色を添えていました。

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アワード賞の数は多く、各賞のプレゼンテーター(『アニマルプラネット』の人気番組『Pit-Boss』のキャスター、ショーティや、『スチュアート・リトル』(Stuart Little)のジョナサン・リプニッキなど)を紹介しつつ発表を行っていく形で進行していきます。ディナー形式のパーティーなのでフランクにお酒を飲みながら楽しめるものでした。

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 VIPツアーの目玉になるイベントで、ゲストには エミー賞受賞のメリー・ルー・ベリー<Mary Lou Belli>さん(左上、旦那様と)をはじめ、TVシリーズのバットマンにバットガールとして出演していたイボンヌ・クレイグ<Yvonne Craig>(右上)や、ボブ・ディランの1966年のワールドツアーのドラマーで、映画俳優としても活躍しているミッキー・ジョーンズ<Micky Jones>(左下)。そして、「カッコーの巣の上で」「イングリッシュ・ペイシャント」「アマデウス」などで有名なプロデューサーのソウル・ゼインツ<Saul Zaentz>(右下)など豪華な顔ぶれ。

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 ここで渡される賞は、若い監督以外にも生涯の活動に対する賞を与えており、リチャード・ドレイファス氏は(Lifetime Achievement Award)を、ソウル・ゼインツ氏は(Golden Slate Award)をそれぞれ受賞しました。

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<写真:ドレイファス>

SSFから選ばれた「まいごのペンギン」(Lost and Found)はBest Animationを受賞。SSFプログラムからは、「アトランティック」(Atlantic)が、Best CinematographyとBest Mini Shortにノミネート、「アガペ」(Agape)がBest Shortに、「消えゆく光」(The Fading Light)もBest ShortとBest Cinematographyにノミネートしましたが、おしくも受賞は逃しました。会場では受賞作だけでなくノミネート作品についての会話も弾んでいました。http://www.caiff.org/gallery.html

そしてBest Director は『Lovely, Still(すてきな嘘と贈り物)』の監督ニック・ファクラー(Nik Fackler)が受賞!

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<写真:Nik Fackler>

受賞式の後、ゲストも宿泊しているホテルで夜遅くまで交流は続きました。日本への関心も高く、フィルムメーカーたちは我々に様々な質問をしてきました。Nik Fackler監督は、ツアー参加していた加島さん(写真一番右)に日本語のチラシを訳してもらっていたのが印象的。このように深くコミュニケーションのとれる映画祭はまれで、札幌だけがこのような関係を継続することができ、大きなパイプを持てることは感謝に堪えません。今後も、この関係をしっかりと維持し、そこから繋がる新たな才能の発掘、そしてSSFを通じてのフィルムメーカーのプロモートに繋げていきたいと強く感じました。


今年のSSF(SAPPOROショートフェスト・札幌国際短編映画祭)は10月6日~11日までの6日間を予定。CAIFFのスペシャルプログラムも上映を予定しているので、是非、参加してください。

映画・映像は世界を繋げる有効なコミュニケーション手段です。
また、総合芸術としてすべての表現が関われます。映画を作っている人や、それを支える人、鑑賞を楽しむ人、すべての人が、その喜びを分かち合えるのが映画祭のすばらしさなのだと改めて感じたツアーでした。

大いに楽しんで、発信して、世界とインタークロスしましょう!!!

久保俊哉