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グラフィックデザイン産業の発展は、sapporo ideas cityへの近道!

“sapporo ideas city”を宣言し、創造都市の実現をめざす札幌市。
札幌市経済局では、経済・産業の振興を通じて創造都市を具現化していく立場から、今後、札幌市が世界で競争力を持ち得る産業分野を順次取り上げて活性化を図ることとし、その第1弾に「グラフィックデザイン産業」を選んだ。

これを受けて、2008年10月には、グラフィックデザインに係る産・学・官の関係者をメンバーとする「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)産業活性化研究会」(委員長 小早川護 前北海道大学国際広報メディア・観光学院教授)が組織され、全4回の検討会議を通じて札幌のグラフィックデザイン産業の発展に向けた方策を議論し、このたび、その成果を札幌市経済局に提言した。

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「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)産業活性化研究会」の検討風景

近年、札幌のデザイナーがグラフィックデザインの世界大会でアワードを受賞する例が続出し、今や札幌発のグラフィックデザインは海外での評価が国内を上回り、世界レベルのグラフィックデザイナー数でみると、現在の札幌は世界トップ10に入る位置にある。(参考記事はこちら
これに加え、札幌は印刷・広告関連産業が一定の産業規模をもち、札幌にはグラフィックデザイン産業の発展を支える素地がある。

研究会は、こうした背景を踏まえ、札幌のグラフィックデザイン産業をさらに競争力の高い産業として発展させ、そのパワーを「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)」の実現につなげるための具体的な方策を検討した。
全4回の研究会では、国際的なコンペティション等では高い評価を受け、実力あるデザイナーを多数擁する札幌の強みが理解されておらず、ユーザー企業側にはデザイナーの存在やその実力が殆ど知られていない点などが特に議論の中心となった。

こうした現状や課題を踏まえつつ、研究会では、グラフィックデザイン産業の振興を通じた「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)」実現のイメージを、
「グラフィックデザインが“豊かに生きる”札幌をつくる」
「国際的なマーケットで評価される札幌発グラフィックデザインを育てる」
「グラフィックデザインが札幌の都市ブランドをつくる」
の3点にまとめ、
それらの実現に向けたグラフィックデザイン産業の振興方針として、
「デザインを活用する風土づくり」、「デザインをアピールする機会づくり」、「デザインを活用する仕組みづくり」の3点と、「デザイナーとユーザーがともにデザインの価値を共有するための合同勉強会、マッチングの促進」、「デザイナーの作品や実績を見ることができるショーケースの創設」、「札幌のデザインやデザイナーの実力の高さをPRするためのビジネス見本市への参画やデザイン見本市の開催検討」など、9つの具体的な方策を提言した。 

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井上唯文 札幌市経済局長(左)に提言書を手渡す小早川 護委員長


提言書の手交に訪れた小早川委員長は、「デザインは産業に革新を起すパワーを持っているが、現状ではユーザー含めてデザインの力が十分に理解されていない。ユーザー、デザイナーの双方がリーダーシップを取るという意気込みが重要で、そのためには、9つの提言のうち、まずは両者による勉強会から始めたらどうか。行政にはぜひ両者をつなぐ役割を期待したい」と述べ、デザイナーの立場で研究会に参加した前田弘志委員(札幌ADC運営委員)は、「この研究会の終了後、デザイナー側もユーザーとの情報交換をするために動きをはじめている」との現状報告を、ユーザー側の立場で参加した本郷利武委員(北海道中小企業家同友会代表理事) は、「北海道中小企業家同友会の事務局にもデザイナーとの勉強会の窓口を作りたい」と、各々、意見を述べた。

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写真左から前田弘志委員、井上経緯局長、小早川委員長、本郷利武委員

これを受けて札幌市の井上経済局長は、「札幌や北海道にはデザインを活かせる素材がたくさんある。今回いただいたご提言をもとに、今後は具体的な成功例を作っていくことが必要」と応じ、グラフィックデザイン産業の発展を通じた「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)」の実現に大きな期待を表明した。

すでに国際的な評価を受けているグラフィックデザイン産業の発展は、「創造都市さっぽろ(sapporo ideas city)」への近道。
今後、具体的な動きが注目される。 

文:佐藤栄一