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タウン誌編集長  平野たまみさん

人と人をつないで札幌の魅力を発信
おやぢが主役の「オトン」が好評

札幌の魅力を活字メディアに載せて30年。
「街の魅力は、人にあり」が信条のタウン誌編集長は
今、月刊情報誌「O.tone」に尽きせぬ愛情を注いでいる。
この人の存在自体も札幌の魅力の一つに数えたい、
タウン誌編集長、平野たまみさん(53)にお話をうかがった。

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  • 「札幌タウン誌 O.tone 01」

  • 「札幌タウン誌 O.tone 02」

  • 「札幌タウン誌 O.tone 03」

  • 「O.tone について話す 01」

  • 「O.tone について話す 02」

  • 「心を動かされた新聞記事 01」

  • 「心を動かされた新聞記事 02」

  • 「対談 01」

  • 「対談 02」

  • 「平野たまみさん 01」

  • 「平野たまみさん 02」

  • 「平野たまみさん 03」

  • 「平野たまみさん 04」

 

創刊5年目、女性読者もついてくる「オトン」

どのページをめくっても出てくるのは40歳を超えた「おやぢたち」。5月15日に出た最新号には「すし屋で一杯」を楽しむおやぢもいれば、愛車ハーレーダビッドソンを乗り回すおやぢたちも登場する。ヘビースモーカーのおやぢが禁煙外来を訪れる体験記も載っていた。

それもそのはず。「オトン」のマガジンキャッチは「札幌のおやぢたちがナビゲーター」。このブレない編集方針に惚れ込み、「オトン」の読者はついてくる。

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毎月15日発売、月刊5万部発行の「O.tone」。ツボをついたコピーとくらくらするほどおいしそうなカバーフォトが、あまたある雑誌の中から自己主張してくる。


株式会社あるた出版の平野たまみさんと言えば、「すきタン」の愛称で知られた「すすきのタウン情報」(2008年休刊)編集長としてご記憶の方も多いかもしれない。読者はほぼ男性、北の繁華街すすきのの情報誌を作るトップが女性、という話題性で注目されたのも最初のうち。その情熱と行動力でたちまち一目置かれる存在になり、編集長在任期間は16年の長きに渡った。

2006年10月には念願の「大人に向けた雑誌」として「オトン」を創刊した。主役は平野さんが「大切なことは皆、彼らから教えられた」とする愛すべきおやぢたち。ところが読み応えのある内容に思いもかけず女性読者も獲得。2010年7月から電子書籍にもなり、勢いにのっている。 

 
 

「旅と味」に始まる編集者歴、27歳で独立

学生時代は深夜ラジオに夢中だった平野さん。メディアは変わっても「何かを作る仕事に」と人づてに聞いて入った職場がフリーペーパー「旅と味」の編集部だった。1980年という時代の熱気もあったのだろう、“かたぎ”からはほど遠い破天荒な大人たちに囲まれた。先輩たちは机で競馬新聞を読みふけり、入稿日に編集長は行きつけの居酒屋で泥酔している。「雑誌の世界ってみんなこうなんだと思った」と平野さんは笑う。

「いい意味でも反面教師という意味でも私の師匠」と紹介してくれた現・あるた出版山崎巌取締役会長と出会ったのも、この頃だ。「旅と味」から一年後、情報誌「ステージガイド」に活躍の場を移していた平野さんを、ひと足先に「すきタン」編集長に就任していた山崎さんが誘い、名コンビが誕生。2年後にオーナー会社の経営が傾いたとき、当時27歳の平野さんは山崎さんと勝負に出た。会社から独立して雑誌を引き継いだのだ。

「ちょうどバブルに向かっていた時期で、すすきのには大手資本が入り、広告の入稿も掲載枠を超える申し込みがあったほど。時代に後押しされたんでしょうね。私は小娘でしたし40代の山崎もお金が全くなく(笑)、銀行も融資してくれない。あるのは周りの応援だけ。それでもできたのは奇跡だった」と振り返る。
 

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滝川市出身の平野たまみさん。


 

盛り場に集う人同士のぬくもりごと発信

「すきタン」から「オトン」へと媒体は変わっても、平野さんが作る雑誌は常に盛り場の賑わい、そしてぬくもりを伝え続けている。平野さんと旧知の仲であるICCチーフコーディネーター久保俊哉も、「街が創造的であるためには盛り場の存在が必要不可欠。面白い人が集まる盛り場に若い人たちが来ないと次のバトンが渡せない」と平野流雑誌作りに共感を寄せる。

平野さんは言う。「街の魅力は人。人を介して初めて血の通ったぬくもりがある街の魅力が生まれ、人同士のコミュニケーションが文化を生む。だから読者には盛り場でいっぱい議論してほしい。そういう意味でも久保さんがおっしゃる通り、オトンはもっと若い人にも読んでほしいんです」。
 

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旧知の二人。久保「飲みに誘ってもお金のことを心配する若者が多い」。平野「オトンで紹介している店に行ったら、そこにいるおやぢたちにおごってもらって。おごりおごられるバトンを順繰りに渡せばいいんです」。


昨年は電子書籍元年と言われ、デジタル版「オトン」も気軽に立ち読みできるオンライン販売が好調だ。「今は紙と同じ情報を掲載していますが、そのうち電子書籍オリジナルの企画も考えたい」と次の可能性を探っている。



チームで編む雑誌作りは「たのくるしい」

企画を立てスタッフを動かし、自分も取材に出向いて原稿を書く。編集者であるかたわら、経営者というもう一つの顔もある。「会社として絶対集めなければならない数字はあります。そのためには営業も編集も一つになってどんな企画がいいかを考える総力戦。もちろんそれは苦しいことのほうが多いけれど、スタッフたちにはとにかく面白がってほしい」と語る平野さん。
デザインの一部を外の制作会社に、写真もカメラマン10人ほどに依頼している。「雑誌作りは一人じゃできない、チームで編み上げて行く作業。だから苦しいけど楽しい。たのくるしい、なのかもしれません」。
 

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対談や鼎談企画が多いオトン。「既知同士、初対面同士、会わせることで生まれる化学変化が面白い。これからはおやぢと若者を組ませてみたいな」と平野さん。


それにしても「おやじ」ではなくて「おやぢ」である。あなたの周りにもきっといる、「脇が甘くても、決して背中は甘くない」、そんな愛すべき上司や先輩たちが。
姉妹誌の「オキャン」(現在休刊)を作ったときにわかったことがあると平野さんは言う。「女性がしっかりもので、男の人はふらりと面白いことを引っ張ってくる。そんな関係がいいのかなって」。おやぢに学び、おやぢに返す。「オトン」にしか出せないぬくもりの秘密に触れた気がした。



生活の糧を自分で得、誇りに思える仕事を

取材後、久保があらためて平野さんをこう評した。「人と人、人と場所をつなぐ人。人が好きで、札幌には人に伝えたい何かがあるから、彼女はこの街を相手に出版業を続けている。これからは札幌の仕掛け人である“おやぢたち”を“おやぢ予備軍”へとつなげていく平野さんの手腕に注目しています」。
 


〈札幌創造仕掛人に聞きたい! 2つのクエスチョン〉
Q.心を動かされた言葉を教えてください。
A.歌手の小椋佳さんが、中学生のときに原因不明の脳梗塞になった次男の宏司さんに生きる姿勢を伝えた言葉です。「生きていく上で必要なことが二つある。生活の糧を自分で得ることと、誇りに思える仕事を見つけることだ」。15年くらい前に読んだ新聞記事ですが、私も当時まだ息子が小さかったのでこういうことが言える親になりたいと思った。記事は手帳にしまって今も持ち歩いています。

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切り取った新聞記事。
小椋さんの次男・神田宏司さんは現在、琵琶制作者として活躍している。


Q.「人」以外に札幌の魅力って何でしょう。
A.美しい四季が持つ力と適度な都市機能を持ち合わせているところ。この「適度な都会」というところが重要なポイント。「住みたい街」にも名前が上がる札幌の魅力を広く伝えるにはまだまだ仕掛けが必要だと思います。だからオトンでも、もっといろんな人を誌面に出したいし、若い皆さんに「こんな人がいるんだ!」ということを知ってもらいたいな。


●株式会社あるた出版  http://www.alter.co.jp
所在地:札幌市中央区南3条西6丁目3-2 南3条グランドビル3階 電話011-222-0088
設立:1985年
資本金:2,000万円
従業員:13名(2011年5月現在)
事業内容:
定期刊行物の発行
情報誌・書籍一般の制作・発行・販売
PR誌の企画・制作
日刊紙・スポーツ紙・週刊誌等の取材
自費出版の企画・編集


取材・文 ライター 佐藤優子「耳にバナナが」
撮影 ハレバレシャシン


 

最終更新日:2011年06月02日