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ファッションプロデューサー  峰江卓也さん

デザインユニフォームで海外進出

札幌のコンテンツ産業を熱くする名プロデューサーを紹介する
新企画「sapporo ideas city 札幌創造仕掛人」初回は、
ファッションプロデューサーの峰江卓也さん(49歳)にご登場いただいた。
20年間のアパレル会社勤務で学んだブランド戦略を土台に、
「企業の資産」と位置づけたオリジナルユニフォームを企画・製造する。
2009年から台湾に海外初の拠点を置き、さらなる市場拡大を目指す。

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  • 「E2O(イー・ツー・オー)プロジェクト商品」

  • 「台湾企業向けのプレゼン資料」

  • 「ジェイドクラフトデザインの衣装」

  • 「小学4年の時に描いたコミック 01」

  • 「小学4年の時に描いたコミック 02」

  • 「ジェイドクラフトデザイン 高級ホテルロイヤル台北ユニフォーム」

  • 「対談 01」

  • 「対談 02」

  • 「峰江卓也さん」

  • 「峰江卓也さんとジェイドクラフトデザイン衣装」


 

DCブランド全盛期にアパレルの世界へ

峰江卓也さんが東京の大学で多感な青春期を過ごした1980年代は、DCブランドの全盛期にあたる。熱狂的なブランドブームの渦中にいた二十歳の時、突然父が他界する。大学卒業と同時に母が待つ北海道へ戻り、老舗のアパレル会社きりあきで店頭の売れ行きを支える企画・販促・広報に打ち込んだ。

入社10年目にはきりあきが経営する30数店舗全店の売上目標を達成。その後は企画プロデュースに特化した新部署を立ち上げ、2005年に事業ごと引継ぐ形でグループ企業、ジェイドクラフトを設立した。

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富良野出身。小学校低学年からからラグビーを始め、名門の拓殖大学に特待生で入学。が、惜しくも故障で断念。「現役時代のベスト体重は84kg」と聞いて取材陣全員が驚いた!


事業の柱は企業や飲食店向けのオリジナルユニフォームの企画・製造。従来の備品・消耗品感覚に異を唱え、「ユニフォームは企業の資産。着るスタッフの意欲を高め、お客様には企業の姿勢を伝えられる重要なCIツール」とし、峰江さん自身がデザイン画をおこす“デザインユニフォーム”を提案する。

3年前からは台湾に進出し、台湾有数の高級ホテルや飲食店と契約を結んだ。取材翌日にも現地での商談が待っており、日本と台湾を往復する多忙な日々はこれからも続きそうだ。

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新企画「sapporo ideas city 札幌創造仕掛人」はICCチーフコーディネーターの久保俊哉(写真左)も同席。プロデューサー同士の“腹を割った話”を聞き出していく。



「社長秘書って何?」自分の居場所づくりから

20年近く籍を置いたきりあき時代のエピソードには事欠かない。入社当時の肩書きは、切明正勝会長(当時社長)の初代秘書。同時に「仕事は自分で作る」という重責も与えられた。「指示待ちどころか指示がない。自分の居場所を自分で作るしかなかったんです」。

先に進むためのヒントは自身の少年時代にあった。小学校ではマンガ研究会に入り、将来はイラストレーターを夢見た時期もあった。そこで峰江さんは手始めに「月刊きりあき」と名付けた雑誌体裁の社内報を制作。遊び心あふれる出来が認められてからは、じきに「おもしろい新人が入ってきた」と可愛がられるようになる。

当時まだ珍しかった新商品入荷にぶつけた販促フェアにも取組み、販売スタッフが心待ちにする社内表彰式をグラミー賞仕立ての派手な演出で盛り上げた。数々の「社内初」を社史に刻んだ。

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貴重な思い出の品を見せていただいた。小学4年の時に描いた江戸川乱歩原作「天空の魔人」をコミック化したもの。少年探偵団の活躍がいきいきと描写されている。

他方、業界でもいち早く人材育成に力を入れたきりあきだからこそ味わえた貴重な経験もあった。時はバブル期だったとはいえ東京コレクションに毎年プレスを送り込み、しかも一週間近くの滞在を許す地方企業はそう多くはなかっただろう。
「ショーの演出やブランド戦略を含め国内ファッションのトップクリエーションを全身で浴びた経験が、今の自分の血となり肉となっています」。


北海道農業とデザインの融合で時代を先取り

感性と行動力の人である。「同じアイデアを持っていても実際に形にした人は峰江さんの他にいなかった」、ICC久保がそう絶賛する仕事に、道産の食品加工品を斬新なパッケージデザインで売り出した「E2O(イー・ツー・オー)プロジェクト」がある。「北海道ブランド」という言葉が今のように浸透するはるか以前の取組みだ。
 

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「E2O(イー・ツー・オー)」プロジェクト(2003年〜2006年)の商品。写真上段の左から有機トマトジュース、富良野産生パスタ、道産素材のラグーと道内の四季を写したDVDのセット、下段左から羊蹄の水・コーヒー豆・水をイメージしたCDの3点セット、赤井川食品のスティック状漬物、十勝しんむら牧場のチーズソース。スタイリッシュなパッケ—ジデザインと確かな美味しさでどれも完売を記録した。


道外で北海道を語るときに最も魅力的に響く要素は「食」だろう。ところが衣食住の中でも食、とりわけ農業はそれまでデザインとはまったく縁遠い世界だと思われていた。目を転じれば札幌にも優秀な若手デザイナーはたくさんいる。「生産者とデザイナーを結びつけたい」。企画書に思いを綴った。

思いあるところに情報は集まる。じきに当麻町の農家が作る「おいしいトマトジュース」の評判を知った。2003年11月、新デザインボトルに入れた有機トマトジュースをE2Oプロジェクトの第一弾として発売。「東京を対象に1本1000円台で売る」と勝負に出た価格設定も当たり、大手スーパーに並んだ2万本はたちまち完売した。

このとき市場を道外に求めた峰江さんの“外向きベクトル”は、後の海外進出をおおいに予感させる。

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久保「東京で売れるという確信はどこから?」峰江「東京の明治屋などでビックリするほど高い食品加工品が売れていくのを自分の目で見ていた。この商品も“高くないと売れない”と思っていました」



親日家の多い台湾に進出、現地オフィスも新設

メイン事業であるデザインユニフォームの売上も順調だった。実績はすでに500件を突破。札幌ドームや新千歳空港のインフォメーションデスク、東北楽天ゴールデンイーグルスのホームスタジアムのVIPルームにもスタッフユニフォームを納品し、評判もいい。

だがある時、信頼するコンサルタントの「今後のために世界を見てきては」という助言を機に、峰江さんは海外に目を向け始めた。

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YOSAKOI ソーラン祭りの上位入賞チームや2007年札幌開催のノルディック世界選手権開会式のコスチュームも、優秀なデザイナーを抱えるジェイドクラフトの仕事だ。


大きく事態が動いたのは2008年、JETRO(日本貿易振興機構)が主催する台湾・台北市での北海道商談会でのことだった。会場となったホテルの女性スタッフたちが「こんな制服を着たい」とデザイン見本を取り囲むのを見た峰江さんは、翌日の予定を全てキャンセルし、バイヤーに現地の制服事情を聞き取る約束を取り付けた。

もともと台湾には親日家が多い。「聞けば聞くほど日本のデザイン力に期待する台湾でのビジネスチャンスが見えてきました」。帰国後は札幌オフィスで台湾語に堪能なアルバイトを雇い、現地の有力企業に需要を聞く地道な電話営業も続けた。

同年3月には海外で信頼を得るための現地オフィスをかまえ、常駐スタッフを採用した。翌年の初受注は高級マンション管理会社のユニフォーム400着。台北での商談会からわずか一年の出来事だった。

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台湾企業向けのプレゼン資料。初受注の制服400着は中国からなんとプレスもかけられていないシワクチャの状態で納品され、「誠意をもった謝罪とネクタイ100本」で事なきを得た。

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5/2付けのブログより http://jadeckraft.exblog.jp/ ジェイドクラフトのデザインユニフォームをまとった高級ホテル「ロイヤル台北」のスタッフと。


メーカー的な行動力が道内企業の参考に

海外ビジネスは甘くない。大陸特有の相手を圧倒する話し振りや「成約まで三回はある」値引き交渉にも耐えぬいて信頼を築くまでに半年間。トラブルが起きるたびに「これもタフになるための勉強」と信じて、峰江さんは自分を励ましてきた。現在はヴェトナムやモンゴルからも引き合いが相次ぎ、次の展開に期待を膨らませている。

取材を終えた久保は「峰江さんのように企画や販促を知り尽くし、さらに“メーカー的な行動力”でビジネスを成功させてきた人の存在は、道内企業やクリエーターにとっていい刺激になる」と語る。まさに初回にふさわしい人選で幕を開けたこの「sapporo ideas city札幌創造仕掛人」は毎月更新。次回もどうぞご期待ください。
 


〈札幌創造仕掛人に聞きたい! 3つのクエスチョン〉
Q.スタッフや取引先など「人」を動かす決め手を教えてください。
A.僕自身がきりあきで学んだことでもありますが、ビジョンを共有すること。具体的なビジョンがないとラポール(心を開き合う関係)も築きづらいですね。

Q.自分が心を動かされる基準とは?
A.僕の行動のベースにはファッションという軸がつねにあり、次に新しいものや見たことがないものに惹かれ、そしてそれがどれだけ多くの人を喜ばせるかで考える。つまり「カッコイイ、新しい、喜んでもらえて嬉しい」の三原則が揃ったときに心が動かされます。

Q.プロデュース業に必要な資質は何でしょう。
A.スタッフによく言うのは「物事を俯瞰で見てごらん」。事実と感情が混在する現状を俯瞰して、適切な結果を導き出す判断力が必要です。あと、あまり悩まないことかな。プラスのアングルで考えるロジカルな思考法が身に付くと、自然とすべてのことに感謝できるようになる。ですから僕は日本に生まれ、大好きなファッションの仕事をして、出張でアジア各国にも行けるこの人生に心から感謝しています。




●ジェイドクラフト株式会社 http://www.j-ck.com/
所在地:札幌市中央区北1条西20丁目1-27 電話011-215-5088
設 立:2006年
資本金:300万円
従業員:9名
事業内容:ユニフォーム・コスチュームなどの企画・デザイン・制作、
                販売促進活動の企画・コーディネート・プロデュース、
                ファッションイベントの企画・コーディネート・プロデュースなど



取材・文 ライター 佐藤優子「耳にバナナが」
撮影 ハレバレシャシン
 

 

最終更新日:2011年05月12日