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フェルト作家  丹治久美子さん

数ある「札幌スタイル」認証作品の中でサイズ、インパクトともに
ひときわ大きな存在感を放つトリ型フェルトバッグ。
ニュアンスたっぷりの柄模様は作者の丹治久美子さん(40)が
「長い実験期間」の果てに完成させたもの。
現在バッグ以外の商品を展開するセカンドラインの準備も進み、
2011年は「トリシリーズ」飛躍の一年になりそうだ。

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  • 「札幌スタイル トリ型フェルトバッグ 01」

  • 「札幌スタイル トリ型フェルトバッグ 02」

  • 「札幌スタイル トリ型フェルトバッグ 03」

  • 「持ち歩けるアクセサリー トリバッグ」

  • 「素材 羊毛フェルトスライバー 01」

  • 「素材 羊毛フェルトスライバー 02」

  • 「素材 羊毛フェルトスライバー 03」

  • 「フェルトバッグ 柄 01」

  • 「フェルトバッグ 柄 02」

  • 「柄に用いるプレフェルト 01」

  • 「柄に用いるプレフェルト 02」

  • 「タイトル sheep sleep 一生とけないアメ玉」

  • 「すべて手作り 01」

  • 「すべて手作り 02」

  • 「あたたかみのあるバッグたち 01」

  • 「あたたかみのあるバッグたち 02」

  • 「フェルト作家 丹治久美子さん 01」

  • 「フェルト作家 丹治久美子さん 02」



愛されキャラに成長、トリ型フェルトバッグ
フェルト作家丹治久美子さんの看板作品「トリ型フェルトバッグ」が誕生して2011年で6年目に突入する。現在は丹治さんが運営するサイトや百貨店などの催事場で販売中。1個52,500円と気軽に買える価格ではないが、「友だちの分も」と一度に何個も買い上げる熱烈なファンもいるという。
 

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バッグ本体の幅は約38cm、高さ約23cm。ひとまわり小さいサイズ(幅約30cm×高さ18cm 37,800円)もある。取材協力/札幌スタイルショップ(電話011-209-5501)

見る人を惹きつけて離さない魅力の要因は、大人も持ちやすいシンプルなトリのフォルムと個性的な柄模様にある。柄模様については後ほど触れるが、まずトリ型にしたきっかけを丹治さんに尋ねると、「お土産でいただいた鳩サブレから。夢がなくてスミマセン(笑)。でも実際に販売してみると“顔”があるせいか、“この子を一生大事にします”と感情移入してくださるお客様が多くてありがたいです」。
着想を得た銘菓に劣らぬ“愛されキャラ”に成長しつつあるようだ。

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白一色と化す冬の札幌に彩りを添えるトリバッグ。「持ち歩けるアクセサリー感覚でかわいがってもらえたら」と丹治さん。



縮む性質を活用したフェルトメイキング
柄模様の秘密に迫る前に丹治さんに制作工程を解説していただいた。
「私がやっているのは、羊毛フェルトの縮む性質を利用した“フェルトメイキング”といわれる手法です」。主な材料はスライバーといわれる原羊毛の束とせっけん水。針と糸、ノリなどつなぎ合わせるための材料は一切使わない。

ビニール製の型紙の上にスライバーから手でちぎったフェルト繊維を縦横に並べていく。そこにせっけん水をかけるとフェルトは縮み、繊維同士が互いにからみついて布状に固まる。1層目ができたら2層、3層…と厚くしていき、「トリバッグは8層重ね」。型紙の両面に同じ作業を繰り返し、型紙を抜いて裏表をひっくり返すとトリ型ボディーが完成する。
  

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羊毛フェルトのスライバー。束から繊維をちぎって型紙の上に載せていく。


「せっけん水をかけたり表面をたたいたり、フェルトをさんざんいじめて出来上がり(笑)。簡単でしょ。簡単で誰でもできるからこそ“自分にしかできない表現”を追求するのが難しい」。
出身地の仙台から札幌へ越してきたばかりの15年前、まだフェルト手芸が珍しかった時代にたまたま入った作品展で「縫い目が一つもない」フェルトの不思議に魅了された。自己表現のためのツールとしてフェルトを自在に操るようになるまでには、それから10年もの長い歳月を要したという。



独得の柄模様、秘密は異素材使いにあり
さて、「柄模様」の話である。トリバッグを彩るカラフルな柄模様はクレパスで描いたぼかし絵のようにも見え、「一体どうやって?」と思わずにはいられない。
  

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白いシルクの縁どりがきいている柄模様。タイトルは「mement/時間旅行」。
 

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赤い毛糸をアクセントに使った「imaginary note/小さな屋根の上より」。

試しに白い縁どりの円模様を触ると、なにやらフェルトとは違う手触りがした。
「そう、その白はシルクです。縒ったシルクで外周を作り、その中にあらかじめ薄い層で作っておいたプレフェルトを丸く切って置く。羊毛と他の素材とでは縮む比率が異なるので、せっけん水をかけるとフェルトは均等に縮みたいのに異物があるため“いったりきたり”する。そこにフェルト単体だけでは出せない面白い風合いが生まれるんです」。
他にオーガンジーやガーゼを用いることもあるこの異素材使いが、「一つとして同じものがない」トリバッグ独得の柄模様を成立させていたというわけだ。
 

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柄模様に使うプレフェルト。本体とからみやすいようにあらかじめ薄い層で作っておく。



大切にしたい言葉や心象風景をフェルトで表現
丹治さんはいう。「フェルトを始めて10年目にこの柄模様ができたとき、ようやく“自分ならではの表現”が見つかった、人に見てもらいたいと思えるようになったんです」。それまではひたすら自宅で「実験」と呼ぶ試作の繰り返し。安易に個展を開くことを自分に禁じていた。

児童書で読んだ時間旅行への憧れや幼い頃父の実家で見た桑の木の思い出——形を持たない言葉やお気に入りの心象風景をフェルトで表現するため、幾度とない試作を繰り返し、丹治さんしか知り得ない確かな技術を完成させた。
 

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映画のタイトルのようなネーミングに想像力をかきたてられる。
 

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フェルトメイキングはすべて手作業。丹治さんだけが知る最適な長さ、厚みの数値データがある。

“旅するトリ”をテーマにした柄模様はスタート時の5種類から増えに増えて今ではなんと15種類—「sheep sleep/一生とけないアメ玉」「mement/時間旅行」「mulberry day/桑の実がなる風景」など—バッグをキャンバスがわりに表現した丹治久美子の世界が、「かわいいフェルト手芸」の枠にとどまらない魅力を放ち続けている。

「“一生とけないあめ玉”は私にとっていつまでも飽きないものの象徴ですが、“子どもがあめ玉を嬉しそうにほうばる姿を想像しながらバッグを使っています”とお客様自身がイメージを膨らませてくれることも嬉しい驚きでした」。
バッグの数だけ“物語”が生まれることに作り手冥利を感じるという。

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15種類のネーミングは次の通り。water hole/水たまり、sometimes snow/4月に降る雪、spring court/春コート、self portrait/羽、into forest/森の中で見つけた光、home path/帰り道、mement/時間旅行、drape/波打ち際の向こう側、imaginary note/小さな屋根の上より、small town/その街の始まりは夜、sheep sleep/一生とけないアメ玉、desert flower/砂漠が美しいのは?、mulberry day/桑の実がなる風景、rondo/回旋曲、dawning/黎明・夜明けから



セカンドライン第一弾は“勉強するトリ”
自分の世界観を表現したトリバッグの完成を機に、丹治さんは「札幌スタイル」に応募。認証と同時に交流の場や人脈も一気に広がった。異なるジャンルのクリエイターや協力企業から刺激を受け、2011年の春にはバッグ以外の商品を展開するトリシリーズのセカンドラインを発表する。

第一弾は、景観にやさしいレジャーシート「さくらシート」を制作した山内ビニール加工株式会社と作る知育玩具に決まった。「まだ詳しくはお知らせできませんが、特殊なビニールを使ったお風呂で遊ぶものになります」。
バッグの“旅するトリ”から今度は“お勉強するトリ”へ。セカンドラインのトリにはいろんなことを体験させたい。「あれもやりたい、これもやりたいって考えていくと最終的にトリは私自身になっちゃうのかなぁ」。
 

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屋号の「フェアグラウンドアトラクション」は移動遊園地の意味。「楽しそうな響きが気に入って」今は解散したイギリスのバンド名から拝借した。

昨年でフェルト歴15年が過ぎた。黙々と試作し続けた「実験」の日々を今あらためて振り返ると、「長かったですよね。でも私は天才ではないので自分のスタイルを見つけるには努力あるのみ。ブレない軸ができた今は前に進むだけです」。
職人気質の地道な試作から生まれた丹治久美子さんのトリシリーズ、2011年の大きな羽ばたきに期待したい。

 

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■フェルト作家 丹治久美子「Fairground Attraction」
HP : http://www.fairground-attraction.com/
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取材・文 ライター佐藤優子(耳にバナナが
撮影 ハレバレシャシン

最終更新日:2011年01月17日