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プロデューサー  服部亮太さん

札幌の「今」を伝える情報発信サイト
「sapporo6h」(サッポロシックスエイチ)の代表、服部亮太さん(31)。
ホームページとTwitterで開催6時間以内の情報を発信し、
動画配信サービス「Ustream」では生中継映像を配信する。
メディアや企業から「一緒に面白いことをやりたい」とオファーが殺到中、
2010年の札幌をおおいに盛り上げた若手プロデューサーだ。

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  • 「服部さんたちSapporo 6Hが運営するWEBサイト」

  • 「USTREAMと連動するTwitter」

  • 「服部亮太さん 1」

  • 「服部亮太さん 2」

  • 「服部亮太さん 3」

  • 「服部亮太さん 4」

  • 「服部亮太さん 5」

 

「今からでも間に合う」開催6時間前の情報

「sapporo6h」のホームページやTwitterを見に行くと、紹介されているイベントはその日開催のものばかり。しかも掲載から6時間後に始まるという「今からでも十分間に合う」意識が重い腰を上げさせてくれる。
この、ほど良い“開催6時間前”の情報発信こそ「sapporo6h」独自の切り口。代表を務める服部良太さんの多忙な会社員時代に育まれたアイデアだ。

実家は江別。イベント企画やバンド活動に熱を上げた大学・フリーター時代を終えると、「人の生活が見てとれるスーパーが好き」という志望動機で地場企業の株式会社ラルズに就職した。
担当はスーパーの花形である青果売り場、加えて新店への配属が多かった。朝早くて夜も遅い。気がつけば家と会社を往復する毎日で、早上がりの時でさえ部屋でゴロゴロ。カルチャー情報を集める気力も術もなくなっていた。

「忙しい自分みたいな人にも情報を届けてくれる仕組みがあれば」、そんな願いが出発点となった。

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「sapporo6h」HP:http://www.sapporo6h.com/ 

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Twitter:@sapporo6h http://twitter.com/sapporo6h

「一日を朝昼晩、寝る時間の4つに区切ると6時間単位。“朝と夜”よりもっと近い時間感覚で札幌の『今』を届けたかったから『sapporo6h』です」と服部さん。



会社経験を栄養分に「sapporo6h」の実現へ

スーパー勤務4年後に東京のレコード会社へ転職し、販促・宣伝・制作活動に飛び回った。今でも連絡をとりあう元上司とはこんなエピソードがある。
インストアライブの現場に追われ一度報告を怠った。自分の中でいくつも言い訳はあったが、怒った上司は「もういい」と口をきいてくれなくなった。二週間後、会社があった渋谷の雑踏の中、スリッパ姿のまま上司を追いかけた服部さんは頭を下げて己の非を詫びた。「社会で仕事をするための基本『報告・連絡・相談』の大切さを教えてくれました」
二度の会社勤めの経験が、30歳で「sapporo6h」を始めた栄養分になっている。

2009年5月、親会社の倒産により服部さんは職を失い北海道に帰郷した。だが、想像以上の就職難に「昔の自分が求めていたことを自力でやってみよう」と「sapporo6h」構想の実現を決意する。
この頃友人に構想を話し、IT技術に詳しい吉本直人さんを紹介されたことも幸運だった。「IT音痴の僕をサポートしてくれる、うちの頼もしい技術部です」と信頼を寄せている。

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毎週月曜午後8時から「サッポロUSTbar」を生放送中。取材協力はその会場である「OYOYO(オヨヨ)大通まち×アートセンター」


「これからの時代に君の役割は大きくなっていく」

「sapporo6h」の面白さは幾つものソーシャルメディアの「合わせ技」にある。ホームページの他に、140字の短さと即時性で人気のTwitter、大がかりな機材がいらない動画配信サービス「Ustream」を併用しながら札幌の「今」を発信する。
「実際、僕らのメイン機材は実家にあった父親のWEBカメラ。時にはiPhone一台の時もあります」。忙しくて行けなかったイベントもUstreamのアーカイブ機能なら後追いが可能。昔の自分が思い描いていた「あったらいいな」を実現していった。

初のUstream配信は昨年のクリスマスイブ、「勝手にすすきのパトロール」でデビューした。「さみしい人たちはイブのすすきのの様子なんて知りたくないはず(笑)。それを僕が代理で見に行く企画です」。肩の力が抜けた内容に沖縄やドイツの視聴者も楽しんだ。


初の動画配信となった2009年12月24日の「勝手にすすきのパトロール」。今年もやるんですか?の問いに「他のスタッフは誘いづらいので僕一人でも」

2010年1月には札幌市立大学デザイン学部が主催した市民公開講座「CGMが拓くジャパンコンテントの未来」の同時配信を「やらせてください」と志願した(動画は現在非公開)。
その時ソーシャルメディアに詳しい主催者の一人からもらったメールは今も大事に保存している。「これからの時代に君の役割は大きくなっていく、と励ましていただき前に進む勇気をもらいました」。

このメールに導かれるように服部さんの出番はその後加速度的に増えていく。


服部さんが番組の制作も行っている『au by KDDI presents Go to the future on Ustream!!』


企業や自治体が注目、メディアとの連動も

個人事業主である服部さんは現在フリーのプロデューサーとして活動中。「sapporo6h」をホームとする自主企画の運営・配信と、企業や自治体からの依頼配信をコンテンツとしている。前者では進行台本の立案もゲストの出演依頼も本番の司会もすべて自分の役割。後者は企画立案からの依頼も少なくない。

他方、道内でもいち早くUstreamとTwitterを連動させた動画配信を始めた服部さんに対するメディアの反応は早かった。まずHTBから声がかかり、7月には参院選の北海道地区開票速報を、9月には局の看板番組である『水曜どうでしょう』DVD発売に伴う制作者のトークライブを配信した。「『水曜どうでしょう』の時は同時視聴者数が2万5千人を記録。累計約9万人に見ていただきました」

夏にはNHKのドキュメンタリー番組の取材を受け、当日のオンエアーをディクレターと一緒に見ながら制作裏話を語るという“逆取材”的な場もUstreamで配信した。


『ぶんぶん6h〜北海道の食材大研究!!』Ustreamの生放送中にTwitterでつぶやかれた視聴者の意見や質問をゲストにぶつけることもできる。


視聴者が価値を見出す双方向性を追求

ソーシャルメディア時代のプロデューサーである服部さんに今後の目標を聞いてみた。「UstreamもTwitterも視聴者との“双方向性”が鍵。見てくださる方々にどう情報を渡せば、皆さんの心も体も動かせるのかを考え実行するのが僕の仕事です。sapporo6hは誰もが使える“まちの拡声器”。まちを楽しく歩くための拡声器としてどんどん活用してもらえたら。今後は世界にも札幌の『今』を伝えて、札幌でこれから何かをやろうとしている人たちも応援していきたいです」

「勝手にすすきのパトロール」の中継時、沖縄の誰かがつぶやいた。「こんなに短い間にも雪って積もるんですね」。ホワイトクリスマスを喜ぶ声に服部さんは衝撃を受けた。「札幌に住む自分たちが当たり前だと思っていることにも視聴者が価値を見出してくれる。それを知ることができたのも双方向性を持つメディアならではの面白さです」

札幌在住の皆さん、もし今年のイブにすすきので服部さんを見かけたらどうぞ応援を。そして携帯電話やパソコンからご覧の皆さんにも、「祝2年目」のメッセージで服部さんと「sapporo6h」のイブを温めてもらいたい。

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父親はその昔アマチュア無線が趣味でホームページを運営していたことも。「遠くの誰かとつながるのが楽しい。“カエルの子はカエル”です」

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■プロデューサー 服部亮太
「sapporo6h」HP : http://www.sapporo6h.com/ 
Twitter : @sapporo6h http://twitter.com/sapporo6h
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取材・文 ライター佐藤優子(耳にバナナが
撮影 株式会社ハレバレシャシン