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彫刻家  国松希根太さん

荒々しく、存在感のある大きな2片の木彫。
よく見ると、薄く張られた水の上に浮かんでいる。
作品「ICEBERG」は、若き彫刻家・国松希根太さんが氷山をモチーフに創作した最新作だ。
 

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  • 「国松さん 1」

  • 「国松さん 2」

  • 「国松さん 3」

  • 「ICEBERG 1」

  • 「ICEBERG 2」

  • 「ICEBERG 3」

  • 「ICEBERG 4」

  • 「ICEBERG 5」

  • 「ホロホロ山 1」

  • 「ホロホロ山 2」

  • 「ホロホロ山 3」

  • 「ポートフォリオ 1」

  • 「ポートフォリオ 2」


忘れ得ぬ白老・飛生の記憶

1977年札幌生まれ。父は彫刻家、祖父は画家という芸術一家に育つ。
小学校3年の時、父の芸術活動の関係で、札幌から白老町の飛生(とびう)に移住した。都市部の学校からいきなり複式学級の小学校へと環境が激変したが、この時の体験が現在の自分に大きな影響を与えているという。

「同級生は2人、運動会も3人で走るというような田舎生活に変わって、相当なカルチャーショックを受けました。楽しかったというより、大変だったなというのが正直な印象です。ただ、週末になると父の仲間の芸術家などがたくさん訪ねてきて、話を聞いたり、作品を見たり、秋にはジャズコンサートを開いていたりしたので、そうした経験は今に生きていると思います」。
高校入学後、アートの道に進むことを決め、東京の美大に進学した。



木の魅力に惹かれて

大学では金属彫刻を専攻したが、その後の創作活動の中で小さな木のかたまりとの出会いがあり、木彫の世界に関心を持った。
カツラの木をグラインダーで削ってみると、こちらの動きや想いといったものが木に直接的に伝わり、刻々と変化していく姿がとても面白く感じた。出来上がった作品自体は格好の良いものではなかったが、それまでにない満足感が得られたという。

「金属の場合は、最初に“こういうものを作ろう”と決めてスケッチをしてから取り掛かるので、僕の場合はプラモデルを作るような感覚でした。それが面白いところでもあるのですが、木彫は、やっているうちに形が見えてくるという面白さがあります。計算された金属の世界に対して、木には節やコブなどの表情があって、「ここは残そう」とか、「ここは手を入れよう」とか、創作の中で見えてくるものがあります。それに向き合っていくのが自分のスタイルかなと思えたのです」。
木への想いを強くした国松さんは、木彫刻家として精力的に活動を始めた。
 

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国松さんが木彫の面白さを知るきっかけとなった作品「シズクノオドリ」


水を使って氷山を表現した「ICEBERG」

去る5月29日から、道立近代美術館で開催された「北海道立体表現展’10 アート・トライアングル」への出品作「ICEBERG」は、氷山をモチーフにした意欲作で、水の上に木彫を浮かべるという、自身初のチャレンジとなった。

風景や山並みをモチーフに作品を作ることが多い国松さんだが、今回のテーマは氷山。
カツラの木を使い、チェンソーの荒々しい削り跡があるかと思えば、樹皮、節、うねり、コブなど、木の個性を生かした部分が随所に見られ、“木の氷山”は、様々な表情を見せている。
木が元々持っている形に対して自分がどうアプローチできるかを追求し、作品に仕上げていく国松さんの創作スタイルがこの作品にも生かされている。

実際の氷山は水の下にも山があるため、作品を見る人に水の下の見えていない部分も想像してほしいと考え、暗い場所で作品が浮かび上がるようにしようと構想した。水を使うのは本作品が初めてだったため、水漏れの心配や作品配置などに苦労が多かったというが、木と水による氷山は、見事に表現されていた。

「遠くから見ると、水に作品が反射して見えたり、湖に浮かぶ山などのインスピレーションを感じてもらったり、作品を見てくれた人も、どこかで昔見たことがある風景と重ねあわせて感じてもらえると嬉しいですね。木を彫っていると凸凹ができてきて、それが地形やランドスケープのように感じられて、「もしもそこを自分が登っていたらどう見えるだろうか」などと考えながら創作しています。見る人にもそれが伝わってほしい」。
 

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 氷山をモチーフにした作品「ICEBERG」は、水の上に木彫を浮かべた  
 
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 写真:瀧原 界



作品に“新しい生き方”を与えたい

札幌都心部の瀟洒なビルの屋上。
ガラス張りのコミュニケーションスペースの一角に、国松さんの作品「ホロホロ山」が飾られている。
コンクリート打ち抜きの壁を背景に置かれたこの作品は、白老から見える「ホロホロ山」をモチーフに創作したもので、木を白く塗り、その後でさらに削った結果、溝に白い部分が残り、残雪の様子がイメージされる。

この作品「ホロホロ山」は、札幌のギャラリーに展示された際にビルのオーナーの目に留まり、この場所に飾られることになったものだ。
不思議なもので、じっくり見ていると、「この作品はこの場所になければならない」と思えてくる。そのことを国松さんにぶつけてみると、次のような答が返ってきた。

「作品を買ってもらうと、作品は買い手の家や玄関に置かれ、その人の生活のサイクルの中に作品が存在するようになります。それは、買い手によって作品が新たな生き方を与えられたことを意味します。アトリエにあった時とは違う世界で作品が生き、置かれた空間が良くなって、訪れる人の気持ちが少しでも癒されれば嬉しいですね。そのために、作品がもっと生活の中に置かれる機会を増やしたい」。

アートをもっと身近に感じてもらおうと、展覧会と音楽をミックスしたイベントを企画するなど、アート理解の裾野を広げる活動も精力的に行っている。
 

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作品「ホロホロ山」は国松さんの手を離れ、札幌都心のビルの一角に新しい生き場所を得た



飛生から世界をめざす

国松さんは現在、自身が小学校3〜4年の2年間を過ごした白老町の旧飛生小学校を町から借り受けて「飛生アートコミュニティー」とし、仲間とともに、ここを創作の拠点としている。
自然環境に恵まれ、広いスペースがあり、夜間でも思う存分に創作できる環境は、創作に最適なだけでなく、白老には材料の木材を扱う業者もあり、木彫を行うには恵まれた環境にある。

ここを拠点に創作を行う国松さんの今後の目標は、海外での作品展の開催だ。
「これまでに香港と上海には作品を出品したことがありますが、もっと海外で作品を見てもらう機会を作りたいと思っています。香港では、日本人アーチストではなく、北海道のアーチストとして紹介されたことに驚きました。「北海道」という土地の名前が定着しているのです。「北海道」を意識しつつ、「北海道」で作った作品を海外に出し、それが海外の人にどう見えるかを知りたいと思っています」。

一方で、飛生の地域にこだわった活動にも力を入れており、飛生アートコミュニティーをベースに、アートあり、音楽ありの「飛生芸術祭」を開催している。
「このイベントが目指すのは、盆踊りや収穫祭のように、地域に根差した村まつりです。大げさなイベントではなく、村祭りに行ってみたら、そこに絵や彫刻があったり、音楽ライブをやっていたという感じになれば良いと思っています。これは白老の廃校だからこそできることなので、続けていきたいですし、海外からの観光客などにもぜひ見せたいですね」。

飛生を活動のベースにしながら、外にも、そして内にも、活動の範囲は今後も広がっていきそうだ。
 

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飛生発 世界へ! 意欲的な創作が続く



見る人と作品との対話を生み出したい

「作品は、作家が作って提示した時に完成するのではなく、作品とそれを見る人との間にそれぞれのやり取りがあって初めて完成するものです」。
インタビュー中、国松さんは何度もこのことを強調した。

「例えば、私が海をイメージして作った作品が、ある人には山や砂漠に見えるかもしれません。私のイメージどおりに受け取ってもらえるのは嬉しいことですが、そうでなくてもかまわないのです。作品を見る人は、その人がそれまで見てきた風景や景色をイメージしながら作品を見ます。人それぞれに、作品との間にやり取りがあって、それがあってはじめて作品が完成するのだと思っています。また、そのやり取りがなければ作品を作っている意味がないとも思います」。

さて、その国松さんの作品たちと対話ができる機会が、今後もたくさん用意されている。

2101 「北海道立体表現展'10 小品展」 札幌/ 札幌彫刻美術館  (5/15-6/27)
2010 「HORIZON PART Ⅱ」 札幌/ 六花亭福住店2F喫茶室  (7/1-7/31) 個展
2010 「日常にアートを。」  札幌/ギャラリー門馬  (7/7-7/14)
2010 「飛生芸術祭」  白老/飛生アートコミュニティー (8/29)
2010 「HORIZON PART Ⅲ」  帯広/弘文堂画廊 (11/6-11/21)個展

それぞれの機会が、どんな対話のネタを提供してくれるのだろうか。
開催が待ち遠しい。

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■彫刻家 国松希根太
website: http://www.kinetakunimatsu.com/
飛生アートコミュニティー
website: http://www.tobiu.com/
北海道白老郡白老町字竹浦520

取材・文 佐藤栄一(プランナーズ・インク
写真    山本顕史(ハレバレシャシン

 

最終更新日:2010年6月22日