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PaintMonster ArtStudio アーティスト 伊藤マーティさん

【北海道新聞掲載記事】
今にもモデルが額を突き破って勢いよく飛び出してきそうなイラスト。
楽しくて思わず口元が緩んでしまう小さなトイ。
これらは札幌で活躍するアーティスト、伊藤マーティさん(41)の手によるものだ。
見る人を元気にし、シアワセにしてくれる作品の数々はどのように生み出されているのだろうか。

1_martytop.jpg


  独自の作風が生きる陽気で楽しい作品の数々

伊藤マーティさん(以下、マーティさん)は札幌出身。専門学校でデザインを学び、卒業後に就職した広告代理店では制作ディレクターの仕事を担当した。
「当時はバブル経済の最盛期で、制作が間に合わないので自分でイラストを描くこともありました。たまたま新聞社の冊子向けに描いた絵が採用になって、以後2年間、表紙の絵を描かせてもらうことになりました」。
それが転機となり、27歳で独立してアーティストの道を選び、現在に至っている。

マーティさんの作品は、平面、CG、アニメーション、立体と、属性を問わずあらゆるジャンルに広がり、そのどれもが陽気で快活感にあふれ、見る側を元気にさせてくれる。
「一緒に遊ぼうよ」と話かけてきそうな女の子の表情、うっとりと悦に入っているような猫の姿など、どの作品も楽しく、見る者を飽きさせない。

昨年創作した「angrydog」という名の小さなスカルプターも、その形といい、デザインといい、マーティさんの個性がよく出た作品のひとつだ。
大きく空いた口と歯が印象的なこの立体は、西瓜や花など、様々なデザインのものがあり、これをハリウッドの真ん中にある店に持ち込んだところ大爆笑を誘い、3種類まとめ買いする人もいたという。
ぱっと見ただけで「マーティさんの作品だ」とわかる、独自の作風がマーティさんの強みだ。

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大型の作品「プリンセス」。得意げな表情の女の子と赤のバックが印象的

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小さなスカルプター「angrydog」は、ハリウッドでバカウケした


 旺盛で活動的なアートワーク

そんなマーティさんの制作スタイルは一風変わっている。
「PCを使って制作する時も、アナログとほぼ同じ工程をPC上で再現しているのです」。
絵の具を調合し、筆で色付けするように、一つずつPC上で色を作り上げては着色し、その工程はまさに紙の上で展開されているのと同じ手法だという。
立体の「angrydog」も、意図的に粗さを表現するため、着色は手塗りだ。
マーティさんの個性あふれる作品たちは、こうした“こだわりの手法”によって生み出されているといって良いだろう。
その個性的な作品に魅せられたファンは多く、イベントを催せば必ず足を運んでくれる母娘や、「お祝いに贈りたい」といって作品を求める年配の客もいるという。

そうした理解者の存在が旺盛な創作意欲を掻き立てる要因なのだろうか、マーティさんの作品制作は驚くほどハイペースだ。構想が出来上がると2〜3日で一気に描きあげてしまうことも多く、企画展やイベントではその場で絵を描いて見せる「ライブドローイング」を行うことも度々だ。

「ネタ帳」でもある4種類のスケッチブックをいつも持ち歩き、時間を見つけてはペンを走らせ、ネタを膨らませながら作品づくりに励む一方、国内外のイラスト、ドゥードゥルアート、ミックスドメディアなどのアーティストを発掘し、展覧会を企画開催する団体「Doodler & Illustrator Discovery Organization」(DIDO)の代表を務めるなど、その活動は幅広い。

 4_marty-desk.jpg
マーティさんのアトリエ風景。ここからハイペースで作品が生み出される


海を越えるPaint Monster

マーティさんの強みは、海外、中でもロサンゼルスを中心とするアメリカ西海岸との深いつながりだ。
海外には23歳の時から毎年通い、現地のギャラリーやアーティストたちとネットワークを築き、アートショーにも参加してきた。
「最初に行ったカナダでは、英語もわからず、むこうのビジネスのしくみもわからずに、作品を持って、いきなりギャラリーの門を叩きました。いま考えると無謀なことだと思いますが、1日だけ作品を置かせてもらうことができました。当時はなかなかアジア人の作品は扱ってもらえず大変でしたが、何度も通ううちに、ギャラリーやアーティストたちとのネットワークができました」。

海外でのマーティさんは、Paint Monsterというニックネームで呼ばれ、アートショーへの出品やドローイングなど、海外での精力的な活動、インターネット上での積極的な作品露出によって名前や作品が知られるところとなり、西海岸では「作品を見たことがある」といわれることも多くなった。

今年10月には、ロサンゼルスで開催された「ハローキティ35周年記念アートショー“Three Apples”」から参加のオファを受けた世界で約50人のアーティストの一人に選ばれ、立体作品と平面作品の2点を出品した。
活動フィールドをグローバルに展開することでチャンスを広げ、精力的に作品を発表している様子は、Monsterそのものだ。

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タテ長の作品は、日本の住宅事情を意識して制作したもの


ドローイングセッションで、描く楽しみとアートへの理解を促す

海外を行き来するなかでマーティさんは、街がアートを受け入れる姿勢やアートに対する人々の関心、生活の中におけるアートの存在に海外と日本との大きな違いを感じた。
「アメリカでは家の中にたくさん絵を飾っているお宅が多いのに驚きます。子どもの頃からお小遣いで自分のための絵を買うという習慣があって、「この絵を飾るとしたら椅子やテーブルはどう置いたら良いか?」といった教育もあるそうです。日本では残念ながら生活の中でのアートの順位が低いと感じました」。

この状況をどうにかしたいと始めたのが、マーティさんのアトリエを会場に毎月行われる「ドローイングセッション」だ。
毎回テーマを決め、参加者には葉書サイズの紙に絵を描いてもらう時間で、親子や学生、一般の人たちなど毎回20人ほどが自由に参加し、筆やペンを走らせている。
描き方の指導は一切せず、好きなように描いてもらっているとのことだが、最初のうちは全く描けなかった人も、回を重ね、他の人の作品を見たりするうちにどんどん上達していくという。
「描いた作品はスタジオの壁に貼り付けてみんなで眺めます。一つのテーマで描いても描く人によって様々な表現方法や考え方があることに気がつき、私自身も大いに勉強させられることがあります」とマーティさん。絵を描く楽しさを知ってもらうことからアートへの感心を高めてもらおうというこの企画は、他の地域にも影響を与え、現在では東京や大阪などでも同様のセッションが行われている。こうした地道な積み重ねがアートへの理解を深めていくことだろう。

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ライブドローイングで描いた作品

 

 “普段着のアート” をめざして

「“普段着のアート”をめざしていきたい」― マーティさんは自身の活動方向をこう語る。
インディペンデントなアーティストとして、自分の目でみたもの、感じたことを作品にし、それをみた人が心地良かったもの、気入ったもの、笑えたものを自然と手にとってくれるという、そうした関係性ができれば素敵なことだろう。

そんなマーティさんの作品を存分に楽しむことのできるアートイベントが12月13日(日)まで、三越札幌(本館9階アートスクエア)で開催されている。
マーティさんが生み出す楽しい作品の数々や、それが凝縮されたスケッチ集「WAO5」、2010年カレンダーなどが販売され、12日(土)、13日(日)にはトークショーやライブドローイングも行われるので、ぜひ足を運んでほしい。

「会場で僕をみかけたらぜひ声をかけてください」とのことなので、作品や創作の話、アメリカでのエピソードなど、マーティさんとの会話もぜひ楽しんでほしい。

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マーティさんのアートイベントは12月13日(日)まで、三越札幌本館9階アートスクエアで開催中

 

BGM:渡辺崇(Junkan Production)

 

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■PaintMonster ArtStudio 伊藤マーティ
http://www.paintmonster.com

取材・文 佐藤栄一



 

 

最終更新日:2009年12月7日