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溢れるバイタリティー 演劇集団BeeHive 浦本 英輝 氏

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- 浦本英輝とは

役者・演劇プロデューサー・造型師
演劇集団 BeeHive 代表 / Full Scale Factory 代表
2008年4月ICC入居
札幌市在住

 

- Bee Hive

演劇集団BeeHiveは、浦本さんを中心としてプロジェクトごとに役者やスタッフが集まるユニットだ。
企画・プロデュース・役者・小道具と実に4役もこなし、さらに演出のサポートも行うなどバイタリティー溢れる浦本さん。

「アクション劇に大きな魅力を感じています。北海道では演じる劇団も少ないのですが、素晴らしいエンターテイメントの一つだと信じています。」
そんな彼の素顔に迫った。

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舞台で演技をする浦本さん

 

- 演劇との出会い

幼い頃からヒーローに憧れていた浦本さん。
専門学生のときにアルバイト感覚の軽い気持ちでヒーローショーのアルバイトを始めたが、だんだんと演じることが楽しくなっていく。やがて古い小道具しかないステージをなんとか工夫して華やかにできないかと考えるようになり、自然と自分たちで小道具も作り始めていった。

そんな彼の熱い想いが、後にBeeHiveの旗揚げ公演として、人気劇団「劇団☆新感線」の作品である「野獣郎見参」を使わせてもらえるきっかけとなったのかもしれない。

 

- 野獣郎見参 やまびこ座公演

野獣郎見参」は、多くの実力派俳優を輩出した関西発の個性派劇団「劇団☆新感線」の中島かずき氏の脚本で、戦乱の応仁期を舞台に描く、時代活劇。
書籍としても販売されたこの作品を公演するには、著作権が大きな問題だ。
莫大な脚本料がかかるだろうと交渉に踏み出せずにいた浦本さんだが、BeeHiveの旗上げ公演はこの作品しかないと一大決心して著作元に連絡をしたところ、思いのほか話はスムーズに進み、脚本料も予算内で落ち着いた。
しかし著作元は、アクション・舞台・衣装・照明が派手な劇団。
まだまだ演劇発展途上の北海道で公演するのは、大きな挑戦だった。

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(上)野獣郎見参での一幕  (左下)野獣郎  (右下)浦本さんと野獣郎

 

- マルチプレイヤー

「野獣郎見参」は、総勢30人の役者が必要となる。浦本さんは、キャスティングやスケジュール調整、道具の制作を行うなど、ここでも持ち前のバイタリティーを発揮する行動に出た。

キャスティングについては、自ら他の劇団で演じ共演した役者の実力を肌で感じながら行うという徹底ぶり。声をかけた役者の中には、同じくICCに入居している演劇団体「ゴールデンキラーズ」の劇団員もいた。
しかし、どうしても激しいアクションをこなせる役者が見つからなかった。

北海道にはアクション役者が少ないのが現状だ。「野獣郎見参」をエンターテイメントとして成立させるには、このアクションを100%こなせる役者が必要不可欠であり、客観的に分析しながら、この役をこなせる役者は自分しかいないという結論にたどりついた。

北海道の演劇産業はまだまだ発展途上であり、個性的な役者がそろう「劇団☆新感線」と比べれば、役者一人一人の質は決して高くはない。しかしその現状を受け入れ、舞台に必ず実力のある役者を一人あげて、周りの役者の演技を支えさせたことにより、全体を通して作品の質があがった。

また、公演にあたり、役者には「劇団☆新感線」が演じる「野獣郎見参」のビデオ映像を一切見せなかったという。
それは自分の解釈で役を表現させることを知って欲しいという想いからだった。

役者として稽古をしながら、浦本さんは作品に必要となる個性的な武器も製作した。
「舞台での道具とは親切の一環なんです。道具を通して演出、役者、お客さんが物語をわかりやすく認識できるようになる。さまざまな仕事をこなす中での武器製作だったけれど、BeeHiveのこだわりは道具製作だと言われるように励みたいのですよ。」と笑顔で話す。
役者からは、武器にあった自分なりの立ち振る舞い方を模索でき、役づくりに没頭できたと好評だった。

これらすべての努力が役者やスタッフとの信頼関係を深いものにし、2007年4月に札幌で行なわれた旗上げ公演は大盛況におわった。
一度も芝居を見たことがない人や年配者も駆けつけ、「伝えたいことがよくわかる芝居だった。」、「演出が見やすかった。」と見終えた人が口々に言っていたのが本当に嬉しかったと語る。

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浦本さんの作った小道具を使って舞台で演技をする役者さんたち

 

- 造型師

造型師としての顔も持つ浦本さん。2次元のイラストを3次元に変換するのはかなり大変な作業だが、イラストレーターの想像にいかに近づけられるかが腕の見せ所と語る。
「造型を始めたきっかけはヒーローショーでしたが、実は僕には一方的に師匠と呼んでいる人がいるんです。」とオブジェを抱えながら語ってくれた
小学校からの幼なじみの知り合いが、特殊美術や特殊メイク、美術造型の第一人者としてジャンルを問わず幅広く活躍する吉田ひでおさんだったのだ。
弟子は持たないと口癖のように言う吉田さんから特殊メイク・造型の技術を少しずつ教わり、いつか超えたい大きな目標として見ているという。

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DIDOに所属する高島幸直さんのイラスト「Cyborg Plus」を立体におこした作品

 

- 夢

「ICCの中には演劇と同じく、総合芸術と呼ばれる映像を担う人がたくさんいて刺激を受けます。将来的には、そういった人たちとコラボレーションをしながら造型物を使った5分程のストップモーションアニメを作ってみたい。そしてBeeHiveとしては普段演劇を行わない場所を舞台にしてみたいですね。例えばICCのホールとかね。」

浦本さんと、北海道の演劇産業の未来に期待したい。

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今後について語る浦本さん

 

-メッセージ

 

 

文: ICC アシスタント・コーディネーター 倉本浩平