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アナログへのこだわり ハレバレシャシン 山本 顕史 氏

【北海道新聞掲載記事】
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- 山本顕史とは

スチールカメラマン
株式会社 ハレバレシャシン代表
札幌市在住
好きな写真家 平間 至

落ち着いたライトで照らされた山本さんの事務所兼スタジオ。ゆったりと流れる音楽、お気に入りのソファに座りリラックスした様子で山本さんは話し始めた
「初めて自分のカメラを持ったのは、20歳くらいの頃。今から15年前のことですね。」

 

- スチールカメラマンになったきっかけ

山本さんは、20歳の時、「観光」を学ぶためにロンドンへ留学した。
当時は、円高の影響もあり海外旅行が盛んで、彼もツアーコンダクターになるのが夢だった。しかし、ロンドンの街中で運命の出会いをする。
ロシア製の一眼レフカメラ「ゼニット」の中古品が5000円程度で売っていたのだ。
それまで使い捨てカメラしか使ったことのなかった山本さんは、ゼニットに一目惚れ。それ以来、ロンドンの街中をカメラ片手に歩くことが楽しみとなった。初めは趣味だったが、徐々に山本さんの中でカメラが大きな存在へと変化していく。4年間のロンドン留学を終えるときには、写真学校も卒業していた。

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山本さんのカメラコレクション

 

- 職業としてのカメラマン

帰国したのは、25歳の時。札幌でカメラマンのアシスタントとなったが、職人気質の師匠はとても厳しく、1ヶ月ほどで退職してしまう。
自分はこの世界に向いていないと感じ、英語講師の職についたこともあったが、なかなか自分の生きる道を見つけられず、実家に引きこもっていたこともあるという。
そんな時、転機は訪れた。心配した父親が買ってきたアルバイト情報誌に「編集プロダクション-簡単な写真を扱う仕事です-」の求人広告を見つけ、すぐにその会社に連絡。再びカメラを扱う毎日がスタートした。
会社に出入りするカメラマンから、技術的なアドバイスを貰えるようになり、着実に経験を積んでいたある日、親しくなったカメラマンから誘われた。
「写真事務所をたちあげることにしたんだ。一緒にやらないか。」
プロのカメラマンとしての扉が大きく開かれた瞬間だった。

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カメラのレンズと真剣な眼差し

 

- 作品紹介

「これは、ICCのホールで撮影したものなんですよ。」と言って見せてくれたのは、メジャーデビューした札幌のバンドが写った写真。
普段は何もないホールを大胆にもスタジオに変えて、撮影した1枚だ。
「人と話すのが好きなんです。だからなのかな、人物を撮った作品が多くなるんですよ。」と優しい笑顔で話してくれた。

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次に見せてくれたのは、フリーマガジン。
「これは、札幌に109がオープンした日の記録集です。」
オープンする数日前から店の様子を追った写真と、札幌の街を記録した写真がズラリと並ぶ。
「3人のカメラマンで膨大な数を撮り、その中から選びました。本当に大変でしたが、とても充実した時間でした。」
山本さんの写真に対する想いを強く感じた。

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- ICCに入ったきっかけ

建物の老朽化のため前の事務所を立ち退かなくてはならなくなり、新しい場所を探していたとき、かつての同僚で、現在ICC入居者のNPO団体S-AIRスタッフから、ICCの話を聞いた。様々なジャンルのクリエイターがいることに興味を持ち、ICCへの入居を決意した。

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S-AIRのアーティストが描いた山本さん像

 

- 個性

「ICCはデジタルに強いクリエイターが多いですが、僕はアナログも大好きなんです。」
特に写真では、デジタルよりもフィルムの方が作家性が強くなると語る山本さん。仕事ではデジタルカメラを扱いつつも、アナログには常にこだわり続けたいといいながら、ある作品を見せてくれた。それは、フィルムの中で連続する数枚の写真を一枚の印画紙に焼き付けたもの。「デジタルカメラは一枚一枚が独立した要素となりがちですが、フィルムカメラだと時間の流れや連続性を感じることができるんですよね。」
このようなアナログの特色をプリントという形にこだわって表現していくのが山本さんの個性なのかもしれない。

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- コラボレーション

様々なコラボレーションを進めている山本さん。
現在進行中のプロジェクトでは、隣に入居している映像制作のBLOCKHEAD FILMSとタッグを組み、プロモーションビデオ撮影の企画と映像カメラマンを務めている。普段のスチールカメラ撮影は一瞬が勝負。一方、映像は10秒のカットなら10秒間集中力を持続させなければならない。同じ「撮影」でもポイントがまったく違うことを知り、新たな試みの重要性を感じた。

すでにBLOCKHED FILMSとは次の企画も持ち上がっている。山本さんの個性を活かし、一枚一枚の写真をコマ送りのように切り替え、アナログ的な映像表現を目指すと話してくれた。

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BLOCKHEAD FILMS  と共同制作した『God of Rock'n'Roll』

 

- 今後

「他のICC入居者とのコラボレーションプロジェクトに力を入れていきたいですね。本格的に写真展の準備も進めていきますが、新しいオリジナルプロジェクトも立ち上げたいです。せっかく北海道に住んでいるので、雪国の特性を活かした作品も撮っていきたいなと。
例えば、雪が降ってくる様子を撮影するだけでも、降り方や雪の形も、日によって違うんです。雪国に住む人にとっては当たり前すぎて、あまり考えないことだけど、すごく大事な気がするんですよね。
建物の高いところからリモートでフラッシュをたいて、地表から立体的な降雪空間を撮影する。それだけでも十分素敵な作品になると思うんです。」

自然がつくる「アナログ」の世界に彼の「個性」が加わるとどうなるのだろう。
作品を見る日が待ち遠しい。

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ハレバレシャシンスタジオにて

 

-メッセージ

 

 

文: ICC アシスタント・コーディネーター 倉本浩平