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アートディレクター/デザイナー 上田 亮さん

コンサドーレ札幌のシーズンチケットやTEAM NACS FILMS「N43˚ 」の VIやポスター・グッズなど、誰もが知っている仕事を多く手がけるアートディレクター/デザイナー 上田亮さん(31)。
受け手の笑顔が見えるデザインを次々に生み出す秘密はどこにあるのだろうか?
さっそく訊ねてみることにした。

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アートディレクター/デザイナー 上田亮さん(31)


- 必然だった? デザイナーへの道

上田さんは滋賀県出身、信楽焼の窯元に生まれた。
「実家は代々続く陶芸家の家系で、父は実用陶器はもちろん陶芸家としてアート作品も作ったりしています。姉も美大に通っていましたし、デザインやものづくりに対する関心は早くからありました」。
高校そして大学へ進学する際も、美術系に進むかどうかで迷ったという。結局、親元から自立したい気持ちと、以前から憧れのあった海外について学ぶことができる北海道の大学の国際文化学部へ進んだ。
在学中にはスウェーデンへの二度の留学を経験し、スウェーデン語と生涯教育に関して学んだ。スウェーデン滞在では豊かなライフスタイルや成熟したデザインなどに大きなインパクトを受けた。「スウェーデンに住みたいなぁと思いました。ここに住むにはどうしたらいいんだろうと考えましたが、その時は"自分にこれがやれる"というものがありませんでした」。

やがて就職を考える時期が迫り、「自分に何ができるか」を考えた末、以前から関心のあったデザインの道に進むことを決め、卒業後はデザイン系の専門学校に入学した。
「デザインの世界に進むのが遅かったこともあり、相当頑張らなくてはという思いがありました。学校の勉強のほかに、仲間とユニットを組んでショップのフライヤーやイベントのチラシを制作する仕事をしたり、ポートフォリオも持ち歩いていました。今考えると、専門学校での2年間はとても充実していたと思います」。
専門学校卒業後は、先輩の紹介で市内のデザイン会社に就職。プロのデザイナーとしての道を歩み始めた。>

- デザインに没頭した二年半、そして独立

「就職したデザイン会社はクライアントと直接の仕事が多く、その根っこの部分に深く関わり、ブランディングなどを手がけていました。自分は飲食店などのロゴの制作や、その他、社会人としてもあらゆることを学びました」。
この会社に在籍した二年半の間に制作したロゴの総数は300点近くにのぼるほど。最初の頃はいくら作ってもなかなか認めてもらえず、社長から"ダメ出し"を食らう場面も多かったという。
「負けず嫌いな性格なので、"どうしてダメなのか?"と食下がることもありました(笑)。ただ、今振り返ると、作品のクオリティが修正を加えられるレベルにまで達していなかったのだと思います」。

このように、プロのデザイナーとしての経験を積む一方、さらにステップアップしたいという気持ちも次第に芽生えていった。学生からいきなり起業する事例やユニットという活動形態が多くなってきていた時代でもあり、学生時代から、「いつかは自分も」という気持ちがあったという。
こうして、制作に没頭した二年半の後、上田さんは独立を決意する。

「ステップアップのために独立するとは言ったものの、一人でやっていける自信があったわけではありません。幸い、相談に乗ってくださる先輩デザイナーや同じ業界の友人がいたので、色々な面で助けてもらいました」。
会社と個人の名刺を持って、専門学校時代からユニット活動を続けていたこと、ポートフォリオを持ち歩き、自身をアピールしていた経験、札幌ADCへの参加など、積極的に人と会い、交流してきた上田さん。そこで築いた人のつながりが、独立後の上田さんにとって大きな力となった。

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デザイン事務所勤務時代の作品を見る上田さん。制作に没頭した二年半だった。

- 持ち味は"受け手の笑顔が見える仕事"

上田さんは自らのデザイン事務所を「COMMUNE(コミューン)」と名付けた。
COMMUNEは、「共同体」という意味のほかに、「親しく語る・親しく交わる」という意味も持つ。積極的に人と交わり、コミュニケーションを大切にしてきた上田さんらしい屋号だ。

そのCOMMUNEを代表する仕事の一つが、2004年から続いている「コンサドーレ札幌 シーズンパス」の制作だ。
ハス型にデザインされたこの年間チケットは、毎年楽しみにしているチケットホルダーも多いという。
「地元のサッカーチームがこうしたチケットのデザインを大切しているということがまず嬉しいですね。このシーズンパスを持つのは最も熱心なコンサドーレサポーター達。これを持っていること=ファンであることを誇りに思えるものにしたいと思ってデザインしています。10年続けられたら他にないモノになると思っています」。

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コンサドーレ札幌 2008年シーズンチケットのデザイン


別の仕事での提案を評価されてコンペへの参加のチャンスを獲得した「THE LEGEND OF KUNGFU」のポスター、フライヤー等の制作も記憶に残る仕事だ。
5者によるコンペとなったこの案件では、競争相手がデータやロジックを駆使してプレゼンテーションに臨むだろうと考え、上田さんはプレゼンが不要なレベルにまで作品とコンセプトシートを作り込み、勝負することで自分らしさを出した。
「プレゼンを終えた後、達成感というか爽快感がありました」との手ごたえの通り、上田さんの提案が見事採用となり、カンフーに興味の低い女性などのターゲットにも訴えかける、カンフーミュージカルの芸術性を強く打ち出したデザインがポスターやフライヤーを飾った。

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「THE LEGEND OF KUNGFU」のフライヤー


このほか、楽天イーグルスのシーズンチケットボックスのデザイン、TEAM NACS FILMS「N43˚ 」のVI、ポスター、グッズデザインなど、作品の向こうに受け手の笑顔が見える仕事を多く手がけていることが上田さん、そしてCOMMUNEの魅力だ。

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札幌市厚別区のチキン専門店「チキンペッカー」のVIなどのデザインリニューアル

 

- 仕事への誠実な姿勢がチャンスを生み出す

仕事に取り組む姿勢について、上田さんは「大きな仕事でなくとも、クライアントと密に接しながら、デザインやブランディングをしていきたい」と話す。
「例えば、いまクライアントから"ポスターを作ってほしい"と頼まれたとしたら、そのクライアントの今の状況で、本当にポスターを作ることがベストなのかと考えます。ひょっとしたら、ポスターではなく、Webサイトを作るほうが良いかも知れないし、場合によってはデザインしないほうが良い場合もあるかも知れない。そういうことをハッキリ言えるようになりたいですね」。
この誠実な姿勢が上田さんの魅力であり、クライアントが仕事を頼みたくなる理由であるに違いない。

COMMUNEは現在上田さんともう一人のスタッフのみで活動しているが、今後はスタッフを増やすことも考えているという。「自分自身、作り手としてのこだわりがあるので、複数のスタッフを抱えてもすべてを任せてしまうことはありませんが、アイデアを出す段階や抱える仕事の規模によってはスタッフの存在が重要です。現に今世に出ているものも、スタッフと一緒にやることで生まれたものもあります」と上田さん。スタッフが増え、より一層COMMUNEの名にふさわしい組織になっていく日もそう遠くないだろう。

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アトリエ内には上田さんのこだわり? があちこちに

 
- 叶えたい4つの目標

最後に「今後の目標は?」と訊ねると、「4つあります!」と即答が返ってきた。
「まずは、生まれ故郷の伝統産業である信楽焼を新しい形で活性化することです。最近、安価な磁器製品に圧されがちな信楽焼の新たな可能性を探り、それをプロモーションすることに自分が関われる余地があるかもしれません。2つめは、農業の分野にかかわってみたいと思っています。作り手が自分のブランドとして作物を流通させることもできる時代なので、デザインが力を発揮できる余地が北海道にはあると思います。3つめは"プロダクツ"です。やはり、ものには力がある。グラフィックだけではなく、それ以外の分野に活動の領域を広げたいと思っています。最後は、スウェーデンとのつながりの中で何かできないかと考えています。これまでの経験を生かして、やれることを模索していきたいと思っています」。

これまで、持ち前のフットワークとクライアントへの誠実な対応でデザインに向き合ってきた上田さん。
4つの目標のうち、最初に実現するのはどれか?
考えるだけでも楽しくなる。

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今はまだ少数のCOMMUNE。数年後はどんなCOMMUNEになっているのだろう?


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■アートディレクター/デザイナー 上田 亮(COMMUNE)
WEB SITE http://www.commune-inc.jp/

取材・文 佐藤栄一

最終更新日:2008年12月25日