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イラストレーション・WEBデザイン 伊藤優美子 : 具体的なスキルを提示しつつ隙間のニーズに応える

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パステル調のやわらかなイメージでWEBやイラストを制作するデザイナー、伊藤優美子さん。もともとは建築パースの制作をしていた伊藤さんが、WEBデザインにいきついた経緯や、隙間にあるニーズを的確にとらえて仕事にしていく柔軟な姿勢についてお話を伺った。



伊藤優美子さん


最初の就職先は建築パース専門会社

デザインとの出会いは、高校卒業後に進んだ、地元・神奈川県の高等職業訓練校のデザイン科に始まる。
「専門的な技術を身につけたいということで選んだ学校だったのですが、想像以上に技術に特化していて、平面構成の実習や、デッサンをひたすら書いたり、溝引き定規やカラス口などといった専門の道具を使いこなす技術を学ぶのがメインでした。写植や屋外広告といった専門技術の授業もありました」。
技術的な学習に偏っていたこともあり、卒業後は住宅メーカーでトレースのアルバイトをしながら、グラフィックを勉強するために夜間の専門学校へ通う。その後、2つの専門学校で身につけた技術を直接活かせる仕事として選んだ就職先は、建築パース専門会社だった。バブル期後半で仕事量も多く忙しい日々を過ごしていたが、4年ほど勤めた頃、バブルが崩壊。結婚という節目も迎えて会社を退職することを決意した。


"100年遅れの屯田兵"として札幌へ移住

夫婦ともに、もっと住環境の良い街で暮らしたいという希望を持つ中、かねてから興味のあった北海道への移住を検討し、新婚旅行は"視察"も兼ねて北海道へ。"100年遅れの屯田兵"として北海道へのIターンが盛んな時期でもあり、1994年の秋に伊藤さん夫妻は札幌へ住まいを移す。
「北海道の中で札幌を選んだというよりも、全国的に見ても札幌の街が良いと思いました。今までの仕事もフリーで続けられるし、住環境も良い、そして食べるものが美味しいことも大きな決め手になりました」。
札幌では、東京でつながりのあった設計事務所から北海道支社を紹介してもらい、建築パースの仕事を継続していた。一方で、北海道への移住をサポートしていた"北海道開拓使の会"のつながりから女性の異業種交流会に参加し、さらにネットワークを広げながら仕事の依頼を受けるようになる。
「開拓使の会に出入りしているときに、偶然に北海道新聞社の女性記者さんと知り合い、週1で新聞のコラムのイラストを担当しました。3年半くらい続いて、そのコーナーを本にまとめた際には、表紙も描かせてもらいました」。



(以前公開されていた画像)北海道新聞「おふたいむ」のコラムイラスト


(以前公開されていた画像)松本建工株式会社のリーフレット


気がついたらネット関係の仕事にシフトしていた

しばらくは、建築パースの仕事と、紙媒体のイラストの仕事を並行してこなしていく時期が順調に続いたが、やはり、年々建築パースの仕事は減少傾向となり、紙媒体の仕事もそれほどボリュームが増すわけでもなかった。そんなとき、イラストの仕事のために購入したパソコンで初心者講座に参加しながら自分のHPを作成。このHPをきっかけに、1999年には、インターネット上で仕事を展開しているネットオフィス『ワイズスタッフ』と出会い、ネット関係の世界へと仕事を進めていくことになる。
「HP作成については、まだまだ自分の中でも未知数だったのですが、デザイン力が買われて、HTMLでのHP作成の依頼が続々来ました。依頼が来るたびにわからないところは本を探しては独学で勉強し、一緒に仕事を進めている仲間たちからもアドバイスをもらったり知識を得たりしながら、必死で仕事をこなしていきました」。
気がついたら、1年ほどで、建築パースや紙媒体の仕事から、ネット関係の仕事へと一気にシフトしていたという。


(以前公開されていた画像)
「ことに・メディカル・サポートクリニック」のサイト



アーティスティックな仕事にこだわりはない

積極的に営業をしているわけではないが、出会いのあったクライアントには、できるだけ具体的なスキルを提示することを心がけ、次の仕事にもつながっているという。
「札幌に来た当初お付き合いのあったインテリアデザイナーさんや、イラストの仕事でお付き合いのあった方に『HP作成の仕事をしている』と話したのをきっかけに、HP作成の依頼がくることもありました」。
また、「特にアーティスティックな仕事にこだわりはない」という伊藤さんは、最近、新しい傾向の仕事も増えているという。
「HP作成の仕事を請けて納品した後、デザインだけではなくコーディング作業もできることを知ったクライアントさんから、次は『コーディング作業がメインの仕事をお願いできないか』との依頼がきました。これはデザインとはちょっと違う職人的な仕事ではあるのですが、私自身は楽しめる部分もあります。こうした分野も、隙間としてニーズがあるのを感じるので、柔軟に応えていきたいと思っています」。


外の動きには敏感でいたい

ネット関連の仕事を始めてから、一人で完結する仕事というのはほとんどなく、複数のスタッフと連携することが多い伊藤さんは、広い視野を持って、常に自身のスキルアップを図ることを忘れない。
「CREATER'S DBに登録した人に発信されているセミナー情報などもチェックして、必要なものにはできるだけ参加するようにしています。札幌だけに限らず東京で開催されるものでも、交通費を惜しまず参加しています。日頃、自宅兼職場で一人で仕事をしているので、少しでも外の動きに触れるように心がけています。また、システム構築と連携して仕事をするケースでは、システム担当者からくる要望を見て、勉強になることもたくさんあります。日々勉強です」。
最初からダメと決めつけず、食わず嫌いの仕事を作らないようにするというのが、伊藤さんのモットー。一方では自分に付加価値を付けたいということで、語学(韓国語)の勉強をして、公私ともに興味のある範囲を着々と広げ続けている。
伊藤さんにとっては、"時流に流される"ことは決してマイナス要素ではない。逆に"時流を見つめて"隙間となる仕事のニーズを探り、それに応えるべく柔軟に動くその姿勢は、今後も伊藤さんの大きな強みとなって可能性を広げるに違いない。


カフェのデザインツールをトータルで担当するのも夢のひとつだという



●ATELIER TAM
WEB SITE http://draw.cafe.coocan.jp/
北海道札幌市手稲区星置
Creator Profile http://s-xing.jp/db/ind/prof0097.html

取材・文 佐藤保子