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ロケットデザイン 距離を超え、大手企業の壁を突破する営業活動の原点を知る

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「東京で自分の力を試したい」。地方都市在住のクリエイターが一度は抱く中央進出の夢を形に、憧れを行動に移しているものはどれだけいるだろうか。独立して9年目を迎える「ロケットデザイン」は札幌にいながらにしてベネッセや MdN、成美堂出版など数多くの大手出版社からの仕事を中心に活動中。「やったのは簡単なことばかり」と振り返るロケットデザインの顧客開拓術に、次の一手のヒントを探りたい。


ロケットデザイン グラフィックデザイナー菊池信悟さん(32歳)

 

原点はホームページ、ブラジルからの依頼メール

元同僚の2人組、イラストレーターの渡部伸子さんとグラフィックデザイナーの菊池信悟さんが活躍する「ロケットデザイン」。まだ会社員時代の1998年から同名義でホームページを立ち上げ、ある日ブラジルから1通のメールを受け取った。内容は世界各国のクリエイターが自分の都市をテーマにウェブデザインをするプロジェクトへの参加依頼。まさか、本当に?驚きと喜びの二重奏だった。
「当時は個人のホームページづくりが流行り始めたころ。僕も夢中になっていろんな見せ方を試していましたが、まさかブラジルから反応があるとは思ってもいませんでした。このプロジェクトの後もイギリスやスペイン、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ各地で出版されるアートブックにも作品提供の話がきました。自分たちの方向性を評価していただき、独立への後押しになりました」と菊池さんは語る。
初期のプロフィール画面は正方形のパネルで覆われ、カーソルを近づけるとそのパネルが四方に飛び散った。現在のサイトにも車のイラストにカーソルを当てるとふわりと車体が浮き、続きは見てのお楽しみ...というユニークな仕掛けが隠されている。作品をただ並べて見せるだけでない遊び心を含んだサイトづくりは、じきに東京の出版社の目をも惹きつけた。雑誌にサイトが掲載されることでさらに新たな顧客を呼び込む。自分たちのクリエイティブを伝えるホームページからロケットデザインの躍進は始まった。


「http://www.mycity.com.br/」図録。世界各国約40都市のサイトを掲載。日本からはロケットデザイン(札幌)のみが参加した。

 

担当者に作品ファイルを送り、感触を聞くの繰り返し

サイトの人気が広がる一方で、イラストレーターの渡部さんは売り込みのための作品ファイルづくりに時間をかけた。掲載する作品を厳選し、出版社のストックスペースで他のファイルに埋もれてしまわないように表紙や背表紙にもひと工夫。一緒に仕事をしてみたい出版社に電話をかけ、誰宛てに送ればいいかを確認してから投函する。着いた頃に再び電話し、相手の感触を聞き出すという一連の手順を繰り返した。
「渡部も僕も難しいことは1つもやっていないんです。はじめは僕らも不安だったので業界本を参考にし、ためらいながらも本の通りに実行しただけ。渡部は2000年に一度、30冊くらいファイルを送り、3年後にもまた新たな出版社宛に送付しました」。
デザイナー志望の若者と話す機会もあるという菊池さんは、「"今度作品を見てください!"と元気良く言う学生たちに何人も会いましたが、その後で本当にファイルを送ってきた子はいまだゼロ。もったいない話です」と小さな一歩の重要性を説く。

仕事抜きで没頭、毎号の刺激を楽しむ「magnet」

東京の出版社のなかでも一編集部宛てに送付した渡部さんの作品ファイルは社内で回覧され、他の編集部からも依頼がくるという嬉しい効果を発揮した。道内でもロケットデザインの名は徐々に浸透し、現在は北海道新聞毎週日曜掲載の女性向け書評コーナー「リラ」のイラスト・デザインを担当。多忙な日々を送るなか、菊池さんが「これだけはやめられない」と深い愛情を注ぐのがフリーペーパー「magnet」だ。
同誌は2002年に創刊。ウェブメディア「NUMERO DEUX」主宰の石川伸一氏が編集長、菊池さんがアートディレクター兼デザイナーとなり、これまでにないメディアの発信を編集の柱とした。「magnetは1冊1テーマ。毎回テーマにあわせてページ数も版形も変えています。時間に追われるときもありますが、magnetをきっかけに人脈が広がりますし、毎号新しいアイデアを考える訓練になるので体がなまらない。仕事抜きで楽しんでいます」。


隔月発刊フリペーパー「magnet」。大阪、札幌市内のカフェやライブハウスなど25カ所に配布。最新号は4月発行予定。

 

距離を言い訳にできないデジタル社会のなかで

「僕たちのクリエイティブの基本は、作品を第一に考えて楽しんで作ること。そうするとそれを見ている人は必ずいて仕事に繋がり、その経験が次の仕事を呼びます。どのように作品が掲載されてどんなふうに人の目に触れ、どんな反応をしてくれるのか。仕事でもオリジナルでも常にそれを意識した作品づくりを大切にしています」。
2000年の独立以来、札幌、東京を中心に顧客を拡大してきたロケットデザイン。札幌在住の不自由を感じたことはないだろうか。
「札幌の顧客とでも電話やメールでやりとりする時代に、札幌・東京間の仕事も不可能ではないというのが現状です。ただ、"声だけの知り合い"ではなんともさみしいので、もう少し余裕が持てるようになったらむこうのクライアントに顔を出す機会を増やしていきたい」と菊池さん。最近ではグラフィックの枠にとらわれずさまざまなジャンルで活躍する人々、野菜農家やワイナリーにも関心を寄せ、「異業種の方たちと一緒におもしろいことをやれたら」と新たな活動範囲を広げていきそうな勢いだ。待っていても仕事はこない。当たり前のことを真摯に貫くロケットデザインに営業活動の原点を見た。


2008年1月末に発行『元気でキレイは口もとから』坂本洋介著(北海道新聞社)。アートディレクションを菊池さん、イラストレーションを渡部さんが担当した。


●ロケットデザイン
WEB SITE http://rocketdesign.org/
〒060-0002 札幌市中央区北2条西14丁目1-1-104
TEL・FAX : 011-271-1227

取材・文 佐藤優子


最終更新日:2008年03月07日