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ワビサビ クライアントと両思いになれたときこそ最強です

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カラスとゴミが主役のカードゲーム「Crow and Trash」や、人体の臓器を思わせる有機的な曲線が特徴の新書体"ホルモン"。男性2人のデザインユニット「ワビサビ」の奇想天外な作品は地元札幌を軽々と飛び越え、東京、ニューヨークでも高い評価を集めている。そんなワビサビの2人もクライアントワークの葛藤とは決して無縁ではない。結成10年目を迎えた2人に、出会いから最新情報までを聞いた、とっておきインタビュー。



(以前公開されていた写真)右から工藤"ワビ"良平さん(45歳)、中西"サビ"一志さん(42歳)


ホームを拠点に「ワビサビ」ブランドを確立

「ワビサビ」の拠点は、デザインプロダクション(有)ホームにある。工藤"ワビ"良平さんにはホーム代表、中西"サビ"一志さんには同社のアートディレクターという肩書きがある。これを理解しているクライアントからは「この仕事はワビサビさんにお願いしたい」「こちらはホームさんに」というように内容に応じた依頼がくるという。
「ワビサビの出発点は自分たちがいいと思うものを自由に作るところからですが、活動の基盤はあくまでもホーム。その中でワビサビというブランドを育てていくスタンスです」と工藤さんは語る。ホームの立場からは1つの広告を作りきる総合力をアピールし、ワビサビの顔では研ぎすまされた完成度の高い創作性を前面に押し出していく。
 「ニューヨークアートディレクターズクラブのアワードで銀賞をいただいたポスターでは"ホルモン"という書体を使っています。ホルモンをおもしろいと思ってくれそうな東京の大手企業を想定したポスターを作成し、自主プレゼンテーションをしたこともありました」。道内で引く手あまたの印象を受けるワビサビだが、こうしたビジネスにつなげるための地道な営業活動も日々行われているという。



2006年の85TH NY-ADC AWARD銀賞を受賞したポスター


自由奔放な職業イメージを白紙に戻した新人時代

工藤さんと中西さんの出会いは今から21年前にさかのぼる。ADの工藤さんが勤めるデザインプロダクションに新人デザイナーの中西さんが採用されたのがきっかけだ。「そのときの経営者にスパルタ教育で鍛えられました」と当時を振り返るのは工藤さん。1980年代、グラフィックデザイナーの社会的な地位は低く、報酬も安く見られる状況に一石を投じようとしたその経営者は、自分たちにも職業人の自覚と厳格さを徹底した。「ミュージシャン志望で長髪だった僕は怒られて、入社三日目で丸坊主(笑)。靴のかかとを踏んづけて入ってきたカメラマンがそのまま追い返されたこともありました。人前に出て働くための必要最低限のことを学んだ時期でした」。
 その後、工藤さんは広告代理店に移り、中西さんは次のデザインプロダクションに転職。元先輩の工藤さんに中西さんが年賀状を送る程度のつきあいが7年間続いたのちの1994年、「一緒に4プラの仕事をやらないか」、疎遠だった2人の距離を縮めようと動き出したのは意外にも工藤さんのほうだった。


「4プラ」との長くて深い軌跡が大きな財産に

4丁目プラザは札幌オリンピック開催年の1971年に開業。若者の流行発信スポットとして「4プラ」の愛称で慕われ続けている大通界隈のシンボル的な存在だ。その4プラを担当することになった工藤さんはデザイナーの起用にあたり、中西さんを抜擢した。「新人の頃から彼は独創的でしたし、人としても実直で好きなタイプ。一緒におもしろいことをやるなら中西だという想いで声をかけました」。当の中西さんはそのときデザイナー8年目。「もちろん"光栄だ"というのが率直な気持ちでしたが、今みたいに札幌ADCがなく、横のつながりが薄かった時代に"自分はどのへんを走っているのか"知りたい気持ちもあって、工藤さんの話を受けることにしました」と当時の心境を語る。
 そこから始まった工藤・中西コンビに寄せる4プラの信頼はひときわ厚く、18年を経た今も仕事は続いている。「4プラさん抜きでは現在のホームもワビサビも語ることはできません。中でも"どれだけクライアントを愛せるか"を自分に問い続けた経験はかけがえのない財産です。ベタベタにならず一定の距離を保ちながらクライアントと"両思い"になるのは非常に難しいことですが、だからこそそうなれたときは強い。苦しい場面でも真剣に向き合っていけるということを教えていただきました」と工藤さんはいう。



4プラ1997年作、イラストは中西さんが担当した。


「納品して終わりではなくそこからが新たなスタート。考える作業に終わりはないですね」と工藤さん


「自分のデザインが大きく世に出ることをはっきりと意識した仕事は4プラが初めてでした」と中西さん


周囲や時間に流されない"ひっかかり"を育む

1999年にワビサビを結成し、翌2000年には工藤さんを代表にホームが誕生。2人の創作活動は日々のクライアントワークや締切りに追われる中で続いていく。「例えば、ワンシーズンの広告をやりきるには膨大なエネルギーを使います」と中西さん。「広告には大勢の人が関わります。自分が愛着を持てるデザインやアイデアでないと完成まで保たせることはできません。周囲や時間にサラサラと流されていけば自分の中に何も残らず、出来上がったものへの執着までもなくなってしまう。この仕事にはそうした状況に陥らないようにする自覚が人一倍必要です」とクリエイティブの難しさを指摘する。
 ワビサビ初のオリジナルカードゲーム「Crow and Trash」(2004)はなんとカラスとゴミが主人公。ユニークな発想とリアルなデザインが評判を呼び、現在は国立新美術館のスーベニア・フロム・トーキョーやニューヨークのNEW MUSEUMのミュージアムショップでも販売されている。2008年4月には恵比寿のギャラリー(g)で個展も開催、新作も発表される。
 いいものはとかく逆輸入されがちな札幌だが、ワビサビのクリエイティブこそ地元から胸を張って世界にアピールし続けたい。


2004-SapporoADCグランプリほか多数の賞に輝いた「Crow and Trash」。2007年のクリスマス時期にはフランスの子ども雑誌「バンビ」でも1Pに渡って紹介された。



●ワビサビ
WEB SITE: http://www.homeinc.jp/
〒060-0063 札幌市中央区南3条西8丁目大洋ビル2階 有限会社ホーム
TEL : 011-271-6666
FAX : 011-280-5111
E-mail : wabi@homeinc.jp

取材・文 佐藤優子


最終更新日:2008年3月1日