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有限会社イオシス コンテンツビジネスの先端に躍り出た成長株

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学生時代に始まった同人サークルが10年後にはデジタルコンテンツ業界トップクラスの知名度を持つ注目企業に成長、この事実に一番驚いているのは当の本人たちだった。一時は解散寸前にまで追いこまれたコンテンツ制作会社「イオシス」がこれまでリリースした音楽CDは、約140タイトル。全作品の試聴MP3ダウンロード回数はのべ40万回を超えるほどの人気を博している。創立メンバーの2人にこれまでの歩みを語っていただいた。


前身は好きなことを追い続ける北大サークル

1998年に北海道大学の仲間で結成された同人サークル「イオシス」の活動ジャンルは、音楽とコントだった。創立と同時期に個人レベルの音楽CD作成を容易にするCD-Rが開発され、イオシス初のオリジナルCDは札幌市内の古本屋で委託販売されていたという。
「あの頃は100枚売れたらミリオンセラーだと言っていました」と当時を振り返るのは、創立メンバーの1人であり同社代表取締役の栗本拓也さん。大学卒業後、大手企業に就職しSEとしてハードな勤務をこなしながらもサークル活動はやめなかった。この間のイオシスは同じく創立メンバーで大学院生だった鈴木隆文さんが大黒柱となり、道内外のコミックマーケットなどの同人誌即売会や同人ショップで販路を拡大。1タイトルにつき100枚単位だったプレス数も1000枚単位に伸び、売上5000枚を記録するヒット作も誕生した。
会社と大学院、それぞれの立場での将来像が描けず「やる気が底をついた」栗本さんと鈴木さんは、2005年からイオシスに専念する道を選択した。その後の快進撃については「イオシスで食べていこうという強い意志が実ったというよりは、自分たちがおもしろいと思うことを続けていくうちに世の中の歩みと肩を並べた感じです」と異口同音に語った。


解散寸前、収支モデルを構築する企業に成長

法人化直前の2006年2月、イオシスは解散の危機を迎えていた。コントの脚本やオリジナルの楽曲、イオシスに参加するクリエイターの熱意のままに次々と出し続けるCD全てが売れるわけではないという厳しい現実が立ちふさがっていた。売上不調が続く一方で制作に費やした労力の対価を望む声もあがり、サークル内の雰囲気は一触即発。
同業他社を圧倒するコンテンツ数を強みとしながらも、栗本さんは「作品が売れないと経済的なダメージも被りますが、お客様に聴いてみたいと思われないことのほうが問題です。そういう意味では2005年にリリースしたタイトルは反省点が多かった」と自戒する。
このときの経験を活かして、イオシスは2006年以降1タイトルごとに成果報酬をベースとする収支モデルを作り、クリエイターへの利益分配のルールも明確にした。成果はクリエイターに余さず還元するというイオシスのモットーを今も守り続けている。
論争のもうひとつの焦点となっていた法人化も今後の販路拡大には必要なステップであると意見がまとまり、札幌市デジタル創造プラザ(ICC)の入居を機に有限会社イオシスは新たなスタートをきった。


火付け役のPVがマッシュアップ効果で業界を独走

浮き沈みの激しいデジタルコンテンツ業界を生き抜くには、知名度と流通経路を確保しなければ--。起死回生を狙うイオシスは2006年2月、同人業界で圧倒的な人気を誇る弾幕系シューティングゲーム『東方Project』で使われたBGMのアレンジアルバム『東方風櫻宴』のリリースに踏み切った。同年8月には第2弾の『東方乙女囃子』を発表。プロモーション用のアニメーションフラッシュムービーをサイトで無料配信し、YouTubeにもアップしたこのPVが起爆剤となった。
「『東方乙女囃子』の2 トラック目に収録されている曲『魔理沙は大変なものを盗んでいきました』のPVが火付け役となり、CDの売上が急激に伸びました。2007年に開設されたニコニコ動画でも『魔理沙〜』の配信数が爆発的に増え、作った僕たちも驚くほどの人気モノになっていきました」。
ニコニコ動画で流行中の"マッシュアップ"(複数のコンテンツを組み合わせてリミックスすること)でも『魔理沙〜』の登場回数はトップクラス。試しに『大変なものを盗んでいきましたシリーズ』でタグ検索したところ、ヒット数は1600本を超えていた(2007年11月現在)。オリジナルの魅力を増す二次創作を歓迎する同人業界の空気と、ソフトがあれば誰でも手軽にマッシュアップできる画像編集技術の浸透、デジタル時代が生んだ2大要素がイオシス躍進を大きく後押ししたようだ。


クリエイター、ファンとつないだ手を離さずに

「これまでイオシスの制作に参加したクリエイターは約40名。なかでも"メンバー"と呼ぶ近しいクリエイターとはメーリングリストで情報を密に共有し、手厚い待遇で制作をバックアップする体制を整えている。こうしたクリエイターとの信頼関係も魅力あふれる作品を生みだす大切な要素になっている。
今年の12月からは販路拡大のためAmazon.co.jpとの取引も始まり、明るい話題に事欠かないイオシス。従業員の平均年齢が27歳という若さも眩しく輝いている。
「今の心境としては大人になっていくほど大人げない自分になっていくような気がしていますが(笑)、つくるのが好きという想いは今も昔も同じです。個人の力、集団のメリット、そして時の運に支えられてここまできて、今後の目標はお客様から長く愛される企業になること」と鈴木さんが語れば、「最近は忙しさに追われて配信ペースが落ちていますが、ファンの方々とコミュニケーションできるウェブラジオも大切にしていきたい」と栗本さんも応じる。突然浴びたスポットライトに浮かれることなく、大地に根を張るようなこの誠実さが、イオシスをさらに大きく成長させていくに違いない。



●イオシス
WEB SITE http://www.iosysos.com/
〒062-0901札幌市豊平区豊平1条12丁目1-12札幌市デジタル創造プラザ305A
Creator Profile http://s-xing.jp/db/unit/prof0088.html

取材・文 佐藤優子


最終更新日:2007年11月28日