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一級建築士事務所 m+o エム・アンド・オー「作品を世の中に発表することから全てが始まる」

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家や店を建てるという人生の一大事に際し、"選ばれる建築家"になるには行動あるのみ。男女2人組の建築事務所「m+oエム・アンド・オー」の営業方針は明快だ。築38年の木造家屋をセルフビルドした自分たちのオフィスをはじめ、設立以来、手がけた作品はすべてサイトに掲載している。あるクライアントとの出会いをきっかけに、10カ月に及ぶ家づくりの過程を事細かに公開した「ネット・エキシビション BOOK HOUSE」は業界内でも大きな反響を呼んだ。設立4年目の勢いにのる2人の魅力を解き明かしたい。


「m+oエム・アンド・オー」は湊谷みち代さん(40歳)と大塚達也さん(36歳)の建築家ユニット。


1人より2人、型にはまらない多様性を求めて

m+oの2人が初めて会ったのは、建築業界のイベント会場だった。共通の知人を介して名刺を交換したという。
当時、湊谷みち代さんは2つの建築事務所を経て独立したばかり。「営業ができる性格でもなく」自分の作品スタイルをどう打ち出していけばいいのか模索する日々が続いていた。
かたや大塚達也さんはスタッフ6、7人規模の建築事務所に"勤め人"の身。会社の看板ありきで働く自分に疑問を抱き始めていた。
「大塚がいた事務所は私も知っていましたし、そこの安定性のあるスタイルが好きでした。私自身は斬新なデザインや時にはユニークな素材を作品にとりいれるアトリエ系の事務所出身でしたので、作品スタイルについては対極にいる2人でした」と湊谷さんは語る。
そんな2人の共通項は建築家としての自分の枠を閉じたものにしたくないという想い。 独立後も出身事務所のスタイルをそのまま踏襲する建築家が少なくないなか、「それだけではないはず」と多様性を求める志が、2人に異色の男女ユニット結成を決意させた。


セルフビルドのオフィスに名刺代わりのギャラリーを併設

初仕事は自分たちのオフィスのセルフビルド。古い木造家屋を見つけ出し、約5週間かけてリノベーションした。マンションの一室に入ることは初めから考えなかったという。
「これはいつも心がけていることですが、m+oは他の建築事務所がやらないことをしていきたい」と大塚さん。「建築家というと敷居が高いイメージがあるかもしれませんが、根本は客商売です。オフィスも単なる職場ではなく、路面店の役割を持たせたかった。自分たちのスタイルや考え方を伝える空間にしたかったんです」。
完成したオフィスには、打ち合わせスペースを兼ねたギャラリーを併設。知人のカメラマンの写真展を開催するなど建築とアートをつなぐ空間として活用している。ギャラリースペースがそのまま名刺代わりにもなる、効果的な宣伝方法だ。
さらに、開業と同時に2004年1月からサイト もオープン。手がけた作品すべてを掲載し、見る者にコンタクトをとりやすいきっかけを提供し続けている。

本取材もここで行われた「m+o」ギャラリースペース。自社のアドカードや模型が美しく並び、カフェさながらの開放的な雰囲気をかもしだしている。


「BOOK HOUSE」の危機、打開策は会話の中に

依頼の多くは知人の紹介やサイト、専門誌を見ての打診から始まる。クライアントのリクエストやライフスタイルを聞き出しながら、コンセプトとなるキーワードに集約していく。
例えば2006年に完成した個人住宅のコンセプトを「BOOK HOUSE」と聞けば 、誰もが住まう人は読書家であることは察しがつくだろう。ところがクライアントにとって、そしてm+oとって、事はそう単純ではなかったようだ。
「蔵書の多いご家庭だということを踏まえて、設計プランをプレゼンした翌々日のことです。メールをいただきまして。『BOOK HOUSE』と単に『本がたくさんある家』の違いはなにか、そもそもどういうコンセプトからこの設計プランになったのか、根本的な問いを突き付けられた。これには目が覚める思いでした」と大塚さんは当時の心境を振り返る。
クライアントのリクエストや利便性を優先するあまり、コンセプトの明確さが抜け落ちていなかったか。依頼が白紙になる危険性をはらんだこの山場で、2人がとった方法はクライアントとの会話を重ねることだった。
「家が一軒完成するまでにはいろんなアクシデントが起こりうるんです。そんな時こそクライアントや業者ととことん話し合うことで本来の目的に舵をとり直していく。ですから、私たちはいつも会話を重要なファクターだと考えています」と湊谷さんは解説してくれた。


信頼関係が生んだネット・エキシビション

その後、「BOOK HOUSE」は1カ月後の再プレゼンで合意を得、クライアントとの間に堅い信頼関係が生まれた。
そこからさらに話は盛り上がり、完成までの道のりをそれぞれの視点から綴ったダイアリー形式でネット公開してしまおうという企画に発展。「ネット・エキシビションBOOK HOUSE」と名づけられた。約10カ月間に渡る、濃密な「建築家とクライアントの営み」は新たなクライアントの背中を押し、同業者を刺激した。「この企画を公開できたことの意義は大きいです」という大塚さんの言葉通り、m+oの重要な営業ツールとして今も機能し続けている。
「作品を世の中に発表することを実行していないクリエイターが案外、多いように感じます。でも全てはそこから始まり、そうしないと誰にも何にも知られず終わってしまいそうですよね」。
現在、m+oは若手スタッフ1人を抱える3人体制。湊谷さん、大塚さんともに複数の案件を抱え、多忙な日々を送っている。
「まだ設立4年目の若い事務所なので、安定した体制を整えていくことも今後の課題です。将来的には店舗設計プラス販促物の依頼も受けられるデザイン部門など、自分たちの幅を広げて自由に展開していきたいです」。
次は何をしてくれるのか、ブックマークする価値のあるm+oサイトから目が離せない。

「BOOK HOUSE」完成までの歩みはm+oサイトで公開中。物件探しや業者選びなど建築家の仕事がつぶさに描かれている。



●一級建築士事務所 エム・アンド・オー
〒064-0954 札幌市中央区宮の森4条2丁目3-17 
TEL 011-623-5182
FAX 011-623-5183
WEB SITE http://www.mando.jp
CREATORS DATABASE 
湊谷みち代 http://s-xing.jp/db/ind/prof0014.html
大塚達也 http://s-xing.jp/db/ind/prof0012.html

取材・文 佐藤優子


最終更新日:2007年8月26日