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レポート:中国上海トーク

 

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3月5日(土)に札幌CAI02にて、「中国上海トーク」が行なわれました。
ゲストはICCとNPO法人S-AIR、そして中国上海を拠点に現代アートを扱う日系アートマネージメント事務所Office339のご協力による交流プログラムで、中国上海に派遣されたアーティスト・石倉美萌菜さん(写真上)、招へいアーティストとして上海から来札しているアーティスト・チェン・ハンフォンさん、そして上海Office339代表の鳥本健太さんです。

 

最初のトークは石倉美萌菜さん。上海での体験談をお話して頂きました。
初めての海外で見るものすべてが刺激的。 言葉が分からず大変でしたが、漢字だとある程度のコミュニケーションがとれると、常に画板と紙を持ち歩きながら、漢字を書いて想いを伝えていたそうです。

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中国のクラブで行なったライブペインティングの模様。 皆、何が描かれるのか興味津々です。

上海では、上海の街に寝転ぶ自画像を描いたほか、自分の滞在体験を「すごろく」として表現し、市民参加型の作品として公園に持っていき、市民との交流につとめました。でも公園には常に検閲官がいるのだとか。 

二ヶ月間の滞在プログラムを終え、アーティストとして活動する為には作品への想いや技術だけではなく、リーダーシップや相手に伝えるコミュニケーション能力を磨かなくてはいけないと心から感じたと話して下さいました。

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海外から来ているアーティストとの交流も含め、見るもの全てが刺激的だったそう。

続いては、招へいアーティストとして上海からお越しの現代美術アーティスト、チェン・ハンフォンさん。
上海での制作活動や作品紹介のほか、札幌モエレ沼公園で開かれた冬のアートイベント「スノースケープモエレ」で、「雪」をテーマに制作した作品を紹介して頂きました。

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チェン・ハンフォンさん(左) 通訳はNPO法人S-AIRの橘匡子さん(右)

ハンフォンさんが作り出す作品の主なテーマは、商業主義や環境保全主義、消費者は営利主義におどらされているのではないだろうか、といった問題提起を遊び心を入れながらシニカルに表現しています。

彼が札幌に来てまず驚いたのは、街にあふれ返っている無料マガジンやフライヤー、広告チラシたち。

雪をテーマに何か制作してほしいという依頼をふまえ、モエレ沼公園は以前ゴミ捨て場だったという事、日本の文化の一つである「神道」では、鏡が祀られている事、そして世界で初めて人工雪を作ったとされるのが北海道大学の中谷宇吉郎教授だったという事を知り、自分なりの人工的な雪の結晶を広告チラシやフリーペーパー、空き缶などの資源ゴミと、鏡を利用して制作しようと思ったそうです。

また、消費者の大量消費が地球温暖化の原因の一つでもあり、雪の量など冬の札幌にも影響を及ぼしているのではないかと、そんな思いも込められている作品には、まるで本物の雪の結晶のような繊細さを感じました。

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鏡のリフレクションを利用し、「人工的な雪の結晶」を制作。


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雪の結晶の一つ一つは、広告チラシやフリーペーハーの切り抜きで出来ている。

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こちらは空き缶など資源化ゴミを利用して制作した、少し大きめの「人工的な雪の結晶」

最後は上海Office339代表の鳥本健太さん。鳥本さんは北海道ご出身。
イギリスで働いている時に出会った中国人の知リ合いから、「北京オリンピックが行なわれる中国は、これから大きく変わる。」という話を聞き、自分もその飛躍的な変化を見たいと中国に行く事を決めたそうです。

以前はIT関係のお仕事をしていた鳥本さん。 最初はアートに関する知識は無かったそうです。
「アートは社会問題をあぶりだす機能がある。」 
展覧会やアートイベントには、私服検閲官のチェックが入るという表現の自由や検閲が厳しい中国で、アートと社会をつなげていこうと、アーティストマネージャーとしての活動を中心に現代の上海アートシーンを話して頂きました。

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上海OFFICE 339代表、鳥本健太さん

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北海道、そして上海で活躍しているアーティストやアート関係者との交流トークは、アーティストやクリエイターにとって今後の作品に生かされることはもちろん、参加して頂いた方たちにとっても、表現の自由のありがたさなどを改めて感じたひとときになったことでしょう。