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レポート:SMFシンポジウム~創造都市Sapporoへの成功戦略(3)

グラフィックデザインのパワーはどこまで産業を活性化できるか?
20日(土)、産学官のメンバーでつくる札幌メディア・アート・フォーラム(SMF)が主催するシンポジウム「創造都市Sapporoへの成功戦略(3)~グラフィックデザイン産業のクラスター形成と産業活性化への波及~」が開催されました。

2006年3月に市長が「sapporo ideas city宣言」を発表し、創造都市を目指す意思表示をした札幌市。
この動きを受け、SMFは2年前から毎年この時期に「創造都市Sapporoへの成功戦略」をテーマにシンポジウムを開催しており、今回はその3回目。
札幌に優秀な人材が多いといわれるグラフィックデザインに焦点をあて、そのパワーが地域産業を活性化させ、創造都市の基盤を作ることができるかを議論しました。
 

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フォーラムの冒頭では、大阪市のクリエイティブ産業拠点「扇町インキュベーションプラザ・メビック扇町」の堂野智史所長が大阪でのクリエイティブクラスター形成について講演されました。

メビック扇町」は、いわば“大阪版ICC”ともいえる施設。
クリエイターのインキュベーション施設であると同時に、クリエイターたちが集い、様々な活動を展開する拠点でもあります。 

メビックが位置する扇町の周辺には2,000を超えるクリエイターの集積があり、メビック扇町ではそれらのクリエイターを1軒ずつ訪問し、顔の見える関係づくりを進めた結果、今ではクリエイターたちが集まり、自発的にイベントを企画したりするようになったとのこと。メビック扇町では今後、クリエイターに対する一層の主体性の喚起、コミュニケーション力の向上、クリエイターと地域企業とのコミュニケーションの機会づくりを進める方針です。
 

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基調講演を担当された扇町インキュベーションプラザ・メビック扇町の堂野智史所長


続いて事例報告を行ったアートディレクター/デザイナーの前田弘志氏は、自らが運営委員を務める札幌ADCの熱気あふれるコンペティション&アワード審査の現場について紹介し、「知り」「もまれ」「鍛え」「発表する」機会の創出によって、すぐれたデザイナーが数多く札幌に誕生し、自らデザインをつくり提案する環境ができつつあることを指摘しました。

前田氏の後に登壇した「創造都市さっぽろグラフィックデザイン産業ビジネスマッチング事務局」の村木信隆氏は、札幌の優秀なグラフィックデザイナーの力を産業活性化に活かすため、北海道中小企業家同友会等と勉強会を行っている事例を紹介され、今後は両者のビジネスマッチングに力を入れる方針を示されました。

後半は、上記3名に、地元企業の立場から(株)きのとや社長の長沼昭夫氏、在京企業の立場から凸版印刷(株)メディア開発本部部長の桝谷稔氏、行政の立場から札幌市市長政策室企画部企画課長の山本周氏が加わって、「グラフィックデザイン・クラスターは地域産業を活性化できるのか?」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。
 

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左から長沼昭夫氏、桝谷稔氏、山本周氏


「デザイナーの顔が見えない」、「クリエイターがクリエイター同士の小さなコミュニティの中でだけ盛り上がっていて、企業や消費者と接点を作ろうとしていない」、「作品を見ることのできる場がない」、「デザインを活用し、その重要性を認識している企業が少ない」といった課題提起のほか、「コミュニケーション力の高いクリエイターを一人でも多く育てる」、「“チーム札幌”のようにクリエイターのアライアンスを作り、そこが良い仕事をし、知られることでビジネスチャンスを増やす」、「一次産業など、産業のジャンルにとらわれず、マッチングやコミュニケーションを図る」など、デザイナーの力を使って産業活性化を図るための具体案も提起されるなど、活発な討論が展開されました。
 

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左から堂野智史氏、前田弘志氏、村木伸隆氏


会場はほぼ満員となり、このテーマに対する関心の高さが窺われました。
優秀なグラフィックデザイナーを多く抱える札幌。
今後、そのパワーを地域企業の経営に活かし、ともに活性化していくことが期待されます。

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取材・文 佐藤栄一(プランナーズ・インク