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SMFシンポジウム 創造都市Sapporoへの成功戦略(2)

去る2月7日(土)14時より、札幌市立大学サテライトキャンパスにおいて、「第4回SMFシンポジウム 創造都市Sapporoへの成功戦略(2) 『創造する都市の未来形』」が開催され、ゲストによる講演とパネルデシスカッションが行われました。

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2006年3月、札幌市長は「sapporo ideas city宣言」を発表し、札幌にコンテンツ産業等の新しい産業が発展し、アートやデザインが生活の中にあふれ、創造性あふれる人が育ち、絶えず新しいコトが起きる街をつくる意思を表明しました。
これを受けて札幌市は2008年に「創造都市さっぽろ推進会議」を発足させ、現在、創造都市推進のあり方や具体的な方策について検討を行っています。
今回のフォーラムは、こうした動きに呼応し、産学官連携活動体である札幌メディア・アート・フォーラムの主催により、創造都市の最前線を行く横浜市の事例や、内外の地域創成事例の検証、オンライン広告の新たな世界展開が示すブランド構築事例などを通して、都市を創造するメディア芸術の現在とソーシャルメディアと接続する「経験する都市と市民」の可能性を考えようと開催されたものです。

フォーラムではまず、横浜市創造都市事業本部創造都市推進課担当課長の仲原正治氏が「横浜市のめざす創造都市とは?」と題して基調講演を行い、横浜市はアーチストの力を評価し、彼らの力を借りながら新しいまちづくりを進めている事例を紹介されました。
「文化芸術創造都市-クリエイティブシティ」を標榜する横浜市では、明治時代から昭和初期に造られた歴史的建造物をアートチストたちの力を借りてリノベーション&リユースを進めており、「BankART 1929 Yokohama」や「ZAIM」等、芸術文化施設やアーチストの活動拠点として活用しています。
さらに、かつて歓楽街だった街にアーチストたちが入っていくことによって、地域住民とコミュニケーションを深め、芸術の街へと生まれ変わる原動力になっている事例などが紹介されました。

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横浜市創造都市事業本部創造都市推進課担当課長の仲原正治氏


続いて基調講演を行ったNPO法人クリエイティブ・クラスター理事長の岡田智博氏は、「クリエイティブ・クラスターとソーシャルメディア」をテーマに、創造都市推進のヒントになる2つの都市の事例を紹介されました。
岡田氏は、「“創造都市”を名乗っていない都市にこそ、創造都市づくりのヒントがある」として、ハッカーたちの活動がICT産業を刺激し、大手IT企業の立地やベンチャー企業の創出をもたらしたアムステルダム市のケースと、地域キャラクター「ひこにゃん」が爆発的な人気を呼び、「あたたかい繁栄」をもたらした彦根市の事例を詳しく説明されました。特に、彦根市のケースでは、「ひこにゃん」や「しまさこにゃん」といったキャラクターに面白さを感じた人たちが、自ら撮影したそれらの写真や動画、印象などをCGM上でどんどん発信したことによって大きな「うねり」が生まれた点に触れ、CGMが庶民のものであるとともに大きな影響力を持ち、こうしたパワーを創造都市づくりに活用していくことの重要性を指摘されました。

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NPO法人クリエイティブ・クラスター理事長の岡田智博氏


会場にはクリエイターや学生が多く参加していましたが、ユニクロのWebプロモーションで世界的に注目を浴びたブログパーツ「UNIQLOCK」の企画とクリエイティブディレクションを担当した田中耕一郎氏(株式会社Projector)によるプレゼンテーションは彼らの関心を特に強く惹き付けていました。
「永遠に続く5秒間のダンス時計」という「UNIQLOCK」の斬新なコンセプトは世界中のユーザーに支持され、Webサイトへのアクセス数は2億ビューを越えるに至っているとのことですが、田中氏によると、この「UNIQLOCK」は「メディアを買わず、ユーザーの手で広める」ことを戦略として展開され、そのために動画投稿サイトYoutubeへの広告掲載をトリガーとしてユーザーの興味を惹き付けた結果、彼らが「UNIQLOCK」の面白さをブログで発信することにより、爆発的な普及とプロモーション効果を生み出していきまし
た。

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「UNIQLOCK」についてプレゼンテーションした田中耕一郎氏はSKYPEで参加


フォーラムの後半は、札幌市立大学デザイン学部の武邑光裕教授がコーディネーターとなり、基調講演をされた仲原氏、岡田氏に、札幌市市民まちづくり局企画部長の新谷光人氏、札幌で活動する美術家・アートディレクターの端聡氏、SMF運営委員でアートディレクター・デザイナーの前田弘志氏を加え、「創造都市は何をめざすのか?」と題したパネルディスカッションが行われました。

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フォーラム後半はパネルデシスカッション。
左から、武邑氏、仲原氏、岡田氏、新谷氏、端氏、前田氏



「創造都市」は、その概念がわかりにくいといわれていますが、パネルディスカッションでは、個別具体的な事業を「タテ軸」とすれば、創造都市はそれを貫く「ヨコ軸」にあたり、まちづくり全体に通底する概念ではないかといった意見が出た一方、これまでの都市計画やまちづくりとどう違うのかがわからないという意見も提示されていました。

このほか、創造都市推進に係る行政の立場や関与の方法、地元在住アーチストやクリエイターの力の活用、人が集まる機会や場の創造、創造都市の担い手づくりや心を鍛える教育の推進など、各々のパネラーから多様な意見が出されました。

最後に、札幌には多様性があり、創造都市として発展する要素がたくさんあるとの指摘があり、今後の推進の期待する意見があったほか、創造都市を目指している都市同士が連携し、情報交換を進めていくことの必要性も提起されました。
創造都市に向けた取り組みはまだ緒についたばかり。今後展開が期待されるところです。

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会場はほぼ満席の盛況となりました