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レポート:北京ライブドローイング

ICCチーフコーディネーターの久保俊哉です。
去る11月26日~29日に行われた、札幌市の北京視察と、ICCアワードのベストコンテンツ受賞者であるイラストレーターBAKU(前田麦)の北京でのライブドローイングの様子をレポートします。

今回の視察は、大きくは札幌と北京の間での文化、経済交流をどのように図っていけるかを確認する目的と、ICCアワード受賞者としてBAKUを北京にプロモーションする目的で行った。一行は、札幌市から経済局の一橋氏、札幌フィルムコミッションの井上氏、ICCから私、アワード受賞者のBAKU。コーディネートは株式会社ウエスの小島社長。現地では、札幌市の財)日中経済協会北京事務所(札幌経済交流室)の可児所長ほかスタッフの方々と、小山ひとみさんがあたってくださった。

11月26日、千歳空港を13:50発の北京直行便に乗り込んだ一行は、満席のAir-Chinaの機内に滑走路上で待機状態となり、出発は1時間遅れ。北京 までは約4時間30分。時差は1時間。そう遠い国ではない。しかし自分にとっては初めての訪問国。遠くて近い国である。

オリンピック時にたてられた新しい北京空港は、関西空港の作りと似ていた印象で、それをさらに大きくした感じだった。

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北京空港にて  (左)BAKU  (右)久保


一行を出迎えたのは、可児所長はじめ現地スタッフの方々。車を手配してくださり、まずはホテルへチェックイン。空港から中心部まではレンタカーで、約30分程度。途中は近代的で大型の建物が目立つ。日本のような看板類はないが、ネオンでビルを覆うなどの装飾が異国を感じさせる。

その日の夜は会食を兼ねたミーティングを行った。

11月27日、私は、北京事務所の案内で、札幌市の一橋氏、フィルムコミッションの井上氏とともに、北京電影学院(Beijing Film Academy)を訪問した。

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北京電影学院での会談の様子



ZHONG, DA FENG(教授)と面談。札幌市の取り組みである「SAPPOROショートフェスト(札幌国際短編映画祭)」の紹介とともに、映画祭への生徒さんの作品応募のお願い、また、SAPPOROショートフェストの北京でのワールドツアー的な開催、作品や生徒の交流などを話し合い、基本的な合意を得た。 FENG氏は、今後、具体的な計画をつくっていかなければならないとしつつ、まず手始めに、SAPPOROショートフェストへの応募を行うことを約束してくれた。札幌からも引き続き映画祭、フィルムコミッションなどの情報を提供し、人材の交流も行う考えを確認した。

午後は、中国電影集団公司(China Film Group Corporation)という今年8月に新設されたばかりの映画撮影スタジオを見学した。日中合作の「レッドクリフ」の撮影も行ったと聞いた。以前、3つに分かれていたスタジオを一カ所に集めたようだった。デジタルスタジオ、オープンセット、大型の撮影スタジオなど国内では見られない規模であっ た。

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中国電影集団公司の映画撮影スタジオ



当日はデジタル映画制作会社「Degital Film Production Base Co.,Ltd.」のヴァイスプレジデントとマーケティング担当の若い女性が案内をしてくれた。

夕方、翌日行われるライブドローイング会場の下見を行っていたBAKUらと合流し、アミューズ北京を訪問。現地での音楽アーティストの発掘などのお話を伺った。夜は、新たな若者のナイトスポット「MAO」というライブ・ハウスで、BAKUのゲリラアートパフォーマンス「雷神」を行なった。

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ゲリラアートパフォーマンス「雷神」



このライブハウス「MAO」は(株)バッドニュースが経営し、地元中国のバンドを発掘すると同時に日本のアーティストも送り込んでいる。
BAKU はミュージシャンではないが、音楽と組み合わせたライブドローイングなどはまだ中国ではそれほどなじみもなく、今後、新しい表現としてこのライブハウスも中国へのゲートウェイになり得るのではないかと思ったと同時に、このエリア(Nanluogu Xiang/北京南鑼鼓路Dongcheng地区)も798ほど大規模ではないにしろ若者のエネルギーがあふれるエリアであり、札幌のクリエイティブのプ ロモーション場所としては面白いのではないかと感じた。

11月28日は、北京中心部から北東へ12kmの大山子(ダーシャンズ)と呼ばれるエリアへ。ここは、北京のアートシーンを一気に世界に知らしめた「798(芸術地区)」(北京朝陽区酒仙橋4号)がある。この場所はかつて中国の人民解放軍の国営兵器部品工場だったそうで、近く人あった中央美術学院の学生たちがアトリエを作り始め、その後、アート再生 プロジェクトとして成功し、今では世界から注目を集めるアートエリアとなった。この北京アートの中心的な場所でBAKUがライブドローイングを行った。会場はこの798のプロデュースにも一役買い、いち早く日本のギャラリーとして拠点を構えた東京画廊の[B.T.A.P]の2Fのスペースを使わせていただいた。


午前中は「798」を一通り見学。敷地は約2000平米もあり、100以上のギャラリーがある。規模の大きさ、質・量とも、国際的でダイナミックな展開に舌を巻く。兵器工場の跡地を利用したアートプロジェクトは、どんどん国際的な注目が集まり、政府もこのムーブメントに乗じた形で一気に大きな存在となっていった。ギャラリーの家賃もスタート当初から見ると高騰しているようだ。この日はクリスチャン・ディオールの大規 模な展覧会「クリスチャン ディオール&チャイニーズ アーティスト展」が、798内でも大きなギャラリーである「UCCA(ユーレンス現代美術センター)」で行われていた。

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798での「クリスチャン ディオール&チャイニーズ アーティスト展」



やはり、国際的にあっと言わせる力の入れ方が戦略的でもあり圧倒される話題を提供していると感じたと同時にその効果は絶大であるといわざるを得ない。費用対効果も十分得られる結果ではないだろうか。この辺のダイナミックな展開が札幌でできるかどうか?そこが問題だと感じた。

また、この798には東京画廊のほか、もう一つ日本のギャラリーが出店していた。 札幌出身の椿さんが経営する「No Border Space」だ。彼も、SAPPOROショートフェストや札幌のアーティストのプロモーションには関心を示しており、今後の連携の話をさせてもらっ た。(年内に札幌でもミーティング予定)

午後2:00からBAKUのライブドローイングが、東京画廊[B.T.A.P]で始まった。

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BAKUによるライブドローイング



全く告知を行っておらず、通りかかるお客様に声をかけギャラリー2Fのスペースに足を運んでもらった形であったが、述べ50名近い方に見てもらうことができた。中には、Art Guide Magazineの マーケティング関係の方や同業のアーティストやイラストレーター、学生など熱心に見てもらうことができた。中には、自分の作品を見せる人、1時間以上も見ていってくれた人もいた。同時に行ったSAPPOROショートフェストのDVDのデモも、配布したチラシなども眺めながら関心を示していた。札幌に来たことのある人はほとんど居ない状況で、まだまだ、札幌を売り込む開拓の余地があると感じた。

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完成作品とBAKU

 

取材:ICC チーフコーディネーター 久保俊哉