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映像作家  古跡哲平さん

毎年開催される札幌国際短編映画祭でも知られるとおり、
自主映画を制作するフィルムメーカーが多い札幌の映像シーンで
PVやVJなど音楽と融合した映像作りを続ける古跡哲平さん。
2009年から仲間と映像テクノユニット「DefectLeak」を結成。
衝動のまま激走する独自の世界観に海外が注目し始めている。

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  • 「作品:Wonderring girl 1」

  • 「作品:Wonderring girl 2」

  • 「作品:Wonderring girl 3」

  • 「作品:Wonderring girl 4」

  • 「作品:Wonderring girl 5」

  • 「作品:Wonderring girl 6」

  • 「ScamCircle PV "ENGRAVE" 1」

  • 「ScamCircle PV "ENGRAVE" 2」

  • 「ScamCircle PV "ENGRAVE" 3」

  • 「作品:sleepy.ab PV」

  • 「作品:木箱 PV "やわらかい日"」

  • 「作品 1」

  • 「作品 2」

  • 「作品 3」

  • 「作品 4」

  • 「実写へのこだわり 1」

  • 「実写へのこだわり 2」

  • 「古跡哲平さん 1」

  • 「古跡哲平さん 2」

  • 「古跡哲平さん 3」

  • 「古跡哲平さん 4」

  • 「古跡哲平さん 5」

  • 「古跡哲平さん 6」

  • 「古跡哲平さん 7」

 

酪農学園大学でハマった映像制作の魅力

「江別にある酪農学園大学の出身です」と聞いて拍子抜けした。取材前に見た参考映像がなんとも過激で(全裸の男性が顔面に牛乳をぶっかけられて嬉しそうに飛び跳ねていた)、どんなオソロシイ経歴の持ち主が出てくるのかと内心危ぶんでいたからだ。
出身地の兵庫県加東市から北海道へ進学の理由を尋ねると、「遠くに行きたかったんです、地元を離れて」と共感できる答えが返ってきた。どんな質問にも礼儀正しく、人なつっこい笑顔で答えてくれる古跡さんに、またも心の中で「誤解しててスンマセンでしたっ!」と頭を下げ取材を続けることにする。

初めての映像制作は大学4年生の時。友人が画像編集ソフトを手に入れた。映像の作り手になる——まったく新しい世界を見せてくれた「遊び道具」は古跡さんを魅了した。好きだったテクノ音楽に日常で撮った映像を重ね、「簡単にいろんなことができる」面白さにハマっていった。
卒業後は札幌の映像系専門学校に進学したが3カ月で離脱した。後はそのままフリーランスという名の不安定な身の上に。力仕事やイベントの記録用映像制作のアルバイトをしながら、作品をコツコツと作り続ける日々を送った。

koseki02.jpg取材はフリースペースATTICにて。代表作「徘徊少女/wandering girl」をバックに映しながら行われた。

 

自作集のDVDを配り音楽業界にPR

自作の名刺を持てばその日から名乗れる肩書きはたくさんある。だが、問題はその先だ。クリエイターの場合、「実際に作品を作り続けること」を自分に課すことになる。当たり前の話のようだが、実践する人間はどれだけいることか。23歳でフリーとなった古跡さんも、自宅のPC機材でグラフィックやアニメ—ション作品を作りだめ、DVDにまとめては札幌の音楽関係者に配り歩いた“実践組”の一人だった。

「よく行くクラブやライブハウスで少しでも関心を持ってくれそうな人に“見てください”と渡してました。作品を気に入ってもらえればVJの声がかかることもありますし、VJが終われば“今のかっこよかったよ”とまた声をかけてくれる人が出てくる。リアルな現場から良くも悪くも反応をもらえて、次の縁へとつながっていく感じがしました」

人気バンドsleepy.abとの出会いも、そうした地道なプロモーションから生まれた縁の一つだ。札幌出身のミュージシャン、一十三十一(ひとみとい)の野外ライブのVJにも抜擢された。こうして自作のDVD集をツールに人脈の輪は広がり、全く無名だった古跡さんの名が徐々に札幌の音楽シーンに浸透していった。

koseki03.jpg古跡さんが手がけたsleepy.abのPVより。第一回札幌国際短編映画祭でも上映された

 

「なんでもできる」器用さが創造の足かせに

ミュージシャンの世界観を映像で表現するPVの依頼が多い古跡さん。本コーナーにも一足早く登場したエレクトロニカ・ユニット「木箱」のPVも制作した。「PVの仕事はジャンルを問わず曲の聴きこみから始まります」。曲にまつわるトータル的なアートワークを意識し、ジャケットのデザインをそのまま映像に使うことも少なくないという。
「どんな作品にしたいのか、バンドのメンバーからリクエストを聞くと “ギュッと”とか“もっとガツンと”なんて擬音が多かったりするんで(笑)、もう少し具体的にどういうイメージかを聞き出すように気をつけています」

koseki04.jpg木箱「やわらかい日」ミュージッククリップより


かわいいアニメーションからスタイリッシュなモーショングラフィックスまで、器用にこなす古跡さんの才能は口コミで評判を呼び、2年前からは映像の仕事一本で食べていけるようになった。2010年の11月10日からは日韓の交流イベントとして韓国の釜山デザインセンターで、ScamCircleのPV「ENGRAVE」が上映される。
けれども、「なんでもできる」強みを持ちながら、そのことに一番危機感を抱いたのも当の本人だった。「誰に向けて何をやっているのかが見えなくなった。一度整理して自分が本当にやりたいことを突き詰めたくなったんです」。誰の目も気にしない衝動のままのクリエーションを求めた古跡さんは、09年に友人3人と映像テクノユニット「DefectLeak」を結成。ライブやパフォーマンスアートイベントなどボーダレスな活動に乗り出した。

koseki05.jpg釜山で上映されるScamCircleのPV「ENGRAVE」より。同作品は2008年のDOTMOVFESでも選出され、国内外14カ所で上映された。

 

フランスのケーブルテレビでも放送決定!

「全世界に欠陥と恥部を露出しながら自由な音楽と映像をクリエーション」。「DefectLeak」のプロフィールにある一文だ。前述の牛乳男子が登場する「PENISUICIDE」は紹介文そのままの過激さで見る人を選ぶが、札幌市内でロケをした「徘徊少女/wandering girl」は古跡さんも会心の自由奔放な編集技術を駆使した代表作。「ビデオドラッグみたいな世界を実写でやりたかった」この作品に、閲覧可能なYoutubeには海外から絶賛のコメントが多数寄せられている。この作品を見たスタッフが気に入り、日本のサブカルチャーを紹介するフランスのケーブルテレビ「Nolife」でも放映が決まった。
 

koseki06.jpg「徘徊少女/wandering girl」



クライアントワークとは一線を画したユニット活動は古跡さんの内面にも変化をもたらした。実写への広がりだ。「モニター上で非現実の世界を一から作るよりも、現実の一部を少しズラしただけで非現実的な空間が出来上がる。DefectLeakを始めてから実写ベースのアイデアにシフトしました」。
同時に札幌でクリエーションすることの意味も考え始めた。「ローカルな札幌で普通にカッコイイことや丸いものを作っていても意味がない。良くも悪くも記憶にこびりつくような映像を作れることが自分の持ち味。もっといびつに、もっと振り切った表現がなければ、北海道を出た市場でも認めてもらえないと感じています」。
衝動の果てにつかんだ自分らしさで、これからも刺激的な映像を見せてくれそうだ。

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koseki08.jpg「わかりやすいものが好き」な関西出身で札幌暮らし10年目。この経歴も古跡さんらしさの一部だ。
 

●DefectLeak http://defectleak.com/
DefectLeak 作品上映情報
豊平館130周年記念オータムシアター in  豊平館2階(中島公園内)
11月18日(木) STRART 17:30
FilmMaker:studioREBARD,片岡翔,Qwifilm,庄司樹,大野祐輝
先着100名限定 入場無料 / 問い合わせ  011-511-0985 http://www.hoheikan.com/

DefectLeak出演ライブ情報 Sound Trap vol.3 at COLONY
11月19日(金) OPEN 20:30 / START 21:00
前売 ¥2,500 / w/f ¥3,000 / 当日 ¥3,500 ※別途ワンドリンク¥500
チケット予約フォーム⇒ http://form1.fc2.com/form/?id=601247
GUEST:SKUNKHEADS(BLACKSMORKER RECORDS), O.N.O(THA BLUE HERB),EL ARTILLEROS a.k.a GUNNERS(I.N.I、DJ KEN、HALT. from MicJackProduction)
ACT:ALICE PACK, MC SODA(TRIBE ROCK), Defect Leak,evylock,filosofem,hellne
DJ:DEE,TAITAN,YUYA
問い合わせ:COLONY 011-532-3329  http://www.colony6.com/
 

取材・文 ライター 佐藤優子 仕事blog「耳にバナナが」  http://mimibana.exblog.jp/
写真 山本顕史(ハレバレシャシン)