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演劇ユニット  ザ・ビエル座

ともに札幌出身、その昔はICCの入居者だった
雨夜秀興(あまやひでおき)、箕輪直人(みのわなおと)の
演劇ユニット「ザ・ビエル座」が新作『タスキノクニ』を発表する。
8月7日・8日公演を目前に控えた彼らに直撃インタビュー!

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  • 「ザ・ビエル座 1」

  • 「ザ・ビエル座 2」

  • 「箕輪直人さん 1」

  • 「箕輪直人さん 2」

  • 「雨夜秀興さん 1」

  • 「雨夜秀興さん 2」

  • 「タスキノクニ フライヤー」

  • 「軽快に話す二人 1」

  • 「軽快に話す二人 2」

  • 「ガッツポーズ」

  • 「じゃれあう二人」

  • 「仲のよい二人」

  • 「札幌市教育文化会館の前で」



正反対コンビの共通項は「老若男女が笑える芝居」


「そうなんです、僕ら、その昔ICCさんにいたんですよ!」
札幌テレビ放送の『どさんこワイド』(雨夜)で、北海道文化放送の『のりゆきのトークDE北海道』(箕輪)で。
道内各局のタレント活動で“この顔”に見覚えがある方もいるだろう。

が、その正体は舞台役者を本業とする演劇ユニット「ザ・ビエル座」! 
雨夜秀興(あまやひでおき)、箕輪直人(みのわなおと)が最も熱くなる瞬間は、スポットライトの当たるステージの上にある。ICC入居時代の話はおって聞くとして、まずは彼らの自己紹介から始めよう。

2009年に結成したザ・ビエル座は札幌でも珍しい二人組の演劇ユニット。脚本・演出を雨夜さんが手がけ、看板役者である箕輪さんを軸に客演の役者たちとともにこれまで3作品の公演を行った。

子どもの頃から目立ちたがりの箕輪さんと隠れたがりだった雨夜さんの正反対コンビ。
「やりたい芝居」が二人の共通項だ。箕輪さんは言う。
「僕らが目指すのは老若男女にわかりやすい芝居。そこに散りばめたい笑いのツボも同じで、客席のおじいちゃんとお孫さんが大笑いしている光景をザ・ビエル座でたくさん増やしていきたいです」。

zabieru_01.jpg写真左から表情たっぷりの箕輪さんと、おだやかな語り口の雨夜さん。取材は新作『タスキノクニ』の会場となる札幌市教育文化会館のロビーで行われた。



ミュージシャンと画家の卵?が芝居の世界へ

二人の出会いは今から10年前にさかのぼる。もとはミュージシャン志望だった箕輪さんは当時北海道工業大学の3年生。同じ舞台表現の勉強になればと軽い気持ちで劇団「ジー・ウイルス」のオーディションに応募した。「ところが結局は芝居のほうにハマっちゃったんです」。

かたや、北海道芸術デザイン専門学校に通う雨夜さんは油絵と向き合う日々。「親が冗談半分にすすめた」モデル事務所に所属し、ジー・ウイルス団長による演技指導のレッスンを受けていた。

そして二十歳の二人が前述のオーディション会場で出会うこととなる。このジー・ウイルスは後に「ゴールデン・キラーズ」と改名し、2006年4月から3年間ICCに入居していたことも今では懐かしい思い出だ。

zabieru_02.jpg小学校の頃から人気者、学芸会の主役タイプの箕輪さん。



ICC入居の縁で映像作家と短編映画を制作

ゴールデン・キラーズ時代にICC に入居していたザ・ビエル座の二人。
「いろんなクリエイターが集まる環境に刺激されて、とにかく毎日が面白かった」と雨夜さんが振り返れば、「ホントにお世話になりました、感謝してます。子どもが生まれたら“ICC”って名付けたいくらい(笑)」と箕輪さん。

実際のところ、入居者同士が胸に抱く「札幌のコンテンツ産業で名を挙げたい」という思いは同じ。意気投合した映像作家と手を組み、島田英二監督作『ボックスシティ』で雨夜さんが(当時は中野秀興名義)、土江昌輔監督作『開廷!!恋愛裁判所』では箕輪さんが主演を果たし、ICCコラボから始まった札幌発のショートフィルムも誕生した。

もちろん入居時期が過ぎても、ICCとクリエイターの絆はこれからも続いていく。卒業組の活躍をこうして応援することもICCが大切にしている取組みの一つなのだ。

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得意の油絵で道展に7回も入賞した雨夜さん。



文句ばかり言ってないで、動き出せ自分!

雨夜さんと箕輪さんはその後、演劇仲間5人で新劇団「ワクチン」を結成。だがじきに一人抜け二人抜け…となり、一時期活動休止に追い込まれたという意外な過去もあった。

この頃すでにTV・ラジオのレギュラー番組を持っていた箕輪さんに対し、雨夜さんは他劇団の客演などで舞台キャリアをつないでいた。ところが。
「だんだん芝居をやるのも見るのもつまらなくなっちゃいまして。“もうヤダ”と投げやりな気持ちになった。でもよくよく考えてみたら、文句ばっかり言ってないで自分がやりたいことをやればいいじゃないかと」。

心機一転、やりたい芝居づくりに向かい始めた時に「どちらからともなく」声をかけあい肩を並べたのが、雨夜・箕輪の両名だった。

ちなみにこの印象的なユニット名の由来は雨夜さんの脳裏にふと降りてきた「教科書にも載っているあの有名な宣教師さん」だ。
「“ザビエル”でネット検索したら彼ばかり出てきてしまうので、点を打って“ザ・ビエル”に。そしていずれは大所帯になれたらという願いをこめて最後に“座”をつけました」。

そんな二人は現在、芝居を初めて見る観客をも巻き込む「生の感動」を布教中。2010年8月には4作目となる書き下ろし作『タスキノクニ』の公演を控えている。

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『タスキノクニ』稽古場より(ICCスタッフ撮影)。客演二人、新人二人を交えて物語が進んでいく。



ストーリーも演じ手も新展開の『タスキノクニ』

箕輪さん演じる脱獄囚が迷い込んだ国は、
住人たちがなぜか色違いのタスキをかけている“タスキノクニ”だった—。

取材時にもすでに白熱した稽古が進んでいた新作『タスキノクニ』。「雨夜の脚本を初読みしたときに思わず“こう来たかー!”とうならされた。それくらい今までにない、ザ・ビエル座の違った一面を楽しんでいただけると思います」。

そう箕輪さんが語る新基軸の舞台には、ザ・ビエル座初のオーディションで選んだ新人二人も登場する。
「僕らの出会いもオーディションでしたから、また新しい出会いを期待してやってみようかと盛り上がりまして。結果は期待以上の素晴らしい人材に恵まれ、本当にやってよかった。ダンサーの栗橋由里さんは踊り手らしい美しい動きに、現役大学生の稲場一紀くんは演技経験ゼロの真っ白な魅力にぜひご注目ください」。

演劇には生の感動があり、演じ手も観客も生身の人間であることがその感動を二乗三乗へと膨らませていく。「初めての芝居はぜひザ・ビエル座へ!」と声を揃える二人から当日どんな感動のタスキを渡されるのか、客席で胸を躍らせ待ち構えたい。

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zabieru_05.jpg「舞台のために丸坊主にします!」宣言をした箕輪さんと、「夏休みの子どもたちにもぜひ見てほしい」と語る雨夜さん。
 



●ザ・ビエル座 新作公演『タスキノクニ』
zabieru_08.jpg 2010年8月7日(土)18:30開場19:00開演 ・ 8日(日)16:30開場17:00開演 
※全席自由 未就学児童入場不可
会場/札幌市教育文化会館 小ホール 
チケット/2,625円(税込)  各プレイガイドでチケット好評発売中!
問い合わせ/ミュージックファン TEL011-208-7000

●ザ・ビエル座 http://www.the-biel-za.com/
 

取材・文 ライター 佐藤優子 仕事blog「耳にバナナが」  http://mimibana.exblog.jp/
写真 山本顕史(ハレバレシャシン)