80年代に20代前半を過ごしたオレゴン州ポートランド市を20年ぶりに訪れる機会に恵まれた。そこで、今回はその報告を兼ねポートランド市をご紹介したい。
今年札幌との友好姉妹都市50周年を向えたオレゴン州ポートランド市は、北米大陸の北西部に位置し、ワシントン州のシアトルやカナダのバンクーバーと並び、全米で暮らしたい街に常に上位にランクされる人口170万人の小都市である。市制約160年のこの街は、もともと東海岸のマサチューセッツ州ボストンとメイン州ポートランドからの開拓者が築いた街で、名前もメイン州と同じ「ポートランド」を残している。また、70年代のヒッピー・ムーブメントとコミューン運動の最中、より自由と自治を求め、サンフランシスコから北を目指した若者達の終着地としての街の歴史もあり、自由で寛容な風土が色濃く残っている。そんな歴史から政治的にはリベラルで市民の発言力が強い。たとえば市内中心部にはファーストフード店がほとんど見あたらないのだが、これも市民の反対意見によるものだそうだ。そのかわり人口に対するレストランの数は全米で1位というから、QOL(Quality of Life)の意識レベルが高い市民性の表れだろう。
また、「全米で最も自転車に優しい街」としても近年脚光を浴びている。市内は東西南北にトラム(路面電車)が整備され、自転車も乗り入れ可能なので、自転車通勤者が圧倒的に多い。大分離れた郊外からも、自転車と公共交通機関の併用で通勤が可能になっている。しかも、市の中心部はバス、トラム共に無料で乗り降りできるので移動に大変役立っている。自転車優先道路が90ブロックにわたって整備されていて、それは車道の中心を走るよう設定されている。これは駐車自動車の影響を受けない配慮で、まさに道路のど真ん中を自転車に解放しているのだ。
トラムを整備し、車の流入を減少させながら、自転車で交通手段の隙間を埋めるという環境美化計画は40年を掛けた市の一大事業とのことだが、世界的な環境意識の高まりと共にこれからの手本となる都市の在り方を示す成果を獲得している。
物価が割合安いため全米から若者が移住してくる。その若者がガレージ・ベンチャーを立ち上げ、新しい市場を開拓している。そんなオープンな空気が根付いているので、新しい移住者が常に絶えないという相乗効果を生んでいるのだ。僕が住んでいた20数年前もそうだったが、この街には若者のチャレンジに対する寛容性の高さが感じられる。それが結果として街の豊かな個性に繋がっているようだ。そして、その豊かな個性を市民がプライドを持ってこの街を愛し、守っているという印象が強かった。
市の中心を流れるウィラメット川が東西を分割し、南北を大通りが分け、西の丘陵地には山の手の住宅地が広がり、動物園や公園、バラ園などが点在する。街のサイズや地形、自然環境が札幌ととても似ているというのも印象的だった。
何を軸に街を形成していくのか、そのグランドプランとインフラ整備があれば、ここまで豊かで個性的な街ができるという実例を目の当たりにして、札幌の未来予想図にこれまでにも増した期待を持つことができた。20年ぶりに訪れたポートランド、駆け足の出張だったが想像以上に収穫の多い再訪だった。
吉川 徹
プロフィール:
吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリーランス
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加以後様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画


