今、成田から自宅へ向うリムジンバスの車内でこの原稿を書いている。今日は朝の5時にホテルをチェックアウトしてからずっと移動で、まだ移動中というなんとも忙しなく切ない一日なのだ。
今回、札幌市とオレゴン州ポートランド市との姉妹都市50周年記念事業の一環で、札幌ショート・フェストから日本のアニメーション作品をセレクトして、オムニバス形式で上映するという機会を得て、札幌のプロデューサー久保俊哉さんと共に、急遽アメリカ本土上陸となったのだ。
上映会場はポートランド美術館。実はここ、20年前にぼくが卒業した学校があった場所で、なんとも感慨ひとしおだった。現地のアニメオタクからはあれやこれや質問責めに遭い、日本アニメの浸透力を再認識させられた。何人かの恩師にも20年ぶりに再会し思い出話に華をさかせたが、なんといってもぼくが学生だった頃の彼らの年齢に今自分がなっているというおぞましい事実をつきつけられ、しばしボーゼンとしてしまったりもしたのだ。
明くる日、ポートランド市長室を表敬訪問し、主席補佐官のTom Miller氏、国際部部長のNoah Siegel氏と今後の文化交流についていろいろとアイデアを交換できた。また、ポートランド市経済界のキーパーソンである、Sho堂園氏にも会えた。彼は市長選にも出馬し、9.11などのボランティアやチャリティ活動をされている地元の名士で、ぼくの恩師のRobert堂園氏の弟さんという幸運も重なり、急なお願いにも関わらず時間を取って頂き、貴重なお話をたくさん聞けた。
全米でも話題になった結婚式のできるドーナツショップ「Voodoo Doughnut」のオーナーが実は昔から知っている友人のTres(写真の人物)だったり、Wieden+Kennedyの東京オフィスにいたJohn Jay氏とたまたま彼が共同経営する日本の居酒屋風レストラン「PING」で遭遇したり、NWフィルムセンターのBill Foster氏にはガス・バン・サント監督にも繋げてもらったし、準備不足の訪問にも関わらずキーパーソンに次々に出会えて、人のつながりのパワーを再認識させられ、結果として両手に余る収穫だった。形式に捕われず、真剣に意見を交わせるスピードの速さは日本ではなかなか経験できない。逆を言えばこのスピードがないと新しい事は始まらないのかもしれない。
Portlandは、ここ数年若者の流入率が増えているらしい。生活費が割合安く済むことに加え、アウトドア・スポーツ環境に優れ、全米で最も自転車に優しい街になったり、街自体が若者の受け入れ態勢を整えていることに原因があるらしい。そしてその若者がアントレプレナーとして成長し、様々なベンチャーを立ち上げて街に根付いていっている。またこんな面白い話もある。アウトドアシューズの「KEEN」はかつて業務拡大につき社員を募集したところ、ポートランドからの応募があまりにも多かったので、本社をポートランドに移転したという嘘のような本当の話。とにかく、若者のエネルギーとそれを取り巻く産業がとても活発な印象をうけた。
帰国する前の晩、昔の友人宅に夕食に招待された。彼女もボストン、シカゴと10年近くポートランドを離れていたが、結婚し数年前に故郷に戻ってきたらしい。その昔ぼくらはよく一緒に絵を描いたり、映画を観たり、ライブハウスに入り浸ったり、逃げ回ったり、いわゆる青春を暴走していた。そんな彼女も一児の母になり、煙草を止め、真っ当な大人になっていた。彼女の運転するステーションワゴン!(昔はいつも移動はバスだった)の窓からクリスマスのイルミネーションで飾った家々を眺めていると、そんな昔の出来事がつい昨日の続きのようによみがえってきた。他の懐かしい面々も集まり、昔の恥ずかしい思い出を話ながら20数年前にタイムスリップすると、あの頃のように何でもできそうな気持ちになった。
吉川 徹
プロフィール:
吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリーランス
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加以後様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画


