オーストラリア強行突破(後半)
地球の裏側、オーストラリアのメルボルンでの一夜限りのARTJAM+ディナーパーティ。 実質的準備に3日間。仕入れた布地を切ったり、縫ったりして、サイズの異なる数種類の旗のようなモノを作っていました。これをタテヨコナナメにジャングルの中に配置する予定。暗い森の中をゲストがディナー会場までの道標にするようなイメージです。ミシンまでは用意できなかったので布は全て手縫い。これが結構手間取ったんですが、後半は相当上達してなんとか間に合いました。

そして、金曜日ディナー当日、天気予報通り朝から雨です。ハハハ。今後の展開を占うかのように現場までの道のりはずっと雨。山の中に入ると、厚い霧が立ちこめ、まさに五里霧中、イヤな感じです。近所のカフェで朝食をとりながら段取り確認。外は相変わらず冷たい雨が降っていて、時折激しく横なぐりの雨になったりしていて、カフェの中は暖炉に火が入れられパチパチいって、このまま和んで穏やかに帰りましょうよ、そうしましょうよ!と心の中で強く強く叫んでいたのでした。
そんな心の叫びは誰にも受け入れられることなく、公園事務所へ行き管理事務所のスタッフに先導されて現場へ(やはり国立公園なので勝手にズカズカ入り込めないのです)。用意した旗のようなモノを抱えて森の中へ設置開始。4、5メートル頭上の枝に重りの石を括りつけたひもを投げて引っかけ、もう一方に括りつけた旗を引っ張り上げるという古典的な方法でひとつずつ設置していきました。別の枝の上で鸚鵡のような赤い鳥(ロゼッタというらしい)が不思議そうに首をかしげていました。昼過ぎになるとなんとか雨が上がり、ぬかるみに足を取られながらもピッチが上がってきました。照明スタッフもぶっとい照明ケーブルを担いで森の中に照明を這わしています。料理チームはケータリング車の中で仕込みの真最中。仮設テントが建てられテーブルが用意されて、カトラリーが並べられ、ろうそくが並べられた頃には日も暮れて、縦横無尽に張り巡らした照明が点灯し、準備完了。オリビエ・クリュッグ氏らゲストを迎え、着替える間もなく泥々のままグランド・キュヴェで乾杯したのでした。

一夜明けて全身筋肉痛の中、いろいろ考えました。数時間のディナーのためになぜここまでするか?結局全て投資なんですね。大金かけて突飛な場所に会場を作って、セレブを呼んでプレスを用意して大々的にPRするんだけど、そこから直接の利益は何も発生しません。完全なる持ち出しです。でも、この投げかけと人の繋がりが、新しいプロジェクト広がりにつながる。そして、近い将来それが投資の数倍、数十倍の利益をもたらす。そのためには、中途半端な仕事では結局金をドブに捨てることになるので、徹底した仕上げを追求する。こういう感覚は日本にはなかなかないんじゃないでしょうか?日本の仕事の場合、作業=即対価、対価=即成果物を求める性質が強い。結果、仕事が細分化し、こぢんまりする。投資でいうならすぐに損ギリできる状態の仕事のやり方です。回収出来なかった場合の責任の所在がハッキリしないというかハッキリさせたくない曖昧なやり方です。
今回の超強行スケジュールで勉強になったのは「腹をくくる」ということです。仕事において、腹をくくって出資するひと、腹をくくって制作するひと、腹をくくって宣伝するひと、この「腹をくくっ」た度合いがひとの気持ちをつかむということです。 片足を安全な場所に置いたまま、片足で恐る恐る探っていては大きな成果は期待できない。両足で一歩踏み込む「腹をくくる」勇気が必要だということです。 仕事というのは、進めていくうちに得てして自分たちの価値基準が達成目標になってしまうことが良くあります。「オレたちよくやったよねー、いやはやゴクローサン、まぁ一杯わーはっはぁー」。内向きの達成感。なれ合いのカタルシス。これが、外に向けて弾けていないと結局伝わらない。自分たちと他の世界との温度差が生じて孤立してしまう。自分たちのできることには限界があるので、その限界を超えるには外の世界を巻き込み巻き込まれる魅力を表に出して行かなくてはならない。そのために常に新しい外のひとが経験したことのないモノを打ち出していかなくてはならない。既存のテリトリーに足を留めたままでは手にすることはできないのです。
クリュッグ氏は新しいワイナリーをオーストラリアに作るそうです。そして、今週は日本に行くんだそうです。僕も今週末、また1日かけて日本戻ります。
プロフィール:
吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリー
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加をきっかけに以後, 様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画


