「小型化という進化のカタチ」
今年の夏もモーレツに暑かった。年々確実に最高気温が上がってきている気がする。数年前に真夏のオーストラリアで体験した電子レンジの中に入ったような灼熱地獄を国内でも体験できるようになった。オーストラリアでは日向を歩くバカはいない。みんな日陰を歩いている。それは日向を歩いていると皮膚ガンになってヘタすると死んじゃうからだ。観光客としては滅多に体験できない異次元空間を半分楽しんで体験することもできるが、それが毎日となるとさすがに萎える。家のクーラーの下でスイカでも囓りながら、高校野球でも観ていられれば良いんだけれど、休みでないので日常業務がしっかりあって、デロデロになりながら街中を移動することになる。そして、その全面降伏宣言一歩手前の身体に遠慮無く不意打ちをくらわしてくるあの中華料理店の換気口!デロデロヘロヘロの身体に浴びせかけるあの油ギッシュな熱風噴射にはホント言葉を失う。
ぼくのようなメタボ気味のおとっつぁんにはこの季節、タオルと着替えはかかせない。身体がデカく、重くなる→汗をかく表面積が増える→身体を動かすのによりエネルギーを使う→汗だくになる。というなんとも明解な方程式によってデロデロヘロヘロおやじの一丁上がりなのだ。オリンピックの北島康介の雄姿を観ながら、『ああ、プール着て出歩きたい』とひとり嘆いた。
ここで、すこし冷静に考えてみる。この汗だくの不快感はひとえに身体の大きさに起因するところが大きい。であれば、身体が小さく、軽くなる→汗をかく表面積が小さくなる→身体を動かすのにたくさんのエネルギーを必要としない→汗だくデロデロにならない!という夢の三段逆スライド方式が成立するではないか!?
これまで、小顔、醤油顔、グラマー、マッチョ、巨乳など身体的特徴のトレンドが数々あったが、最近は「マイクロ」、「小さい」ことがトレンド傾向にあるらしい。しかも、これは世界的傾向で最近のハリウッド女優なんかも軒並み小型化している。世界的に「カワイイ」=「小さい」という図式が成立しつつある。ファッション業界など、原材料の高騰から景気が悪くなると、ミニスカートが流行るなどとまことしやかにいわれているが、そもそも着る人間が小さくなれば、同じ材料からより多くの製品が作れる。食事にしてもより少ない量で満腹になるから、食料問題についても大いに良い効果が期待される。あらゆるモノの基準になっているのはヒューマンスケールというやつで、それが小さくなるということは、いろんなモノが小さくて済むということなのだ。電車やバス、航空機などの交通機関の乗車、搭乗人数も増加し、自家用車はより小型化し、交通渋滞から通勤地獄、最近問題の石油問題も解決してしまうかも知れない。住宅問題にしても現状の面積据え置きでもう一部屋ぐらい増設出来てしまう。ぼくが子供の頃、♪大きいことはいいことだー♪なんてチョコレートのコマーシャルがあって♪そーだ、そーだ、そーなのだー♪と信じて疑わなかった。でもどうやら最近は「小さいことこそいいこと」なのかもしれない。
環境に適応しながら、生活習慣に影響を受けながら、我々人間の身体は変化してきた。そして、これからも変化していくだろう。1900年に15億人だった世界人口がたった100年で65億人に迫る勢いだ。そして2050年には100億人を突破する予測もでている。地球の大きさが決まっているのであれば、そこに生活する人間の大きさが小さくなれば相対的にゆとりが生まれるではないか?たぶん我々の身体はその細胞レベルで考え準備しているのかもしれない。パソコンが小さくなり、テレビが薄くなり、高機能小型化という進化のカタチが加速度的に進むのであれば、それを使用する人間の側のダウンサイジングも当然のことのように思える。「マイクロ」、「小さい」というトレンド傾向もそんな進化のひとつの表れなのかもしれない。そうすると、大汗かいて歩きまわっているメタボおやじはますますオールドタイプってことになるのだろう。「ヤダー、デカいー、ウザいー!」とか、「しょーがないヨ、きっと昭和だしィー」なんて事を、70%ぐらい縮小された新しい人達に言われてしまうのだ。「進化」には多少の痛みが伴うということか?地下鉄のヒエヒエ車輌の中、汗をふきつつふと考えた。
プロフィール:
吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリー
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加をきっかけに以後, 様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画


