桜の芽が綻びはじめたと思いきやいきなり真冬並みの寒さに逆戻り。今日も近所の公園で気の早いひとたちが何人か桜の木の下でブルーシートを拡げて宴会を始めていたけど、皆一様に寒さに身を縮めて花見どころでない様子だった。ぼくはそれほど花見信仰者ではないので理解できないが、あれは桜が咲いたら酒を飲むという一種のパブロフの犬状態なのだろうなあ。なかにはブルーシートを見たら酒を飲むなんてひともいそうだなあ。習慣とは恐ろしいものだなあ。。
それでも今月も後数日で終わり、来月は事業新年度、転勤・転属、新入学・進級、テレビは春の番組改編と新しいスタートがあちこちできられることになる。雰囲気としては割とポジティブになれる時期なのではないだろうか?
本屋で平積みの新刊をチェックしているとカバーに見覚えのある顔を発見した。横田尚哉氏の『ワンランク上の問題解決の技術』(ディスカヴァー21刊)。先日TBS系『情熱大陸』でフューチャーされていたので憶えてる方も多いのではないだろうか?大手建設コンサル会社のコンサルタントで10年間で総額1兆円の公共事業を改善し2000億円のコスト削減を実現した「改善」のプロ。全国の地方自治体から引っ張りだこの氏のコンサルティングは今や半年待ちらしい。
横田氏の手法は「ファンクショナル・アプローチ」。物事の機能を分析し見直し、改善するというもので、1940年代に米国のゼネラル・エレクトリック社で生まれ主要産業に拡まった。現在ではVE(ヴァリューエンジニアリング=価値工学)と呼ばれ、日本でも自動車業界や電機業界などの製造業を中心に主要な企業に取り入れられている。
横田氏は「視点」を変えて物事を見直すことを強調する。
『いかなる問題も、それをつくりだした同じ意識によって解決することはできない』
というアルバート・アインシュタインの言葉を引用し、「問題解決できないのはその問題に対して同じ意識・同じ視点で見ているから」と言い切る。
我々はたまたまとった行動を特に問題がなければ繰り返す。それは習慣になりその行動の正当性と感じるようになる。やがて、その行動をとらなければという「規律」へと繋がり、その行動ができないことはいけないという「拘束」へと繋がる。これが「偶然」が時間を経て「固定概念」化されるプロセスなのだ。
ぼくは、日本人ほど「固定概念」が好きな民族はいないのではないかと常々思っている。こんなことを言うと「オレは常日頃から固定概念を打ち破る努力をしているぞ」と反論を受けるかもしれないので言葉を変えて言うと、「日本人は概念を固定化する志向性がある」と常々思っている。これをきわめて肯定的な言葉にかえて言えば「伝統と格式を重んじる民族」なのだ。たとえば市井の芸能として始まった歌舞伎や落語など、そして現代のお笑い芸人に至るまでこの「伝統と格式」は存在する。たまに暴力的に新しい潮流を切り開く人が登場するがしばらくするとその潮流が「伝統と格式」になる繰り返し。型を決めその中に閉じ込めようとする暗黙の力が働き出す。
そんな中で視点を変え、想像力を常に持ち、物事の本質に迫るという横田氏の「ファンクショナル・アプローチ」は画期的だが苦労も多いだろうと勝手に想像する。多くの人が過去を手放したがらない。過去の事例や前例を足がかりに情報収集に時間と労力を使い、一般的な解決策を探る。そもそもが過去からのスタートなので、解決策を導き出せたとしてもまたすぐ陳腐化してしまう。その繰り返し。
「ファンクショナル・アプローチ」の中で非常に簡単だけれど効果的なアプローチがあった。それは、「なぜ?」という言葉を「何のために?」と変えてみる習慣をつけるという至ってシンプルなもの。「why?」を「what for?」に変えるだけ。これだけで過去についての原因追及から未来に向けての目的追求に意識の方向性をシフトできるのだ。
「なぜ会議を一時間遅らせるのか?」ではなく「何のために会議を一時間遅らせるのか?」と意識の方向をシフトするだけで過去の呪縛から解放され未来に向けて建設的な考えが生まれる。これはまさに目からウロコのアプローチだった。まだまだ実践的な方法論がわかりやすく解説されているので興味のある方は是非読んで欲しい。
ということで今回は書評のような感じになってしまったが、長引く不況、安定しない政策、急速に変化する世界情勢の中、ひとりひとりが広い視野と想像力を持って状況に対応していかなくてはならないポイントに立っているわけでこの本をどうしても紹介しておきたかった。
一年半程続けたこのコラムも今回でひとまずお休みです。毎回思いついた事を言いたい放題でしたが諸方の関係者には常に寛容な心で受け止めていただき大変感謝しています。また何処かでお会いする事もあろうかと思いますがその際はどうぞよろしくお願いします。
吉川 徹
プロフィール:
吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリーランス
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加以後様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画
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