今日も七転八倒
自由で寛容で合理的なゲーム
2010-02-28
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今月も月末最終金曜日の深夜ということで「朝まで生テレビ」を観た。テーマは「凋落日本と若手起業家の”成長戦略”」。「凋落日本」とはっきりと銘打っているところが清々しい。コメンテーターは50代4人、40代1人、30代7人、そして司会者70代という年齢構成で通常の加齢臭漂う辛気臭いスタジオとは異なり、面子も久々のメディア登場のホリエモンこと堀江貴文氏、東浩紀氏、そしてチームラボの猪子くんなどなど期待値の上がるラインナップだ。50代の議員、大学教授、企業管理職のコメンテーターが邪魔な人選と言えなくもないが全国放送としてのバランスを取るのと70代の司会者へのブリッジを考えると致し方ないのかもしれない。司会の田原総一朗が東浩紀を買っているのは明らかで、いっそのこと東氏を司会に立てて思い切り未来について話すという選択肢もあった気もする。のっけからチームラボの猪子くんが異彩を放っていて否が応にも生放送ハプニングを期待してしまう。

今回の「朝生」には明確な境界線がある。それはパーソナルコンピュータ及びインターネット以前と以後の境界線だ。1981年にIBMがパーソナルコンピュータを発表してから今年で29年。その時間軸で考えると現在50代の人は20代〜30代の時にPCとはじめて出会ったことになる。対して30代の人は0代〜10代、ほぼPCと同じ成長過程を辿ってきている。つまり成人してからPCを経験している世代と子供の頃からPCに接している世代間の境界線が明確に現れている。ちなみにぼくは現在45歳で、大学を卒業する頃に教室にPCが導入されたのを憶えている。それから約10年間はPCは目にしていたものの自分とは縁のないものという認識が強かった。それが今ではPCナシでは一日もたないぐらい完全な依存症だ。つまり、「そんなもの要らない」と言い切れるほど厭世観はないし、かといって身体の一部というほどの親密さもない。宙ぶらりんの関係で接している。これは個人的な感想だが、ことPCに関しては40代が一番中途半端な気がする。

現在の様々な規制やルールはPC以前の時代から継承しているものがほとんどで、つまりPCの存在しない規制やルールの中にPC及びその周辺が含まれるという奇妙奇天烈な構造がある。もちろん、その時々に新しいシステムに対する新しい規制やルールは生まれてはいる。が、根本的にPC及びその周辺とはフロンティアであり、ある種アウトローな領域だ。テクノロジーの進化と共にそのアウトローな荒野は、それ以前の尺度で計り知れない程のスピードで拡大している。それを既存の規制やルールが後から必死に追いかけているというのが現状だろう。

「朝生」の討論を聞いていると、パーソナルコンピュータ及びインターネット以前の人々は、既存の規制やルールへの対処が論調の中心を占めている。パーソナルコンピュータ及びインターネット以後の人々にとっては、そもそもその規制やルールの手の届かないところを活動フィールドにしているので、そういう「以前」の人達が邪魔で仕方がない。これは至極当然の話で、新しいゲームを真剣に楽しんでいるところに古いゲームのルールを持ち出してあれこれ言われるのはかなわないだろう。「以後」の人達にしてみれば、いくら古いルールを説明されても「そうだったんですか?大変でしたね」という以外の感想は持てないだろう。その上その古いルールで取り仕切ろうとされれば邪魔以外何ものでもない。「私たちはそもそもそのルールでやっていませんから。放っておいてください!」となる。実際に「以前」の人達はずっと「以後」の人達を放ってきた。アウトローな領域を文字通り野放しにしてきた。未知なフィールドに対する「以前」の人達の無関心はある意味「以後」の人達にとっては理想の環境だったのかもしれない。

空白の10年が20年に伸び未だに出口の見えない中、興味深いデータが発表された。不況の影響により広告費が前年比11.5%減少する一方、インターネット広告費がついに新聞広告費を上回り、テレビに次ぐ広告媒体になったのだ。いつの間にかアウトローな領域は無関心でいられる領域ではなくなってしまった。今まで放置され目立たなかった「以後」の人達はこれからどんどん出る杭として目立ってくるだろう。出る杭は当然この国では叩かれるので、「以後」の人達は自分の領域を拡げる努力のほかに叩き潰されないように防御する努力もしなくてはならない。水前寺清子の「365歩のマーチ」のように”3歩進んで2歩下がる”はなはだ不合理なシステムをしいられるだろう。しかし希望はある。新しい出る杭が爆発的に生まれることによって打つ方が間に合わない情況が生まれている。ノンポリなし崩し政策には対応しきれないエネルギーが今まさに沸騰している。昭和が終わりバブルがはじけて20年。そのどちらも知らない平成生まれがすでにハタチを迎えた今、時代の大きな転換期をむかえているのは確かだ。新しい人達が今までにない新しいシステムでゲームを始める。年寄りは黙って観戦しているだけでいい。

 

吉川 徹






プロフィール:

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吉川徹(アートディレクター/プランナー)
1964年神奈川県生まれ
1983年渡米, Pacific Northwest College of Art 絵画科卒(BFA)
1989年帰国, 広告会社, 展覧会企画会社を経てフリーランス
2000年より, ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団tomatoのワークショップに参加以後様々なプロジェクトに参加
2004年より, 北海道札幌市の創造都市計画『sapporo ideas city』に参画
2007年, D&DEPARTMENT PROJECT札幌店立ち上げに参画

 



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