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学生アニメーター3人組 kocka 高橋 幸子 氏

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-高橋幸子とは

kocka(コチカ)代表 - アニメーション作家 -
現在、北海道教育大学大学院修士課程 在籍
江別市在住
ICCに9月より特別入居

北海道教育大学の研究室仲間3名でkockaを結成する。
同研究室のテーマは、デザインや映像全般を取り扱う視覚映像デザイン。
kockaは個人ごとに作品製作を行い、温かみのあるアナログ的要素が魅力。

とても温和な雰囲気の高橋さんは、ゆったりと落ち着いた口調で、kockaとは、チェコ語で子ネコという意味だと教えてくれた。
「チュブラーシカに代表されるロシアアニメや、チェコアニメが自分の肌にはあっている。」と語る高橋さん。
チェコといえば人形劇の盛んな国である。
どうやらkockaの温かみのある作風はチェコがルーツのようだ。

 

-クリエイターをめざすきっかけ

高橋さんは、もともと映像よりも水彩画やイラストに魅了を感じていた。
しかし、小道具などの映画美術には人一倍興味があり、映画を見出したのが映像との付き合いの始まり。
やがて、海外アニメーションの世界へとどっぷり浸かっていくことになる。
「小さい頃は、水彩画ばかり描いていて絵描きになりたかった。でも、大学先輩の作品を見て、アニメーションって作れるんだ!という感動が今へのきっかけ。」と語る高橋さん。
そのきっかけを活かし、大学研究室のコンピュータでセル風アニメを作り始めた。
はじめはうまく行かないことも多く、試行錯誤の毎日。
もう一度自分の原点に戻って考えてみたところ、現在の水彩画の作風を思いついたとのこと。
しかし作品製作に乗ってきた時期に大学卒業を迎え、人生の岐路に立たされる。
自らは大学院進学が決まっていたが、卒業する仲間たちはバラバラになってしまう。
悩み抜いた高橋さんは、仲間とアニメを作っていくことを決断。
その後、研究室の指導教官 伊藤隆介先生がアドバイザーを務めるICCへの入居をすすめられたのだった。
「ICCは映像製作に非常に良い環境。機材はもちろんながら、街へのアクセスもよい。
そして、何よりもたくさんのクリエイターから刺激を受けられることが気に入っている。」と語ってくれた。

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いままでを振り返る高橋さん

 

-作品

自らの作品の特徴は風景描写にあるので、北海道を離れることはできないと笑顔で話す高橋さん。
より生活に密着した自然を描きたい。
高橋さんにとって、その象徴は都市近郊に住む動物たちであり、人間にとっての自然へのスイッチだと感じている。

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高橋さんの作品集。美術を担当された映画作品。


高橋さんの代表作は『めぐりみち』。
この作品は、まずベースとなる風景を水彩画として描き、カメラで撮影する。
刻々と変化していく風景描写は、ベースの水彩画に一筆一筆色を足したり、紙自体をちょっとずつ動かすして作り出すといった具合だ。
作品に温かみを加えるには、この工程が大きく左右する。
そして作中には、動物がたくさん出てくる。
「動物を通じて自分と世界とのつながりを感じて欲しい。」
そう語る高橋さんの後ろで、日本ではすでに絶滅してしまったオオカミが遠吠えをする。
その何かを訴えるような澄んだ瞳がとても印象的だった。
「見る人が自分の記憶と結びつけて、映像では表現できないはずのニオイ、空気、湿度を感じてもらえる作品を目指しています。」と語ってくれた。
『めぐりみち』はその想いの一端を感じさせられる仕上がりとなっている。

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めぐりみちの一場面

 

-現在の活動

kockaとしては、それぞれが個人製作を行っており、高橋さんは、ICCクリエイターでもあった前田麦さんがイラストを手がけるアニメ『チビナックス』の背景を描いている。
さらに、東京のテレビ局プロデューサーと人形アニメの企画も練っている。
高橋さんは、様々なメディアで映像の可能性を模索している。
テレビは、たくさんの人に作品を見てもらえるチャンスがあるメディア。
でも一方で、漠然と映像が垂れ流しになる危険性もあると慎重な姿勢を語ってくれた。
初めて自分の作品を見る人にも、その魅力を十分に伝えきりたいと意欲を燃やす。

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高橋さんの絵本作品とアニメーション作品絵コンテ

 

-夢

自ら企画した作品が仕事になっていくことがまず第一。
そして10年後には、自分の納得するものを作っていたい。
今の作品は、製作直後は100%作りたいものができたとの達成感はある。 しかし、時間の経過とともにだんだんとその感覚が薄れていってしまう。
いつまでたっても自分が100%納得できる作品を作る事が夢と語ってくれた。

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未来の自分を語る高橋さん

 

-今後の予定

札幌で日本各地のアニメーション作家と連携したアニメーション上映会を企画中。
11月末には、北海道教育大学研究室の研究生と共に、札幌市内のコンチネンタルギャラリーで展覧会を開催予定。

 


-メッセージ

取材・文: ICC アシスタント・コーディネーター 倉本浩平